西暦1903年は、ライト兄弟が空へ浮かび、ジョン・モルガンがニコラ・テスラへの資金提供を打ち切った年である。12月17日、ノースカロライナ州キティホーク近郊のキルデビルヒルズで、ライト兄弟が12馬力のエンジンを搭載したライトフライヤー号により12秒間・約37mの世界初の有人動力飛行に成功した。西暦1886年7月3日にカール・ベンツが3輪の車を路上で走らせてから十七年、内燃機関は地を離れた事になる。テスラとモルガンの遣り取りは決裂へ向かった。4月8日と4月22日にテスラは追加の資金提供を依頼する書簡を送り、5月にはモルガンの下を訪れて、世界無線システムの真の目的である「電線が不要でより安価に電力を供給出来る、スカラー波による送電システム」の構想を打ち明けた。7月3日の書簡では「もし無線電力伝送構想を事前に伝えていたら、貴方は私をオフィスから追い出していたでしょう」と記し、7月14日、モルガンは「現時点では此れ以上の資金提供を行う気はありません」と返した。モルガンは銅を用いた電線による送電方式を採用しており、其の銅を独占していたのである。西暦1901年3月の契約から二年での打ち切りであり、12月にテスラはトーマス・フォーチュン・ライアンからの資金提供で合意したが、他の投資家もモルガンに倣って手を引いていた。石油では6月、マーカス・サミュエル・ヘンリ・デターディング・フランスのロスチャイルド家の三者が出資比率対等の合弁会社「アジアチック・ペトロリアム」を設立した。西暦1897年10月にシェル運輸貿易会社を興した男と、西暦1883年5月16日にバクーの権益を得た家の合流である。ロバート・ノーベルとルートヴィヒ・ノーベルの息子イマヌエル・ノーベルもマズット貿易・輸送会社と「ノブマズット」と呼ばれるカルテル協定を結んだ。西暦1890年にバクーの油田で並び立ち、西暦1894年に武器で手を組んだ両家が、此度は輸出の枠組みで結ばれた事になる。金融では2月24日、日本銀行副総裁高橋是清が戦費調達の為ニューヨークへ出発したが、アメリカは自国の産業発展の為に外貨を必要としており、日本の為に外債を募集する余裕は無いという回答であった。西暦1898年にアレキサンダー・アラン・シャンドと再会して人脈を作り、西暦1899年の第1回四分利付英貨公債へ繋げた男の、二度目の海外行である。10月には香港上海銀行ロンドン支店長ユーウェン・キャメロンがイギリス外相ランスダウンの要請を受け、ベアリングス銀行と協力して同盟国の日本への融資の検討を開始した。西暦1865年1月にジャーディン・マセソン商会がアヘンの資金を送る為に興した銀行である。12月12日にはソロモン・ローブが死去した。西暦1849年にエイブラハム・クーンと義兄弟となり、西暦1867年に商会を興し、西暦1875年に長女テレーズをジェイコブ・シフへ嫁がせ、西暦1899年に退職した男である。同じ年、ロシアで「シオン賢者の議定書」が一般に発売された。西暦1884年にユリアナ・グリンカが2,500フランで入手した文書であり、西暦1727年の三百人委員会や西暦1871年8月15日のアルバート・パイクの書簡と同じく、確かな史料の裏付けを持つものではない。トムスクでは第1回シベリア・シオニスト会議が開催されている。西暦1896年にテオドール・ヘルツルが「ユダヤ人国家」を出版してから七年であった。日本では豊田佐吉が織機を動かした儘横糸を自動的に補充する最初の自働杼換装置を発明し、之を搭載した豊田式鉄製自働織機(T型)を製作して、8月6日に特許を出願、11月4日に取得した。西暦1896年の木鉄混製動力織機から七年、人手を要さぬ織機へ一歩進んだ事になる。又、飛行家アルベルト・サントス・デュモンの注文により第3代カルティエ経営者ルイ・カルティエがカルティエ初の男性用腕時計「サントス」を製作し、ワシントン・カーネギー協会が進化を研究する為の生物実験ステーションの設立計画を承認した。西暦1890年にチャールズ・ダベンポートが所長となった研究の場が、更に拡がってゆく事になる。7月20日にはレオ13世が毒殺され、8月にはコカ・コーラ社がコカイン反対の世論を受けてコカの葉を脱コカイン処理する様に処方を変更している。西暦1886年5月8日の設立以来使われてきた原料であった。ヨシフ・スターリンは6月にロシア帝国当局から3年間の東シベリアへの流刑を宣告され、11月30日にノヴァヤ・ウダへ到着した後、脱走を試みたが凍傷に遭って失敗している。西暦1901年にトビリシ委員会委員として西暦1898年3月13日結党のロシア社会民主労働党へ加わった男であった。

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年月日 出来事
1,903 トムスク(現在のロシア)で第1回シベリア・シオニスト会議が開催される。
1,903 ロシアで「シオン賢者の議定書」が一般に発売される。ユダヤ人が世界を支配するという内容である。
1,903 飛行家のアルベルト・サントス・デュモンが、友人の第3代カルティエ経営者ルイ・カルティエにオーダーし、フラットなフォルム・四角いベゼル・レザーストラップのカルティエ初の男性用腕時計「サントス」が製作される。
1,903 ワシントン・カーネギー協会が、進化を研究する為の生物実験ステーションの設立計画を承認する。
1,903 ロバート・ノーベルと、ルートヴィヒ・ノーベルの息子イマヌエル・ノーベルが、マズット貿易・輸送会社と、ロシア帝国の石油の国外輸出に関する「ノブマズット」と呼ばれるカルテル協定を結ぶ。
1,903 豊田佐吉が、織機を動かした儘横糸を自動的に補充する最初の自働杼換装置を発明する。又、其の装置が搭載された豊田式鉄製自働織機(T型)を製作した。
1,903 マサチューセッツ銀行が、ボストン・ファースト・ナショナル銀行と合併する。社名はボストン・ファースト・ナショナル銀行を引き継いだ。
1,903 アルフィエーリ・マセラティが、カルロ・マセラティの推薦で、弐男ビンド・マセラティと共に、ミラノの自動車メーカーであるイソッタ・フラスキーニ社で働き始める。
1,903 1 12 GEBがアメリカ議会に認可され、法人化される。
1,903 2 23 キューバのグアンタナモがアメリカの軍事基地となる。
1,903 2 24 日本銀行副総裁高橋是清が戦費調達の為アメリカのニューヨークへ出発する。その後何名かの銀行家と面会したが、アメリカは自国の産業発展の為に外貨を必要としており、日本の為に外債を募集する余裕は無いという回答であった。その後高橋はロンドンへ行き、横浜正金銀行の取引先であるバース銀行、香港上海銀行、チャータード銀行等と交渉したが成果は得られなかった。
1,903 4 8 ニコラ・テスラが、ジョン・モルガンに対し「貴方は産業界に大きな波を起こし、其の幾つかが私の小さな船に打ち寄せています。其の結果、価格は2倍、或いは3倍にまで上昇しました」という内容の追加の資金提供を依頼する書簡を送る。ジョージ・シェルフが、資金が危険な程少なくなっており、債権者が未払いの勘定に就いて圧力を掛け始めるだろうとテスラに警告した事が背景として有った。しかし、モルガンは追加の資金提供には応じなかった。
1,903 4 22 ニコラ・テスラが、ジョン・モルガンに対し「トーマス・エジソン、グリエルモ・マルコーニ、ミカエル・ピューピン、ジョン・フレミング等、多くの人々が公然と私の事業を嘲笑し、成功は不可能だと言っても貴方は私に高貴な支援をして下さいました」という内容の追加の資金提供を依頼する書簡を送る。しかし、此処でもモルガンは追加の資金提供には応じなかった。
≈ 1,903 5 ニコラ・テスラが、ジョン・モルガンの下を訪れ、世界無線システムの真の目的である、電線が不要でより安価に電力を供給出来る、スカラー波による電力を送電するシステムの構想を打ち明ける。
1,903 6 マーカス・サミュエル、ヘンリ・デターディング、フランスのロスチャイルド家の三者が出資比率対等の合弁会社である、アジアチック・ペトロリアムを設立する。
≈ 1,903 6 ヨシフ・スターリンが、ロシア帝国当局により3年間の東シベリアへの流刑が宣告される。
1,903 7 3 ニコラ・テスラが、ジョン・モルガンに対し「もし無線電力伝送構想を事前に伝えていたら、貴方は私をオフィスから追い出していたでしょう。私の略完成している偉大な仕事の支援して頂けるのでしょうか?それとも無駄にしてしまうのでしょうか?」という内容の追加の資金提供を依頼する書簡を送る。モルガンからの資金提供が打ち切られる事を悟ったテスラは、此の頃から無線電信と電話の実験を行っているウォーデンクリフの45.72mのタワーで実験を始めた。毎晩様々な種類の稲妻の様な閃光を放ち、空中と地中に電波を送った。付近の住民は強い関心を抱いたが、テスラ達は何も語らなかった。此の時、60.96m以上の深さの井戸が掘られていた。テスラはジョージ・シェルフに「プロジェクトの詳細を絶対に明かしてはならない。又、従業員以外は誰も敷地内に立ち入ってはならない」と厳命していた。
1,903 7 14 ジョン・モルガンがニコラ・テスラに対し「貴方の手紙を受け取りました。現時点では此れ以上の資金提供を行う気はありません」という内容の書簡を送る。モルガンは、銅を用いた電線による送電方式を採用した。モルガンは銅を独占していた。テスラの無線電力伝送システムが実現した場合、社会が石油や石炭に依存しなくなり、エネルギー業界が打撃を受け、世界の支配構造が変わる事から、モルガンは此のプロジェクトを阻止すべく動く事となった。又テスラは、モルガン以外からの資金提供は受けないという契約を交わしていた為、テスラのプロジェクトは資金難に陥った。
1,903 7 15 ニコラ・テスラが、ロングアイランドの塔から放電実験を行い、夜空を光らせる。
1,903 7 20 第256代ローマ教皇レオ13世が毒殺される。
1,903 8 コカ・コーラ社が、コカイン反対の世論を受け、原料に使用するコカの葉を脱コカイン処理する様に処方を変更する。
1,903 8 6 豊田佐吉が、自身の発明した織機の特許出願を行う。
1,903 10 第75代イギリス大統領デーヴィッド・キャメロンの高祖父で香港上海銀行ロンドン支店長のユーウェン・キャメロンが、イギリス外相ランスダウンから要請を受け、ベアリングス銀行と協力して同盟国の日本への融資の検討を開始する。
1,903 10 ヨシフ・スターリンがバトゥミを出発する。
1,903 11 4 豊田佐吉が、同年に自身の出願した織機の特許(第6787号)を取得する。
≈ 1,903 11 30 ヨシフ・スターリンが、ノヴァヤ・ウダ(現在のロシアのイルクーツク州)に到着する。其の後脱走を試みるが、バラガンスク(現在のロシアのイルクーツク州)で凍傷に遭った為引き返し、失敗に終わった。
≈ 1,903 12 ニコラ・テスラが、西暦1,883年にニューヨーク・ケーブル鉄道を設立したトーマス・フォーチュン・ライアンから資金提供を受ける事で合意する。ジョン・モルガンがニコラ・テスラへの資金提供を打ち切ったのを切っ掛けとして、他の投資家も直ぐにモルガンに追随し、テスラは新しい投資家を探していた。しかし、得た資金は抱えていた負債に使われ、世界無線システムは資金難に陥った。
1,903 12 12 ソロモン・ローブが死去する。
1,903 12 17 アメリカのノースカロライナ州キティホーク近郊のキルデビルヒルズでライト兄弟が12馬力のエンジンを搭載したライトフライヤー号が12秒間、約37mの世界初の有人動力飛行に成功する。
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