ユダ王国一元化
建国から滅亡、そして捕囚へ──
368年に及ぶユダ王国の全記録を一本の時系列に貫く。
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本書について
紀元前928年、ソロモンが崩御した。跡を継いだ息子レハブアムに、北部の人々は「ソロモンが課した過酷な労働と重い軛を軽くして欲しい」と訴えたが、レハブアムは長老達の穏健な助言を退け、若者達の「私の小指はソロモンの腰より太い」という強硬な言葉を其の儘採用した。北部の人々は支配を拒み、遣わされた役務長官アドニラムを石撃ちで殺害し、ヤロブアム1世を擁立してイスラエル王国を建国する。斯うしてヘブライ王国は南北に裂け、南部が「ユダ王国」となった——本書は、此の分裂を起点として、20代の国王が刻んだ歴史から、滅亡後のエホヤキン釈放に至る368年の全過程を、年月日単位で一元化した記録である。
建国から僅か6年、紀元前922年にはエジプト第22王朝の初代ファラオ・シェションク1世がパレスチナに侵攻し、旧ヘブライ王国の領地は蹂躙された。レハブアムは神殿と王宮の財宝を差し出して滅亡を免れたが、ユダ王国はエジプト第22王朝の属国となる。第3代アサは伝統的なヤハウェ崇拝を守って偶像崇拝の根絶に努め、エチオピアの族長ゼラ率いる1,000,000名の軍を退けた。第4代ヨシャファトは高官・レビ族・祭司から成る委員会を町々へ遣わして公的な宗教教育を行い、地方とエルサレムの二審制を採る司法制度改革を断行した。改革の王と背教の王が交互に現れる——ユダ王国の歴史は、其の振幅の連続であった。
紀元前848年、ヨシャファトの息子ヨラムは、アハブとイゼベルの娘である妻アタルヤに唆され、6名の兄弟を剣で殺害してバアル礼拝を王国内に持ち込んだ。ヨラムは不治の内臓の病に侵され、内臓が身体の外にはみ出て崩御し、王墓にも葬られなかった。続く第6代アハズヤがイエフに討たれると、アタルヤは王位継承者となり得る一族を悉く殺害して自ら王位に就く。唯一人、大祭司エホヤダの妻エホシェバに救い出された乳児ヨアシュだけが、ヤハウェの神殿の小部屋で匿われ続け、紀元前835年、百人隊長5名とレビ人の手で王座に据えられた。アタルヤは宮殿の馬屋で刺殺された。
第10代ウジヤはダビデ・ソロモン時代の領地を略取り返し、307,500名の兵とバリスタで軍備を固めたが、絶対王政を志して神殿で香を焚こうとした途端、額にツァーラアトが現れて隔離された。第12代アハズはヒンノムの谷のトフェトで乳幼児をモレクに捧げ、新アッシリア帝国に金銀を送って庇護を求め、ヤハウェの神殿を悉く穢した。此の暗転を覆したのが第13代ヒゼキヤである。ヒゼキヤは閉ざされていた神殿の扉を開いて清め、ダビデ・ソロモン以来の規模で祭儀を再建した。紀元前701年、センナケリブ率いる新アッシリア帝国軍がエルサレムに迫り、ラブ・シャケは城壁の上のユダ王国民に降伏を叫んだ。だがイザヤが「新アッシリア帝国軍がエルサレムに入る事は無い」とヤハウェの声を代弁した其の夜、御使いが遣わされ、新アッシリア帝国軍185,000名が討たれた。ヒゼキヤが掘らせた約533mの水路「シロアハ」は、ギホンの泉からシロアムの池へと、包囲下の都に水を送り続けた。
しかし其の息子、第14代マナセは再び偶像崇拝へと傾き、自分の子供を火の中に通らせ、自身を批判した預言者イザヤを杉の木に逆さに吊るして鋸で引き裂かせた。マナセは紀元前648年、鉤で捕えられ青銅の足枷でバビロンに連行された末に悔い改め、帰還してヤハウェの祭壇を築き直している。第16代ヨシヤは偶像を一掃し、紀元前622年、修復中の神殿から発見された「律法の書」を聞いて衣を引き裂き、ソロモン・ヒゼキヤの代を凌ぐ規模の過越祭を執り行った。だが紀元前609年、ネコ2世率いるエジプト第26王朝軍の通過を拒んだヨシヤは、メギドで矢を受けて致命傷を負い、独立国家の野望を果たせぬ儘エルサレムで息を引き取る。
そして終焉が訪れる。紀元前605年、ネブカドネザル2世がエルサレムを包囲し、ダニエルを含む王族・貴族が連行された。紀元前597年3月16日にはエルサレムが征服され、エホヤキンと、預言者エゼキエルを含む部下10,000名がバビロンへと去る。紀元前589年12月17日、最後の国王ゼデキヤの反乱を鎮圧すべくネブカドネザル2世が到着し、紀元前587年6月30日に城壁が破られ、紀元前586年7月18日、ソロモン神殿は破壊された。ユダ王国は滅亡し、属州「イェハド」として併合される。ゼデキヤは息子達を目の前で殺害され、両眼を刳り抜かれてバビロンで鎖に繋がれた。預言者エレミヤは反バビロンの人々に伴われてエジプトへ去る。それから26年後の紀元前560年3月21日、アメル・マルドゥクは獄中のエホヤキンを釈放し、バビロンに居た王達の中で最も高い位を与えた。建国・繁栄・衰退・滅亡・捕囚に至る全過程を、本書は一冊に束ねている。
登場人物
- レハブアム 初代ユダ王国国王。ソロモンとアモン人ナアマの息子。若者達の強硬な意見を採用して北部の民の心を失い、ヘブライ王国を分裂させた。シェションク1世の侵攻を受け、ユダ王国はエジプト第22王朝の属国となった。
- アビヤム 第2代ユダ王国国王。レハブアムの息子。400,000名の兵を率い、ヤロブアム1世率いる800,000名のイスラエル王国軍に攻撃を仕掛け、500,000名を殺害した。
- アサ 第3代ユダ王国国王。アビヤムの息子。伝統的なヤハウェ崇拝を守り、偶像崇拝の根絶に努めた。エチオピアの族長ゼラ率いる1,000,000名の軍を撃退した。
- ヨシャファト 第4代ユダ王国国王。アサの息子。公的な宗教教育プログラムを実行し、司法制度改革を断行した。アハブと共にラモト・ギルアデの戦闘に参加した。
- ヨラム 第5代ユダ王国国王。ヨシャファトの息子。アタルヤに唆されて兄弟6名を殺害し、バアル礼拝を王国内に持ち込んだ。内臓が身体の外にはみ出ての最期であった。
- アハズヤ 第6代ユダ王国国王。ヨラムの末子。アタルヤの影響を受けバアル礼拝を採用した。イエフの追撃を受け、メギドで崩御した。
- アタルヤ 第7代ユダ王国国王。アハブとイゼベルの娘。王位継承者となり得る者と一族を殺害して即位した。エホヤダの策により打倒され、宮殿の馬屋で刺殺された。
- ヨアシュ 第8代ユダ王国国王。アハズヤの息子。エホヤダの妻エホシェバに匿われて生き延び、エホヤダの策により即位した。エホヤダの死後は偶像崇拝に走り、家臣に暗殺された。
- アマツヤ 第9代ユダ王国国王。ヨアシュの息子。エドム人を征伐したが、其の偶像を持ち帰って祀った。イスラエル王国に大敗し、ラキシュで国民に殺害された。
- ウジヤ 第10代ユダ王国国王。アマツヤの息子。ダビデ・ソロモン時代の領地を略取り返し、軍備を大幅に増強した。ヤハウェの神殿で香を焚こうとしてツァーラアトに罹り、隔離された。
- ヨタム 第11代ユダ王国国王。ウジヤの息子。神殿の北側に門を建て、城壁の拡張工事を行った。アモン人の反乱を鎮圧し、3年間貢物を受け取った。
- アハズ 第12代ユダ王国国王。ヨタムの息子。バアル・モレク・アシェラを礼拝し、乳幼児をモレクに捧げた。ティグラト・ピレセル3世に援軍を頼み、ヤハウェの神殿を悉く穢した。
- ヒゼキヤ 第13代ユダ王国国王。アハズの息子。ヤハウェの神殿を修復し、過越祭を復活させた。センナケリブ率いる新アッシリア帝国軍の包囲に際し、ヤハウェの御使いが185,000名を討った。約533mのシロアハの水路を掘った。
- マナセ 第14代ユダ王国国王。ヒゼキヤの息子。自身の子供を偶像の火の中に通らせ、イザヤを鋸で引き殺した。バビロンに連行された後悔い改め、帰還してヤハウェの祭壇を築き直した。
- アモン 第15代ユダ王国国王。マナセの息子。改心する前のマナセの政治を踏襲して新アッシリア帝国に従属し、偶像に仕えた。紀元前640年、家臣の謀反により殺害され、ウザの園に葬られた。
- ヨシヤ 第16代ユダ王国国王。アモンの息子。偶像を一掃し、律法の書の発見を契機に大規模な宗教改革を断行した。メギドの戦いでエジプト第26王朝軍に敗れて崩御した。
- ヨアハズ 第17代ユダ王国国王。ヨシヤの参男。即位に反対していたネコ2世によってリブラに幽閉され、エジプト第26王朝に連行されて其処で崩御した。
- エホヤキム 第18代ユダ王国国王。ヨシヤの弐男。ネコ2世により即位させられた傀儡。エレミヤの預言の巻物を小刀で切り裂き、暖炉の火に投げ入れた。預言者ウリヤを殺害した。
- エホヤキン 第19代ユダ王国国王。エホヤキムの息子。ネブカドネザル2世に降伏し、バビロンに連行された。紀元前560年にアメル・マルドゥクに釈放された。
- ゼデキヤ 第20代ユダ王国国王。ネブカドネザル2世に即位させられた最後の国王。反乱を起こすもエルサレムは陥落し、息子達を目の前で殺害され、両眼を刳り抜かれてバビロンに連行された。
- イザヤ 預言者。紀元前740年に召命を受けて活動を開始した。ヒゼキヤの治世にセンナケリブからの防衛を預言し、バビロン捕囚を予告した。マナセにより鋸で引き殺された。
- エレミヤ 預言者。紀元前627年に召命を受けて活動を開始した。エルサレムの陥落を預言し、投獄・水溜めへの投げ込み等の迫害を受けた。最終的にエジプトに連行された。
- エホヤダ 大祭司。アタルヤの治世下でヨアシュを匿い、百人隊長達と共にアタルヤを打倒してヨアシュを即位させた。バアルの祭壇と像を破壊させた。
- ネブカドネザル2世 第2代新バビロニア王国国王。紀元前605年にエルサレムを包囲し、紀元前597年に征服した。紀元前586年にソロモン神殿を破壊し、ユダ王国を滅亡させた。ゼデキヤの両眼を刳り抜いた。
- センナケリブ 第13代新アッシリア帝国国王。ユダ王国の砦の町を占領し、エルサレムを包囲した。ラブ・シャケを通じてヒゼキヤに降伏を要求したが、ヤハウェの御使いに185,000名を討たれた。
- シェションク1世 初代エジプト第22王朝ファラオ。紀元前922年にパレスチナに侵攻し、旧ヘブライ王国の領地を蹂躙した。ユダ王国をエジプト第22王朝の属国とした。
主要な地名・拠点
- エルサレム ヘブライ王国の首都を引き継いだユダ王国の首都。ヤハウェの神殿やソロモンの王宮が有った。紀元前586年にネブカドネザル2世により征服され、神殿は破壊された。
- ラキシュ 現在のイスラエル南部地区。センナケリブが包囲した要衝。アマツヤが国民の反乱から逃亡し、殺害された地。ネブカドネザル2世にも攻め落とされた。
- ラモト・ギルアデ 現在のシリアのクネイトラ県付近。アラム人に奪われた都市。ヨシャファトとアハブが連合軍で奪還を試み、アハブが戦死した。イエフが油を注がれた地。
- ダマスカス 現在のシリアの首都。アラム王の居城。アサがベネハダデ1世に賄賂を送った先。ティグラト・ピレセル3世に征服された。アハズがアラムの祭壇に惹かれた地。
- バビロン 新バビロニア王国の首都。ユダ王国の王族・貴族・民が捕囚として連行された地。エホヤキンが釈放され、王達の中で最も高い位を与えられた地。
- メギド 現在のイスラエル北部地区。アハズヤが負傷後に崩御した地。ヨシヤがネコ2世率いるエジプト第26王朝軍に敗れ、致命傷を負った地。
- ヒンノムの谷 現在のイスラエルのエルサレム地区。アハズやマナセが子供を火の中に通らせ、偶像に捧げた地。トフェトに偶像崇拝の祭壇が築かれた。
- リブラ 現在のシリアのホムス県。ネコ2世がヨアハズを幽閉した地。ネブカドネザル2世がゼデキヤの息子達を殺害し、ゼデキヤの両眼を刳り抜いた地。
- ギホンの泉 ケデロンの谷に在る泉。ヒゼキヤが約533mのシロアハの水路を掘り、シロアムの池まで水を引いた起点。ラブ・シャケが城壁上のユダ王国民に降伏を呼び掛けた地点。
- ミツパ アサがラマの建築資材を用いて砦を築いた地。ユダ王国滅亡後、総督ゲダルヤの拠点となり、エレミヤとバルクも共に住んだ。イシュマエルによるゲダルヤ暗殺の舞台。
建国・繁栄・衰退・滅亡・捕囚──
368年に及ぶユダ王国の全記録を一冊に。
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