エホヤキム一元化
預言者を殺し、巻物を暖炉で焼き──
二度立場を変えた傀儡の王の11年を一元化。
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本書について
紀元前609年、ネコ2世がリブラ(現在のシリアのホムス県)にヨアハズを幽閉した。元よりネコ2世はヨアハズの即位に反対であり、ユダ王国には銀3,400kgと金34kgの科料を課す。そして、ヨシヤの弐男エホヤキムを改名させ、第18代ユダ王国国王として即位させた。ヨアハズはエジプト第26王朝へ連行され、其処で崩御している。本書は、此の擁立を起点として、紀元前598年12月10日頃の崩御に至る迄のエホヤキムの治世を、年月日単位で一元化した記録である。
ネコ2世が要求する銀を差し出す為、エホヤキムは国民に重税を課さねばならなかった。エジプト第26王朝の傀儡であった王は、自分の身を守る為に公正と正義の無い政治を行い、先王達に倣ってバアル礼拝を復活させ、ヤハウェの前に悪を行なった。
同じ年、キルヤト・エアリム出身の預言者ウリヤが、もし民が悔い改めないならエルサレム神殿はシロの様になり、エルサレムは誰も住む者の無い廃墟となる、と預言する。エホヤキム・将校・役人は其の言葉を聞いた。王は人を遣わせてウリヤを殺害しようとし、其れを知ったウリヤはエジプト第26王朝へ逃亡する。だがエホヤキムはアクボルの子エルナタンに数名の者を率いさせて派遣し、ウリヤを連れ戻させた。ウリヤはエホヤキムの手で殺害され、死体は共同墓地に捨てられた。
同じ言葉を、預言者エレミヤもヤハウェの神殿で語った。此れを聞いた祭司・預言者・民達は、裁判に掛けて処刑する為にエレミヤを捕縛し、ユダ王国の首長達も、裁判の行われる新しい門の入り口へ集結する。祭司・預言者達は一様に「エレミヤは死刑に当たる」と主張した。しかし首長・民達は3つの理由を挙げて「エレミヤは死刑に当たらない」と反論する。エレミヤはヤハウェの御名によって語った事、ヒゼキヤの治世下でもミカが同様の内容を語った事が有る事、そしてウリヤも同様の内容を語り、逃亡先から連れ戻されて殺され、死体を共同墓地に捨てられた事——同じ言葉を語った先例が、死刑の根拠にも、死刑を退ける根拠にもなったのである。更にシャファンの子アヒカムが庇った事で、エレミヤは殺害を免れた。
紀元前605年12月頃、エホヤキムはエルサレムの全ての民と、ユダの町々からエルサレムに来ている全ての民に、ヤハウェの前での断食を布告する。其の断食日、ユダ王国全土から神殿の儀式に参列する人々が上って来る中、バルクは、シャファンの子で書記官のゲマルヤの事務所へ向かった。新しい門の入り口に近く、境内の奥の集会所の側に在った其の事務所の食堂から、バルクはエレミヤの口述した預言の巻物を読み上げる。ゲマルヤの子ミカヤが宮殿の会議室へ報告に走ると、書記官エリシャマ、シェマヤの子デラヤ、アクボルの子エルナタン、ゲマルヤ、ハナヌヤの子ゼデキヤ等が、クシの子シェレムヤの子ネタヌヤの子エフディを遣わしてバルクを呼び寄せた。読み終えた一同は怯えきり、是非エホヤキムの耳に入れなければと言いつつ、バルクとエレミヤには身を隠す様忠告し、巻物をエリシャマの部屋に隠して報告に出掛けた。
報告を聞いたエホヤキムは、早速エフディに巻物を取って来させ、側近達の前で読み上げさせた。王は暖房設備の有る部屋の暖炉の前に座っており、エフディが3〜4段読み上げる度に、小刀で其の部分を切り裂いては火の中へ投げ入れる。デラヤ・エルナタン・ゲマルヤの3名は焼かない様にと抗議したが、其の3名以外は抗議せず、感情を外に出さなかった。巻物は最終的に全て灰になった。王は更に、王子エラフメエル、アズリエルの子セラヤ、アブデエルの子シェレムヤに命じ、バルクとエレミヤを逮捕させようとする。だがエレミヤは再びバルクを呼び、預言を口述して翌年迄に巻物を作り直させた。今度は、前の巻物には無かった一項目が加えられている——前の巻物にはネブカドネザル2世が此の国を荒らし何もかも壊すと書いてあったので、お前は怒って焼いた、故にお前の子孫からは王座に就く者が居なくなり、お前の死体は捨てられて太陽の炎熱と夜の霜に晒される、と。焼かれた言葉は、王自身の死体を名指しする言葉となって戻って来たのである。
紀元前602年、エジプト第26王朝に肩入れしていたエホヤキムは、新バビロニア王国に忠誠を誓う様になり、エルサレム(現在のイスラエル)の国庫からネブカドネザル2世へ貢物を納め始める。ネブカドネザル2世は王族・貴族の一部を人質に取り、ソロモン神殿(第一神殿)の美術品を得た。しかし紀元前601年、ネブカドネザル2世がエジプト第26王朝の侵略を試みてネコ2世に撃退され、大きな損失を出すと、エホヤキムはエレミヤの諫言が有ったにも拘らず貢納を止め、再びエジプト第26王朝寄りの立場をとって叛逆する。そして紀元前598年12月10日頃、エホヤキムは崩御した。エジプトと新バビロニアの間で二度立場を変えた王が、何を残して去ったのか——本書は其の全過程を一冊に束ねている。
登場人物
- エホヤキム 本書の中心人物。第18代ユダ王国国王。ヨシヤの弐男で、ネコ2世に改名させられた上で擁立された。科料の銀を差し出す為に国民へ重税を課し、公正と正義の無い政治を行ってバアル礼拝を復活させた。預言者ウリヤを逃亡先から連れ戻して殺害し、エレミヤの巻物を暖炉で焼いた。新バビロニア王国への服従と離反を経て、紀元前598年12月10日頃に崩御した。
- ヨシヤ ユダ王国国王。エホヤキムとヨアハズの父。エホヤキムは其の弐男にあたる。
- ヨアハズ エホヤキムの前のユダ王国国王。即位に反対していたネコ2世によってリブラに幽閉され、エジプト第26王朝へ連行されて其処で崩御した。
- ネコ2世 エジプト第26王朝のファラオ。ヨアハズをリブラに幽閉し、ユダ王国に銀3,400kgと金34kgの科料を課した上で、エホヤキムを改名させて即位させた。紀元前601年にはネブカドネザル2世の侵略を撃退し、大きな損失を負わせている。
- ネブカドネザル2世 新バビロニア王国国王。エホヤキムから貢物を受け、王族・貴族の一部を人質に取ってソロモン神殿の美術品を得た。紀元前601年のエジプト第26王朝侵略に失敗すると、エホヤキムに叛逆される。エレミヤの巻物では、此の国を荒らし何もかも壊す者として記されていた。
- ウリヤ キルヤト・エアリム出身の預言者。民が悔い改めないならエルサレム神殿はシロの様になり、エルサレムは廃墟となると預言した。命を狙われてエジプト第26王朝へ逃亡したが、エルナタンらに連れ戻され、エホヤキムの手で殺害されて死体を共同墓地に捨てられた。
- エレミヤ 預言者。ウリヤと同じ内容をヤハウェの神殿で警告して捕縛され、裁判に掛けられたが、首長・民達の反論とアヒカムの庇護によって殺害を免れた。バルクに口述して巻物を完成させ、焼かれた後には一項目を加えて作り直させている。紀元前601年の叛逆に際しても諫言したが、聞き入れられなかった。
- バルク 書記官。エレミヤの口述を記して巻物を完成させ、断食日にゲマルヤの事務所の食堂から読み上げた。宮殿の会議室でも読み聞かせ、身を隠す様忠告された。巻物が焼かれた後、再びエレミヤの口述を記して作り直している。
- アヒカム シャファンの子。裁判の場でエレミヤが殺害されない様庇い、其の命を救った。
- シャファン エレミヤを庇ったアヒカムの父。書記官ゲマルヤも同じくシャファンの子と記されている。
- ミカ 預言者。ヒゼキヤの治世下で、エレミヤやウリヤと同様の内容を語った事が有る人物。其の先例が、エレミヤを死刑から救う根拠の1つとして挙げられた。
- ヒゼキヤ 嘗てのユダ王国国王。其の治世下でミカが同様の預言を語った事が、エレミヤの裁判で先例として持ち出された。
- ゲマルヤ シャファンの子で書記官。バルクが巻物を読み上げた事務所の主であり、宮殿の会議室にも居合わせた。巻物を焼かない様に抗議した3名の1人。
- ミカヤ ゲマルヤの子。事務所でバルクの言葉を聞くと、宮殿の会議室へ報告に行った。巻物が王の耳に届く発端となった人物。
- エリシャマ 書記官。宮殿の会議室に居た人物の1人であり、巻物が一時隠された部屋の主。エフディは此の部屋から巻物を持ち出した。
- デラヤ シェマヤの子。宮殿の会議室に居た人物の1人。巻物を焼かない様に抗議した3名の1人。
- エルナタン アクボルの子。エホヤキムの命により数名の者を率い、エジプト第26王朝へ派遣されてウリヤを連れ戻した。一方で、巻物を焼かない様に抗議した3名の1人でもある。
- ゼデキヤ ハナヌヤの子。宮殿の会議室に居た人物の1人。ミカヤの報告を聞いてバルクを呼び寄せた側にあたる。
- エフディ クシの子シェレムヤの子ネタヌヤの子。会議室の一同に遣わされてバルクを呼び寄せた。後にエリシャマの部屋から巻物を持ち出し、エホヤキムと側近達の前で読み上げた。
- エラフメエル 王子。エホヤキムからバルクとエレミヤの逮捕を命じられた3名の1人。
- セラヤ アズリエルの子。エホヤキムからバルクとエレミヤの逮捕を命じられた3名の1人。
- シェレムヤ アブデエルの子。エホヤキムからバルクとエレミヤの逮捕を命じられた3名の1人。
主要な地名・拠点
- エルサレム 現在のイスラエル。ユダ王国の首都。ウリヤとエレミヤが廃墟となると預言した都であり、エホヤキムが断食を布告し、巻物を暖炉で焼いた地。紀元前602年からは、此の国庫からネブカドネザル2世へ貢物が納められた。
- ヤハウェの神殿 ソロモン神殿(第一神殿)。エレミヤが警告を語って捕縛された場所。ネブカドネザル2世は、此処の美術品を得ている。
- 新しい門の入り口 エレミヤの裁判が行われ、ユダ王国の首長達が集結した場所。バルクが巻物を読み上げたゲマルヤの事務所も、此の入り口の近くに在った。
- ゲマルヤの事務所 新しい門の入り口に近く、境内の奥の集会所の側に在った。バルクが其の食堂から、エレミヤの預言を記した巻物を読み上げた場所。
- 宮殿の会議室 ミカヤが報告に走った先。書記官エリシャマ・デラヤ・エルナタン・ゲマルヤ・ゼデキヤらが居合わせ、呼び寄せられたバルクが巻物を読み聞かせた場所。
- エリシャマの部屋 会議室の一同が、エホヤキムに報告へ出掛ける前に巻物を隠した場所。後にエフディが此処から巻物を持ち出した。
- 共同墓地 殺害された預言者ウリヤの死体が捨てられた場所。其の事実は、エレミヤの裁判でも先例として語られた。
- リブラ 現在のシリアのホムス県。ネコ2世がヨアハズを幽閉した地。
- キルヤト・エアリム 預言者ウリヤの出身地。
- シロ ウリヤとエレミヤの預言に現れる地。民が悔い改めないなら、エルサレム神殿は此の地の様になると告げられた。
擁立・重税・処刑・焼却・服従・叛逆──
エホヤキムの治世の全記録を一冊に。
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