アタルヤ一元化
平和を保つ為の婚姻が、王家を絶やす刃となった──
第7代ユダ王国国王アタルヤの24年を一元化。
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本書について
紀元前859年頃、第4代ユダ王国国王ヨシャファトは、平和の維持を意図して、自らの息子ヨラムに、イスラエル王国国王アハブの娘アタルヤを娶らせた。両王国の間に波風を立てぬ為の、政略としての婚姻である。だが此の縁組が齎したのは平和ではなかった。本書は、アタルヤの輿入れを起点として、24年後に宮殿の馬屋で刺殺される迄の全過程を、年月日単位で一元化した記録である。
紀元前848年頃、ヨラム(ユダ王国国王)はアタルヤに唆され、ヨシャファトから相続された財産を奪う為に、6名の兄弟を剣で殺害した。アザルヤ・エヒエル・ゼカリヤ・アザルヤ・ミカエル・シェファテヤ——同名のアザルヤが2名居る。更に敵対する首長数名も手に掛けている。同じ年、ヨラム(ユダ王国国王)はアタルヤの両親であるアハブとイゼベルの信仰に倣い、偶像礼拝を復帰させた。ヨシャファトが撤去させていた偶像崇拝の祭壇は復興され、王自身も偶像を拝む。更にアタルヤの影響の下、官能主義に根ざし、神殿での儀式的な売春行為を含むバアル礼拝が、王国内へ持ち込まれた。ヤハウェに背く道が、王妃を通じて開かれたのである。
紀元前847年頃、ユダ王国はペリシテ人とアラビア人の侵攻を受ける。王宮の財産は悉く奪われ、王妃はアタルヤを除いて殺害され、王子も末子アハズヤを除いて全て殺害された。王家に残された男子は1人だけであった。そして此の掃討を生き延びた王妃も、アタルヤ唯1人である。
紀元前842年頃、ヨラム(ユダ王国国王)が崩御する。内臓が身体の外にはみ出ての最期であった。国民から全く惜しまれる事は無く、過去の国王とは異なってお香も焚かれず、王墓に葬られる事も無かった。跡を継いだアハズヤが第6代ユダ王国国王に即位するが、其のアハズヤもまた母アタルヤの影響を受け、父と同じくバアル礼拝を採用する。
同じ年、アハズヤ崩御の知らせを聞いたアタルヤは、王位継承者となり得る者と一族を全て殺害し、自ら第7代ユダ王国国王に即位した。唯1人、大祭司エホヤダの妻エホシェバが、アハズヤの息子ヨアシュと其の乳母を救い出し、ヤハウェの神殿の神具を仕舞う小部屋に匿う。ヨアシュは其処で、叔父・叔母・乳母達に守られて養育された。かつて自分だけが生き残った掃討を、今度は自らの手で王家に対して行った女が、只1人だけ取り零した幼子——其の存在が、7年後に治世を終わらせる事になる。
紀元前835年頃、エホヤダが動いた。百人隊長5名とアタルヤの側近を呼び寄せ、秘密を守ると誓約させた上でヨアシュを見せる。安息日には3分の1を宮殿の護衛に、残る3分の2を神殿の警護に当たらせ、各々武器を持ってヨアシュの回りを囲み、囲みを破ろうとする者が居れば殺し、片時も側を離れてはならない——其の指示の下、ユダ王国全土からレビ人が集められ、ダビデの槍や盾で武装した。既に武器を手にしていた近衛兵は神殿の正面に立ち、ヨアシュの隠れ場所に近い祭壇の周りを固める。其の只中にヨアシュが連れて来られ、王冠を被り、モーセの十戒の書物を受け取って油を注がれた。レビ人達は拍手喝采し、「王様万歳」と叫ぶ。新しい王を讃える声を聞いたアタルヤは、自分が出し抜かれた事に気付き、「謀反だ、反逆だ」と絶叫して衣を裂き逆上した。エホヤダは百人隊長5名に、アタルヤを連れ出せ、神殿の中で殺してはいけない、アタルヤに付く者が在れば殺して構わない、と命じる。アタルヤは捕らえられて引き摺り出され、宮殿の馬屋へ連行されて刺殺された。ヨアシュは衛兵所を経由して宮殿へ入り、王座に着いて第8代ユダ王国国王となる。バアルの祭司マタンは祭壇の前で殺害され、バアルの祭壇と像はユダ王国国民の手によって破壊された。本書は、婚姻から刺殺に至る此の全過程を、一冊に束ねている。
登場人物
- アタルヤ 本書の中心人物。第7代ユダ王国国王。アハブとイゼベルの娘であり、ヨラム(ユダ王国国王)の妻。平和維持の政略として嫁ぎ、夫を唆して6名の兄弟の殺害と偶像礼拝の復興に導き、バアル礼拝を王国内へ持ち込んだ。ペリシテ人・アラビア人の侵攻では唯1人生き残った王妃であり、息子アハズヤの崩御後は王位継承者と一族を全て殺害して自ら即位した。紀元前835年頃、エホヤダの策により捕らえられ、宮殿の馬屋で刺殺された。
- ヨラム(ユダ王国国王) 第5代ユダ王国国王。ヨシャファトの息子でアタルヤの夫。妻に唆され、相続財産を奪う為に6名の兄弟と敵対する首長数名を殺害した。アハブとイゼベルの信仰に倣って偶像礼拝を復帰させ、父が撤去させた祭壇を復興した。内臓が身体の外にはみ出ての最期を遂げ、惜しまれる事無く、お香も焚かれず王墓にも葬られなかった。
- ヨシャファト 第4代ユダ王国国王。ヨラム(ユダ王国国王)の父。平和維持を意図して、息子とアハブの娘アタルヤの婚姻を取り決めた。偶像崇拝の祭壇を撤去させていたが、其の全ては息子の代で復興される事となった。
- アハブ イスラエル王国国王。アタルヤの父。ヨラム(ユダ王国国王)が其の信仰に倣った事で、ユダ王国に偶像礼拝が復帰する原因となった。
- イゼベル アハブの妻。アタルヤの母。ヨラム(ユダ王国国王)は其の信仰にも倣い、バアル礼拝を王国内へ持ち込んだ。
- アハズヤ 第6代ユダ王国国王。ヨラム(ユダ王国国王)とアタルヤの末子。ペリシテ人・アラビア人の侵攻で兄弟が悉く殺害される中、唯1人生き残った。即位後は母アタルヤの影響を受け、父と同じくバアル礼拝を採用した。其の崩御が、アタルヤによる王家の皆殺しの引き金となった。
- ヨアシュ 第8代ユダ王国国王。アハズヤの息子。アタルヤによる王位継承者殺害の際、エホシェバによって乳母と共に救出され、ヤハウェの神殿の神具を仕舞う小部屋で、叔父・叔母・乳母達に守られて養育された。紀元前835年頃、王冠を被り、モーセの十戒の書物を受け取って油を注がれ、王座に着いた。
- エホヤダ 大祭司。エホシェバの夫。百人隊長5名とアタルヤの側近に誓約させた上でヨアシュを見せ、安息日の警護配置を指示してユダ王国全土からレビ人を集めた。ダビデの槍や盾で武装させて戴冠式を執り行い、アタルヤを神殿の外へ連れ出させて排除し、ヨアシュの即位を成し遂げた。
- エホシェバ 大祭司エホヤダの妻。アタルヤによる王位継承者殺害の際、アハズヤの息子ヨアシュと其の乳母を救出し、ヤハウェの神殿の神具を仕舞う小部屋に匿った。
- アザルヤ ヨシャファトの息子。ヨラム(ユダ王国国王)の兄弟。相続財産を奪う為に剣で殺害された。同名の兄弟が2名存在した。
- エヒエル ヨシャファトの息子。ヨラム(ユダ王国国王)の兄弟。相続財産を奪う為に剣で殺害された。
- ゼカリヤ ヨシャファトの息子。ヨラム(ユダ王国国王)の兄弟。相続財産を奪う為に剣で殺害された。
- ミカエル ヨシャファトの息子。ヨラム(ユダ王国国王)の兄弟。相続財産を奪う為に剣で殺害された。
- シェファテヤ ヨシャファトの息子。ヨラム(ユダ王国国王)の兄弟。相続財産を奪う為に剣で殺害された。
- マタン バアルの祭司。ヨアシュの即位に際し、バアルの祭壇の前で殺害された。祭壇と像もユダ王国国民の手で破壊された。
主要な地名・拠点
- エルサレム ユダ王国の首都。ヤハウェの神殿と宮殿が所在し、アタルヤの即位と失脚、そしてヨアシュの戴冠の舞台となった。
- ヤハウェの神殿 エルサレムに所在する神殿。エホシェバがヨアシュと乳母を匿った場所であり、レビ人と近衛兵に囲まれてヨアシュの戴冠式が執り行われた場所でもある。
- 神具を仕舞う小部屋 ヤハウェの神殿の中に在る一室。アタルヤの皆殺しを逃れたヨアシュと乳母が匿われ、叔父・叔母・乳母達に守られて養育された場所。
- 祭壇の周り 神殿正面に立った近衛兵が固めた場所。ヨアシュの隠れ場所に近く、戴冠の間、王を守る囲みの内側となった。
- 衛兵所 戴冠を終えたヨアシュが、神殿から宮殿へ入る際に経由した場所。
- 宮殿 安息日には3分の1のレビ人が護衛に当たった場所。ヨアシュが王座に着き、第8代ユダ王国国王として即位した場所でもある。
- 宮殿の馬屋 アタルヤが連行され、刺殺された場所。エホヤダが神殿の中での殺害を禁じた為、此処まで引き摺り出された。
- バアルの祭壇 アタルヤの影響で王国内に持ち込まれたバアル礼拝の拠点。ヨアシュの即位に際し、祭司マタンが其の前で殺害され、祭壇と像はユダ王国国民によって破壊された。
婚姻・兄弟殺害・簒奪・刺殺──
24年に亘るアタルヤの全記録を一冊に。
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