宇宙誕生と太陽質量で決まる
恒星の行く末一元化
紀元前138億2,000万年、無から宇宙が誕生する──
宇宙の始まりと、太陽質量が決める恒星五通りの行く末を一元化。
JPY 200(税込)
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本書について
紀元前138億2,000万年、無から宇宙が誕生する——本書が記録する最初の出来事である。誕生から小数点以下に0が43個続く程の一瞬の後にインフレーションが始まり、其の時の宇宙の直径は0が35個続く程の大きさ、即ち原子核よりも遥かに小さかった。そして西暦1兆年、白色矮星となった太陽が完全にエネルギーを失い、輝きを止めて黒色矮星となる日まで。本書は、宇宙の始まりから恒星の結末までを一本の時間軸へ並べ、年代順に一元化した年表である。
インフレーションが終わると宇宙の直径は0.01m程となり、其のエネルギーが熱に変わってビッグバンを引き起こす。温度は100兆℃から1,000兆℃に達し、光子を含む大量の素粒子——クォークとグルーオン——が生まれた。誕生から0.0001秒後、1兆℃まで下がるとクォークと反クォークが対消滅し、残ったクォークとグルーオンから陽子と中性子が生まれ、物質が誕生する。180秒程で10億℃まで下がると陽子と中性子が結び付き、重水素・ヘリウム3・ヘリウム4といった安定原子核と、三重水素・ベリリウム7・ベリリウム8といった不安定原子核が生まれる。そして1,200秒程で温度と密度が核融合に必要な水準を下回り、元素合成は終わった。
紀元前138億1,962万年、3,000℃まで温度が下がると電子が原子核に捕らえられ、光子や電波が直進できる様になる——「宇宙の晴れ上がり」である。此の時の宇宙の大きさは1,000万光年程であった。やがてダークマターの重力が塊を作り、其の中のガスが収縮して、紀元前136億7,000万年に最初期の恒星が次々と誕生する。太陽の数百倍という桁外れの質量を持った星々は、紀元前136億6,500万年に次々と超新星爆発し、自らが作り出した重元素を宇宙へばら撒いた。紀元前130億年に銀河系が誕生し、紀元前70億年、宇宙の膨張は加速を始める。
紀元前54億年、太陽系の材料となる元素を撒き散らす超新星爆発が起こる。紀元前46億300万年、星間雲が回転を始めて分子雲となり、収縮の果てに原始太陽が赤外線を放って輝き始め、取り込まれずに残ったガスと塵が原始太陽系円盤となって其れを取り囲んだ。紀元前45億9,800万年に直径数kmの微惑星が生まれ、紀元前45億9,000万年に太陽はTタウリ型星となり、紀元前45億4,800万年には水星から火星までの範囲に20個程の原始惑星が誕生する。紀元前45億4,300万年、そのうち10個が衝突・合体して地球が生まれた。衝突の熱で地表は融解してマグマオーシャンとなり、表面温度は約1,900℃に達し、内部から放出されたガスがメタン・アンモニア・二酸化炭素を主とする原始大気を作った。紀元前45億2,500万年には小惑星ベスタが巨大衝突を起こし、紀元前45億年、太陽の中心部は1,000万℃を超えて主系列星となる。
そして本書のもう一つの主題——恒星の行く末を決めるのは、ただ太陽質量である。太陽質量0.08未満では水素の核融合が始まらず、重力収縮のエネルギーだけで赤外線を発しながら冷えてゆく褐色矮星となる(インディアン座ε星A)。0.08から4未満なら、赤色巨星を経て白色矮星となり、長い時間を掛けて黒色矮星へ至る(太陽)。4から8未満では中心部の炭素が起こす核融合の激しさに耐えきれず超新星爆発する(アスケラ)。8から30なら鉄までを作り上げた末に超新星爆発し、密度5億t/㎤の中性子星を残す(アルマク)。そして30を超えると、中性子の核力ですら重力収縮を支えきれず、中心核は際限無く潰れて重力崩壊を起こし、光さえ抜け出せないブラックホールとなる(射手座LBV 1806-20)。
太陽の未来も、其の区分に従って刻まれている。西暦5億年、太陽の高温化で水蒸気が増え二酸化炭素が減り、光合成が難しくなって耐性の弱い植物から姿を消し始める。西暦53億9,700万年、水素が枯渇して中心部がヘリウムとなり、太陽は大きさ100倍・表面温度3,000℃の赤色巨星となって外層を吹き飛ばしてゆく。西暦70億年、全ての核融合を停止した中心核は白色矮星となり、放出されたガスが其の紫外線に照らされて惑星状星雲となる。白色矮星の最大質量は太陽の1.46倍——チャンドラセカール限界——であり、理論上此れ以上重い白色矮星は出来ない。西暦184億2,934万2,658年にはインディアン座ε星Aの寿命が尽き、西暦1兆年、太陽は黒色矮星となる。
年代は何れも概算値であり、原資料では「≈」を付して示される。無から始まった宇宙が、素粒子から原子核へ、恒星から重元素へ、そして惑星と生命へと形を変えてゆく道筋。その道筋の果てに待つ五通りの結末を、質量という一つの数字が分けている——本書は其の全体を、一冊の年表に束ねている。
登場天体
- 太陽 本書が最も長く追い掛ける天体。太陽質量0.08から4未満の区分に属する。紀元前46億300万年に原始太陽として輝き始め、紀元前45億年に中心部が1,000万℃を超えて主系列星となる。西暦53億9,700万年に水素が枯渇して大きさ100倍・表面温度3,000℃の赤色巨星となり、西暦70億年に白色矮星、西暦1兆年に黒色矮星となる。
- 地球 紀元前45億4,300万年、10個の原始惑星が衝突・合体して誕生する。衝突で生じた熱エネルギーにより地表が融解してマグマオーシャンが発生し、表面温度は約1,900℃に達した。内部から放出されたガスが、メタン・アンモニア・二酸化炭素を主とする原始大気を作った。
- 小惑星ベスタ 火星軌道と木星軌道の間に広がる小惑星帯の中の小惑星。紀元前45億2,500万年に巨大衝突を起こす。
- インディアン座ε星A 本書が太陽質量0.08未満の区分に置く3重連星。紀元前13億年に原始星が誕生するが、水素の核融合が始まらず褐色矮星となり、重力収縮のエネルギーだけで赤外線を発しながら長い時間を掛けて冷えてゆく。西暦184億2,934万2,658年に寿命が尽きる。距離11.82光年、太陽質量0.762、太陽半径0.732。
- アスケラ(射手座ζ星) 太陽質量4から8未満の区分に属する2重連星且つ2重星。紀元前6億500万年に原始星が誕生し、紀元前4億4,740万5,466年に水素が枯渇する。中心部が3億℃を超えてヘリウムが炭素となり、更に其の炭素も核融合を始めて、激しい反応に耐えきれず超新星爆発する。距離88光年、太陽質量5.26。
- アルマク(アンドロメダ座γ1星) 太陽質量8から30の区分に属する2重星。紀元前284万965年に水素が枯渇し、ヘリウムから炭素・酸素・マグネシウム・ケイ素を経て鉄までを作り上げる。鉄は熱核融合を起こせない為に中心部が冷え、外層が落下して超新星爆発。残った中心核は半径数十km・密度5億t/㎤の中性子星となり、生命を構成する重い元素が撒き散らされる。距離390光年、太陽質量23.7、太陽半径80。
- 射手座LBV 1806-20 太陽質量30を超える区分に属する恒星。紀元前246万1,992年に水素が枯渇し、圧縮される中心核は中性子による核力でも支えきれない。際限無く潰れて重力崩壊を起こし、光さえ抜け出す事の出来ない高重力のブラックホールとなる。距離28,375.60光年、太陽質量36。
- 最初期の恒星 紀元前136億7,000万年、ダークマターの塊の中で水素とヘリウムのガスが収縮し、次々に誕生した星々。太陽の数百倍の質量を持つ巨大な星で、核融合により水素からヘリウムを、軈て重元素を作り出した。紀元前136億6,500万年、次々と超新星爆発して重元素を宇宙にばら撒く。
- 銀河系 紀元前130億年に誕生する。最初期の恒星が重元素をばら撒いてから約6億6,500万年後の出来事。
太陽質量で決まる恒星の行く末
- 太陽質量0.08未満——褐色矮星 水素の核融合が始まらないまま、重力収縮のエネルギーだけで赤外線を発し、長い時間を掛けて冷えてゆく。本書が此の区分に置くのはインディアン座ε星Aで、紀元前13億年に原始星が誕生し、西暦184億2,934万2,658年に寿命が尽きる。
- 太陽質量0.08から4未満——赤色巨星から白色矮星、そして黒色矮星 水素が枯渇して中心部がヘリウムになると重力収縮が勝って潰れ、再び中心部が1,000万℃を超えて核融合の中心が周囲の水素へ移り、大きさ100倍・表面温度3,000℃の赤色巨星となる。外層を吹き飛ばした後、中心核は白色矮星となり、放出されたガスが紫外線に照らされて惑星状星雲となる。白色矮星の最大質量は太陽の1.46倍(チャンドラセカール限界)迄。やがて完全にエネルギーを失い黒色矮星となる。本書が此の区分に置くのは太陽である。
- 太陽質量4から8未満——炭素の核融合による超新星爆発 水素の枯渇後、中心部が3億℃を超えてヘリウムが炭素へ転換する。強い重力収縮により恒星は膨張できず、温度が上がっても熱を解放できない。更に中心部の炭素も核融合を始め、其の激しい反応に耐えきれず超新星爆発する。本書が此の区分に置くのはアスケラ(射手座ζ星)である。
- 太陽質量8から30——鉄の中心核と中性子星 炭素の量が多く発生するエネルギーが大きい為、重力収縮に対抗して幾分膨張し熱を解放できる。核融合は酸素からマグネシウム、ケイ素を経て鉄に至り、鉄は熱核融合を起こせない為に中心部が冷えて外層が落下し、超新星爆発する。圧縮された鉄の中心核が太陽質量の1.46倍を超えると原子核が分解され、電子が陽子に吸い込まれて中性子とニュートリノが生まれる。中性子は半径数十km・密度5億t/㎤の中性子星となり、太陽質量の2倍以内であれば安定して存在できる。本書が此の区分に置くのはアルマク(アンドロメダ座γ1星)である。
- 太陽質量30超——重力崩壊とブラックホール 圧縮される中心核を、もはや中性子による核力でも支える事が出来ない。強大な重力収縮に耐えきれず中心核は更に圧縮されて密度を増し、重力が更に強くなる——此れを際限無く繰り返した果てに重力崩壊を起こし、光さえ抜け出す事の出来ない高重力のブラックホールとなる。本書が此の区分に置くのは射手座LBV 1806-20である。
褐色矮星・白色矮星・超新星・中性子星・ブラックホール──
行く末を分けるのは、ただ太陽質量である。
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