カーディシーヤの戦い一元化
交渉決裂・決闘・戦象・夜戦・渡河・陥落──
ササン朝ペルシアのイラク支配を揺るがした決戦を一本の時系列に貫く。
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本書について
西暦636年9月、ロスタム・ファルロフザードがカーディシーヤのムスリムの野営地を破り和平交渉を再開した時から、西暦637年3月、ムスリムがティグリス川を渡りクテシフォンを陥落させ、ヤズデギルド3世がハルワンに逃亡する迄。本書は、カーディシーヤの戦いとクテシフォン陥落の全過程を一本の時系列に貫き、一元化した一冊である。
西暦636年9月、ファルロフザードとの和平交渉は決裂した。ムスリムの使者ムギラ・ビン・ズララがジズヤの支払いを迫ると、ファルロフザードは激怒し、翌朝までにムスリムを全滅させると宣言した。10月、ファルロフザードは45,000名の歩兵と15,000騎の騎兵、33頭の戦象を率いてクテシフォンから出陣し、カーディシーヤでムスリムと対峙した。
第1日、決闘から戦いが始まり、ファルロフザードは戦象を突撃させてムスリムの右翼に甚大な被害を与えた。しかしムスリムは側面攻撃で反撃し、更にアシム・イブン・アムル・アル・タミミが戦象に乗った射手を打ち破り鞍の胴回りを切る作戦で戦象を退却させた。第2日、カーカ・イブン・アムル・アル・タミミの増援が到着し、駱駝を怪物に偽装する独創的な戦術でササン朝ペルシア軍の馬を混乱させた。タミミはファルロフザードの首を狙って本軍へ進軍したが突破出来なかった。第3日、ファルロフザードは戦象を前線に出して総攻撃を命じ、ワッカスの旧宮殿を占領した。しかしムスリムは戦象の鼻を切断して追い払い、夜通し激しい戦いが繰り広げられた。第4日、タミミが左中央を指揮してササン朝ペルシア軍の中央部を突破し、ファルロフザードが討ち取られて戦線は崩壊した。
西暦636年12月、ワッカスは15,000名の兵を率いクテシフォンに進軍を開始した。西暦637年1月、前衛軍がクテシフォンに接近すると、ササン朝ペルシア軍は投石器で応戦した。3月にはササン朝ペルシア軍がライオンを突撃させたが、ハシム・イブン・ウトバがライオンを殴り殺す英雄的行為を見せた。ヤズデギルド3世はティグリス川を境界線とする和平を提案したが、ムスリムはジズヤの支払いか戦闘継続の2択を迫った。ササン朝ペルシア軍はティグリス川の橋を全て破壊し、ボートも撤去したが、ムスリムは寝返った義勇兵の案内で川を渡り、クテシフォンを陥落させた。ヤズデギルド3世は宝物を持参しハルワンに逃亡し、白宮殿は無血開城した。
登場人物
- ワッカス サディ・ブン・アビ・ワッカス。ムスリムの総司令官。カーディシーヤの戦いでは旧宮殿から指揮を執り、戦象の鼻の切断を指示した。戦後クテシフォンに進軍し陥落させ、白宮殿を本拠地としてモスクを建設した。
- ファルロフザード ロスタム・ファルロフザード。ササン朝ペルシア軍の総司令官。45,000名の歩兵と15,000騎の騎兵、33頭の戦象を率いた。第4日に討ち取られ、ササン朝ペルシア軍の戦線が崩壊した。
- カーカ・イブン・アムル・アル・タミミ ムスリムの野戦指揮官。第2日に増援として到着し、駱駝を怪物に偽装する独創的な戦術を用いた。第4日に左中央を指揮してササン朝ペルシア軍の中央部を突破した。バフマン・ジャドゥヤの殺害にも成功した。
- アシム・イブン・アムル・アル・タミミ カーカの弟。騎手達を激励し、戦象に乗った射手を打ち破り鞍の胴回りを切る作戦を実行した。クテシフォン進軍ではティグリス川渡河を指揮した。
- ヤズデギルド3世 第38代ササン朝ペルシアのシャー。ティグリス川を境界線とする和平を提案したが拒否された。クテシフォン陥落時に宝物を持参しハルワンに逃亡した。
- ウマル・イブン・ハッターブ 第2代正統カリフ。ワッカスからの戦勝報告を受け、クテシフォンの占領を指示した。
- ホルムザン ササン朝ペルシア軍の右翼指揮官。4個師団の一つを率いた。
- ジャリヌス ササン朝ペルシア軍の右中央指揮官。第4日に残存部隊の指揮を執り、橋頭堡を征圧して軍の大部分を安全に橋を渡らせた。
- ミフラン・ラジ ササン朝ペルシア軍の左翼指揮官。クテシフォン防衛戦でも指揮を執った。
- ピルツ・ホスロー ササン朝ペルシア軍の後衛指揮官。
- バフマン・ジャドゥヤ ササン朝ペルシア軍の将軍。第2日にタミミに殺害された。
- ハシム・イブン・ウトバ ワッカスの父方の甥。第2日に本軍を率いて到着した。クテシフォン包囲戦ではライオンに向かって走り殴り殺す英雄的行為を見せたが、その夜に矢を受け死亡した。
- ムギラ・ビン・ズララ ワッカスの使者。ファルロフザードとの和平交渉でジズヤの支払いを迫り、交渉決裂の引き金となった。
- ラビ・ビン・アミール ワッカスが最初にファルロフザードとの交渉に派遣した使者。
- ズフラ・イブン・アル・ハウィヤ・アル・タミミ ムスリムの右中央総司令官。クテシフォン進軍では前衛部隊の指揮を引き継ぎ、ナジャフを占領した。
- アル・アシャス・イブン・カイス ムスリムの右中央騎兵隊司令官。第1日にワッカスの命でササン朝ペルシア軍左翼の側面に反撃を開始した。
- ファッルフザード ロスタム・ファルロフザードの兄。ファルロフザードから書簡を受け、アゼルバイジャンに行って祈る様伝えられた。クテシフォン防衛戦でも指揮を執った。
主要な地名・拠点
- カーディシーヤ ムスリムの野営地があり、ファルロフザード率いるササン朝ペルシア軍と4日間の決戦が行われた地。アティーク川西岸に4kmの戦線が展開された。
- クテシフォン 現在のイラクのバービル県。ササン朝ペルシアの首都。ヤズデギルド3世の本拠地であった白宮殿が所在する。西暦637年3月にムスリムが陥落させた。
- ヴァラシャバード 現在のイラクのバービル県。ファルロフザードが駐屯していた地。クテシフォン進軍時にムスリムの前衛軍が通過した。
- バフラシール 現在のイラクのバービル県ヴェー・アルダシル。ティグリス川の対岸に位置し、ササン朝ペルシア軍が投石器でムスリムを攻撃した。ムスリムが占領した時には既に人影は無かった。
- ティグリス川 川幅750mの大河。ササン朝ペルシア軍が橋を全て破壊しボートも撤去したが、ムスリムは寝返った義勇兵の案内で渡河に成功した。
- アル・ヒラ 現在のイラクのナジャフ県付近。カーディシーヤ勝利後にワッカスが入り、アラブ人入植者を入れて町「クーファ」を建設した。
- ハルワン 現在のイラクのディヤーラー県。ヤズデギルド3世がクテシフォン陥落時に宝物を持参して逃亡した先。
- 白宮殿 クテシフォン内のササン朝ペルシア政府の本拠地。無血開城し、ワッカスが本拠地として大中庭にモスクを建設した。
交渉決裂・決闘・戦象・夜戦・渡河・陥落──
カーディシーヤの戦いの全記録を一冊に。
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