イエフ一元化
油を注がれた男は、狂った様に戦車を御して来た──
第10代イスラエル王国国王イエフの治世を一元化。
194円(税込)
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本書について
紀元前857年、40日間何も食べずに約300km歩いたエリヤは、ホレブ山(現在のエジプトの南シナイ県)の洞穴で霊者に会い、ダマスコの荒野へ帰ってハザエルに油を注いでアラム王とし、ニムシの子イエフに油を注いでイスラエル王国国王とし、アベル・メホラ出のシャファテの子エリシャに油を注いで預言者とせよと預言された。ハザエルの剣を逃れる者はイエフが、イエフの剣を逃れる者はエリシャが殺すとも告げられる。紀元前853年、ラモト・ギルアデ奪還の戦いでアハブが草摺の隙間を矢に射抜かれて崩御すると、預言者イエフはエルサレムに帰還したヨシャファトを、ヤハウェの憎むアハブと友になった事で責めた。本書は、此の預言から、紀元前818年のイエフの崩御に至る迄を一元化した記録である。
紀元前842年、エリシャは預言者仲間の若者に油の壺を持たせ、ラモト・ギルアデでニムシの子イエフを探し、奥の間で頭に油を注いだら直ぐに逃げる様指示した。軍の高官達が会議中の場から呼び出された若者は、イエフの頭に油を注ぎ、主君アハブの家を打ち殺し、イゼベルによって流された預言者達の血の復讐を果たす王とする預言を伝えて逃げ去る。気の触れた者は何をしに来たのかと尋ねた家来達に、イエフが其の言葉を明かすと、彼等は皆大急ぎで上着を脱いで入口の階段のイエフの足元に敷き、角笛を吹き鳴らして王であると唱えた。
イエフの軍勢は、ラモト・ギルアデで負傷したヨラムが傷を癒すイズレエル(現在のイスラエル北部地区)へと向かう。塔の見張りが之を発見し、迎えに出された騎兵2名は次々にイエフの側に付いた。狂った様な車の御し方が報告されると、ヨラムと、見舞いに来ていたアハズヤは各々戦車で迎えに出る。イズレエル人ナボテの所有地で遭遇し、元気かと尋ねたヨラムに、イエフは母イゼベルの姦淫と呪術が盛んに行われているのにと返した。手綱を返して逃げるヨラムは、力一杯引き絞られた弓に心臓を射抜かれ、戦車の中に崩れ落ちる。イエフは侍従ビデカルへ、ナボテの所有地であった葡萄畑に遺体を投げ捨てる様命じ、ナボテの血への報復というヤハウェの宣告を思い起こさせた。ベテ・ハ・ガン(現在のイスラエル北部地区)の道へ逃げたアハズヤも、イブレアム(現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区ジェニーン県)近くのグルへの上り道で傷を負い、メギドで崩御する。斯うしてイエフは第10代イスラエル王国国王に即位した。
イゼベルは、目に化粧をして髪を結い、屋上の窓からイエフを見下ろした。フェニキア仕込みの化粧で魅惑し、圧倒しようとしたのである。だが通用せず、イエフが窓を見上げて味方になる者を問うと、2、3名の宦官が顔を出した。突き落とせという命令の通り、イゼベルの血は壁や馬に飛び散り、馬は其の上を踏み付けて行く。イエフは目も呉れずに自宅で食事を済ませてから葬りを指示したが、其の間に野良犬が死体を食べ、頭蓋骨・両足・両手首しか残っていなかった。イゼベルがティルス(現在のレバノン南レバノン県スール)の王女であった事から、ティルスとイスラエル王国の関係は断絶する。
紀元前841年、イエフはアハブの子供70名、アハブの遺した有力者・親友・祭司、アハブ家と親戚関係にあったアハズヤの関係者42名を一人残らず殺害させた。更に、アハブは少ししかバアルに仕えなかったが自分は大いに仕える積もりだと宣言し、バアルの預言者・仕える者・祭司を1人も欠かさず集める様イスラエル王国中へ使者を遣わせる。神殿が一杯になると、イエフはレカブ人ヨナダブと共に入り、ヤハウェに仕える者が交じっていないかよく調べさせた上で、外に配置した近衛兵と侍従達80名に討たせた。石柱は焼き捨てられ、バアル神殿は破壊されて便所が建てられる。然しイエフ自身は金の子牛を崇拝した。同じ年、イエフは第4代新アッシリア帝国国王シャルマネセル3世に貢ぎ物を捧げている。紀元前818年にイエフが崩御すると、ヨアハズがサマリアにて第11代イスラエル王国国王に即位した——其の全過程を、本書は一冊に束ねている。
登場人物
- イエフ 本書の中心人物。ニムシの子。紀元前857年のホレブ山の預言で油注ぎの対象として名を挙げられ、紀元前842年、エリシャが遣わせた若者にラモト・ギルアデで油を注がれた。イズレエルでヨラムの心臓を弓で射抜き、アハズヤも討たせて第10代イスラエル王国国王に即位する。イゼベルを窓から突き落とさせ、アハブの家とバアルに仕える者を皆殺しにしたが、自身は金の子牛を崇拝した。紀元前818年に崩御した。
- エリヤ 預言者。ホレブ山の洞穴で霊者から、ハザエル・イエフ・エリシャへの油注ぎを預言された。ハザエルの剣を逃れる者はイエフが、イエフの剣を逃れる者はエリシャが殺すとも告げられている。
- エリシャ アベル・メホラ出のシャファテの子で、エリヤの後を継ぐ預言者。紀元前842年、預言者仲間の若者に油の壺を持たせてラモト・ギルアデへ遣わせ、イエフの頭に油を注がせた。
- ヨラム アハブの弐男で第9代イスラエル王国国王。ラモト・ギルアデで負った傷を癒す為にイズレエルへ帰っていた所へイエフが迫り、ナボテの所有地で心臓を射抜かれ、其の葡萄畑へ投げ捨てられた。
- アハズヤ ユダ王国の王。ヨラムの見舞いでイズレエルに居合わせ、共にイエフを迎えに出た。ベテ・ハ・ガンの道へ逃げたが、イブレアム近くのグルへの上り道で傷を負い、メギドで崩御してエルサレムの自らの墓に葬られた。
- イゼベル アハブの王妃でヨラムの母。ティルスの王女であった。目に化粧をして髪を結い、屋上の窓からイエフを圧倒しようとしたが、宦官達に突き落とされた。野良犬に食われ、頭蓋骨・両足・両手首しか残らなかった。
- アハブ イエフが滅ぼす事を預言された家の主で、第7代イスラエル王国国王。紀元前853年、ラモト・ギルアデ奪還の戦いで矢に射抜かれて崩御した。其の子供70名は、後にイエフによって殺害された。
- ビデカル イエフの侍従。射抜かれたヨラムの遺体を、イズレエル人ナボテの所有地であった葡萄畑へ投げ捨てる様命じられた。
- ヨナダブ レカブ人。バアル神殿での粛清の際、全焼の生贄を捧げる為にイエフと共に神殿へ入った。
- ヨシャファト ユダ王国の王。紀元前853年のラモト・ギルアデの戦いでイスラエル王国国王に変装させられ、真っ先に狙われたが一命を取り留めた。帰還後は預言者イエフに責められ、ベエルシェバからエフライム族の領地の山地まで巡って、ヤハウェに立ち返る様国民に説いた。
- 預言者イエフ ラモト・ギルアデの戦いの後、エルサレムに帰還したヨシャファトに対し、悪人を助けてヤハウェの憎むアハブと友になった事を責めた預言者。エルサレムから偶像を取り除いた善行もヤハウェは知っていると付け加えている。
- ハザエル ホレブ山の預言で、エリヤが油を注いでアラム王とする様告げられた人物。其の剣を逃れる者はイエフが殺すとされた。
- シャルマネセル3世 第4代新アッシリア帝国国王。紀元前841年、イエフから貢ぎ物を受け取った。同年、ティルスとサイダからも貢ぎ物を受けている。
- ヨアハズ イエフの崩御を承けて、紀元前818年にサマリアで第11代イスラエル王国国王に即位した。
主要な地名・拠点
- ホレブ山 現在のエジプトの南シナイ県。40日間歩いたエリヤが洞穴で霊者に会い、ハザエル・イエフ・エリシャへの油注ぎを預言された山。
- ラモト・ギルアデ アラム人との戦いの地であり、紀元前853年にアハブが矢に射抜かれた戦場。紀元前842年には、軍の高官達の会議の場でイエフが油を注がれた。
- イズレエル 現在のイスラエル北部地区。ヨラムが傷を癒していた地で、塔の見張りがイエフの軍勢を発見した。イズレエル人ナボテの所有地でヨラムが射抜かれ、イゼベルも此処で最期を迎えた。
- ベテ・ハ・ガン 現在のイスラエル北部地区。ヨラムが射抜かれた後、アハズヤが逃走した道の在る地。
- イブレアム 現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区ジェニーン県。近くのグルへの上り道で、戦車の上のアハズヤがイエフ率いる軍に傷を負わされた。
- メギド 傷を負ったアハズヤが何とか逃げ延び、崩御した地。遺体は家来達によってエルサレムへ運ばれた。
- ティルス 現在のレバノン南レバノン県スール。イゼベルの出身地で、其の死によってイスラエル王国との関係は断絶した。紀元前841年にはシャルマネセル3世へ貢ぎ物を捧げている。
- サイダ 現在のレバノンの南レバノン県。紀元前841年、ティルスと共にシャルマネセル3世へ貢ぎ物を捧げた都市。
- サマリア イスラエル王国の都。紀元前818年、イエフの崩御を承けてヨアハズが此処で第11代国王に即位した。
アハブの家もバアルの神殿も、此の手で絶やした──
イエフの粛清と其の後を一元化。
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