第9代イスラエル王国国王
ヨラム一元化
バアルの石の柱を撤去しながら、金の子牛は捨てなかった王──
即位からナボテの所有地での最期まで、ヨラムの10年を一元化。
JPY 200(税込)
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本書について
紀元前852年、屋上の部屋の欄干から転落したアハズヤが、2年前にエリヤが告げた預言の通りに崩御した。子が居なかった為、アハブの弐男ヨラムが第9代イスラエル王国国王に即位する。ヨラムはヤハウェの目に悪を行ったが、アハブやイゼベル程では無かったと記録されている。実際、彼は父アハブが作ったバアルの石の柱を撤去した。しかし其の一方で、ヤロブアム1世がイスラエル王国に犯させた罪には執着し、其処から離れる事は無かった。半歩だけ引き返し、其れ以上は戻らなかった王──本書は、此の即位の年から、紀元前842年頃の最期に至るまでの治世を、年単位で一元化した記録である。
紀元前851年頃、100,000匹の子羊と雄羊100,000匹分の羊毛を貢物として納めていたモアブの王メシャが離反し、反旗を翻した。ヨラムはヨシャファトをモアブ征伐の遠征に誘い、「エドムの荒れ野の道を」と進路を答える。ヨシャファトは自身が従えていたエドムの王と合流し、三者は南方から出陣した。ところが迂回に7日を費やし、部隊と家畜の為の水が底を突いてしまう。泣き言を口にするヨラムに対し、ヨシャファトはヤハウェの預言者に頼る事を勧め、イスラエル王国の家臣が「シャファテの子エリシャがいます。エリヤの手に水を注いだ者です」と答えた。
訪ねて来た三人の王に、エリシャは冷ややかであった。「私とヨラムの間に何の関わりが有るでしょうか。アハブやイゼベルの預言者の所に行かれたら良いでしょう」──ヨラムが「我々3名の王を呼び集めたのはヤハウェだ」と返すと、エリシャは「私はヨシャファトに敬意を抱いていなければ、貴方には目もくれず、増して貴方に会う事もしなかった」と言い放つ。そして竪琴を弾く者を呼ばせ、其の音の中で「風を見ず、大雨を見なくても、此の涸れた谷に水が溢れる。貴方達は家畜や荷役の動物と共に其れを飲む」と預言し、砦の町を打ち破り、木を倒し、泉を塞ぎ、耕地を石だらけの荒れ地とする勝利までを告げた。翌朝、捧げ物を献上する頃、水はエドムの方から流れて来て谷を満たした。
水は、味方を潤しただけでは終わらなかった。国境に守備隊を配置したモアブの人々は、翌朝、太陽に照らされた水面に血の様な赤い色を見る。「此れは血だ。3名の王は互いに同士討ちをしたに違い無い」──分捕りに行こうと攻め込んだ彼等は返り討ちに遭い、敗走した。逆に連合軍はモアブの町々を破壊し、良い畑に石を投げ捨て、水源を塞ぎ、良い木を切り倒してゆく。最後に残った首都キル・ハレセテも、石を投げ捨てた者達に包囲されて打ち破られた。
追い詰められたメシャは、剣使い700名を引き連れてエドムの王を討とうとしたが果たせず、跡取りである自身の長男を城壁の上で全焼の人身御供として、偶像神ケモシュに献上した。此れを見たモアブの人々は怒り、そしてイスラエル王国・ユダ王国・エドムの連合軍は狼狽して、自国へ引き上げた。エリシャが預言した通りの勝利を積み上げながら、最後の一手で撤退する──モアブ征伐は、ヨラムにとって完遂されざる遠征として終わった。
紀元前842年頃、ヨラムはハザエル征伐の為にラモト・ギルアデで戦い、援軍として駆け付けたアハズヤ(ユダ王国国王)と共に戦線に立ったが、負傷してイズレエルへ帰った。見舞いに訪れたアハズヤと共に居た其の時、塔の見張りが軍勢の接近を告げる。「車の御し方は、イエフの御し方に似ています。狂った様に御しています」──迎えに出た二人の王は、イズレエル人ナボテの所有地でイエフと遭遇した。「イエフ、元気か」という問いに返ったのは「何が元気か。貴方の母イゼベルの姦淫と呪術が盛んに行われているのに」という言葉であった。手綱を返して逃げるヨラムの心臓を、イエフの矢が射抜く。遺体は、侍従ビデカルの手でナボテの所有地であった葡萄畑へ投げ捨てられた。ナボテの血に対する報復が、其の同じ地所で果たされたのである。
登場人物
- ヨラム(イスラエル王国国王) 本書の中心人物。第9代イスラエル王国国王。アハブの弐男。子の無いアハズヤの崩御を受けて紀元前852年に即位した。父が作ったバアルの石の柱を撤去したものの、ヤロブアム1世がイスラエル王国に犯させた罪からは離れなかった。モアブ征伐を主導し、紀元前842年頃、イズレエル人ナボテの所有地でイエフに心臓を射抜かれた。
- アハズヤ(イスラエル王国国王) 第8代イスラエル王国国王。ヨラムの兄。紀元前852年、2年前にエリヤが告げた預言の通りに崩御した。子が居なかった為、王位はアハブの弐男ヨラムへと移り、本書の記録が始まる。
- アハブ ヨラムの父。第7代イスラエル王国国王。サマリアにバアル礼拝を持ち込んだ王であり、其の作った石の柱は、息子ヨラムの代に撤去される事になった。イエフがヨラムを討った際、かつて共にアハブの後に従って馬を進めた日の宣告が想起されている。
- イゼベル ヨラムの母。アハブの妻。ヨラムがイエフに「元気か」と問うた際、イエフは「貴方の母イゼベルの姦淫と呪術が盛んに行われているのに」と答え、討伐の理由に其の名を挙げた。エリシャの部下がイエフに伝えた預言でも、其の血の報復が語られている。
- ヨシャファト ユダ王国国王。ヨラムの誘いに応じてモアブ征伐の遠征に加わり、自身が従えていたエドムの王と合流して南方から出陣した。水が底を突いた際にヤハウェの預言者へ頼る事を勧め、エリシャを訪ねる契機を作った。エリシャは「ヨシャファトに敬意を抱いていなければ」ヨラムには目もくれなかったと語っている。
- エドムの王 ヨシャファトが従えていた王。モアブ征伐でイスラエル王国・ユダ王国と共に三者連合を組んだ。追い詰められたメシャが剣使い700名を引き連れて討とうとした標的であったが、其の企ては果たされなかった。
- メシャ モアブの王。100,000匹の子羊と雄羊100,000匹分の羊毛を貢物として納めていたが、紀元前851年頃に離反して反旗を翻した。首都キル・ハレセテまで追い詰められると、跡取りである自身の長男を城壁の上で全焼の人身御供として偶像神ケモシュに献上した。
- エリシャ 預言者。シャファテの子。「エリヤの手に水を注いだ者」として陣中に招かれ、竪琴の音の中で涸れた谷に水が溢れる事とモアブへの勝利を預言した。紀元前842年頃には部下に命じてイエフに油を注がせ、アハブの家を撃つ使命を伝えさせた。
- イエフ 第10代イスラエル王国国王。エリシャの部下に油を注がれ、アハブの家を撃つ使命を受けた。イズレエルへ狂った様に戦車を駆り、遣わされた騎兵2名を味方に付け、ナボテの所有地でヨラムの心臓を射抜いた。アハズヤ(ユダ王国国王)をも追撃し、王位に即いた。
- アハズヤ(ユダ王国国王) ユダ王国国王。ラモト・ギルアデでのハザエル征伐にヨラムの援軍として出陣し、後に負傷したヨラムを見舞う為イズレエルへ向かった所でイエフの叛乱に遭遇した。ベテ・ハ・ガンの道へ逃走したが、イブレアム近くのグルへの上り道で傷を負い、メギドで崩御した。
- ビデカル イエフの侍従。射抜かれたヨラムの遺体を、ナボテの所有地であった葡萄畑に投げ捨てる様命じられた。イエフは其の際、かつて二人が馬に乗ってアハブの後に従って行った日に、ナボテの血に対する報復が宣告された事を想起させている。
- ハザエル アラム王。紀元前842年頃、ヨラムはハザエル征伐の為にラモト・ギルアデで戦闘を行い、其の戦いで負傷してイズレエルへ帰る事となった。ヨラムが戦線を離れた事が、イエフの挙兵を許す間隙となった。
本書が記録する出来事
- アハズヤの崩御とヨラムの即位 紀元前852年、本書の起点。屋上の部屋の欄干から転落したアハズヤが、2年前のエリヤの預言通りに崩御した。子が居なかった為、アハブの弐男ヨラムが第9代イスラエル王国国王に即位した。
- バアルの石の柱の撤去 紀元前852年、ヨラムは父アハブが作ったバアルの石の柱を撤去した。ヤハウェの目に悪を行ったものの、アハブやイゼベル程では無かったと記録されている。しかしヤロブアム1世がイスラエル王国に犯させた罪には執着し、其処から離れる事は無かった。
- モアブの離反と三王の出陣 紀元前851年頃、100,000匹の子羊と雄羊100,000匹分の羊毛を納めていたモアブの王メシャが離反した。ヨラムはヨシャファトを誘い「エドムの荒れ野の道を」と進路を示す。ヨシャファトは自身が従えていたエドムの王と合流し、三者は南方から出陣した。
- 7日の迂回と水の枯渇 紀元前851年頃、迂回に7日を費やした連合軍は、部隊と家畜の為の水を失った。泣き言を口にするヨラムに、ヨシャファトがヤハウェの預言者に頼る事を勧め、イスラエル王国の家臣が「エリヤの手に水を注いだ者」としてシャファテの子エリシャの名を挙げた。
- 竪琴の音と涸れた谷の預言 紀元前851年頃、エリシャはヨラムに「アハブやイゼベルの預言者の所に行かれたら良いでしょう」と冷たく応じたが、ヨシャファトへの敬意ゆえに竪琴を弾かせ「風を見ず、大雨を見なくても、此の涸れた谷に水が溢れる」と預言し、モアブへの勝利までを告げた。
- エドムから流れ来た水 紀元前851年頃、預言の翌朝、捧げ物を献上する頃に水がエドムの方から流れて来て谷を満たした。三王が進軍すると、モアブでは剣を帯び鎧を身に付ける年齢に達した者全てが招集され、守備の為に国境へ配置された。
- 血の様な赤い水とモアブの誤断 紀元前851年頃、翌朝、太陽が水面を照らすと、モアブの人々は目の前に血の様な赤い水を見た。「3名の王は互いに同士討ちをしたに違い無い」と分捕りに攻め込んだが、返り討ちに遭って敗走した。
- キル・ハレセテの包囲とメシャの人身御供 紀元前851年頃、連合軍はモアブの町々を破壊し、良い畑に石を投げ捨て、水源を塞ぎ、良い木を切り倒した。最後に残った首都キル・ハレセテも打ち破られると、メシャは剣使い700名でエドムの王を討とうとして果たせず、長男を城壁の上で偶像神ケモシュに献上した。連合軍は狼狽し、自国へ引き上げた。
- ラモト・ギルアデでの負傷 紀元前842年頃、ハザエル征伐の為にラモト・ギルアデで戦っていたヨラムの下へ、アハズヤ(ユダ王国国王)が援軍として出陣した。此の戦闘でヨラムは負傷し、傷を癒す為イズレエルへ帰った。
- イズレエルの塔の見張りと2名の騎兵 紀元前842年頃、見舞いに訪れたアハズヤが居る中、塔の見張りがイエフの軍勢を発見した。安否を尋ねに遣わされた騎兵2名は、いずれも「私の後ろに付いて来い」と味方に付けられ、見張りは「車の御し方は、イエフの御し方に似ています。狂った様に御しています」と報告した。
- ナボテの所有地でのヨラム射殺 紀元前842年頃、本書が記録する最も重い場面。迎えに出た二人の王はイズレエル人ナボテの所有地でイエフと遭遇し、「イエフ、元気か」の問いに「貴方の母イゼベルの姦淫と呪術が盛んに行われているのに」と返された。逃げるヨラムの心臓は矢に射抜かれ、遺体は侍従ビデカルによってナボテの葡萄畑へ投げ捨てられた。
- アハズヤの逃走とメギドでの崩御 紀元前842年頃、アハズヤ(ユダ王国国王)はベテ・ハ・ガンの道へ逃走したが、イエフの追撃を受け、イブレアム近くのグルへの上り道で戦車の上に傷を負った。何とかメギドまで逃げたものの其処で崩御し、家来達にエルサレムへ運ばれて、ダビデ等の先祖と共に葬られた。
- イエフへの油注ぎと第10代の即位 紀元前842年頃、エリシャは部下に命じてイエフに油を注がせた。其の部下は、アハブの家を撃ち、イゼベルの手に掛かった預言者達の血の復讐を果たすという預言を伝えた。斯うしてイエフは第10代イスラエル王国国王に即位し、ヨラムの治世は幕を閉じた。
涸れた谷に溢れた水、血と見紛う朝の光、そしてナボテの葡萄畑──
アハブの弐男ヨラムが辿った10年の全記録。
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