サウル一元化
驢馬を探しに出た若者が、初代国王に選ばれる──
サウルの即位からギルボア山の最期までを一元化。
207円(税込)
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本書について
紀元前1,021年、ベニヤミン族キシュの息子サウルは、父の逸れた驢馬を探して召し使いと共にギブア(現在のイスラエルのエルサレム付近)を発った。ズフ(現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区エルサレム県)まで来ても驢馬は見付からず、サウルは捜索を止めようと言い出す。其の時、或る従僕が、近くのラマ(現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区エルサレム県)に有名な占い師が居るので相談しようと勧めた。其の占い師こそサムエルであり、サムエルはサウルに油を注ぐ。失せ物探しの道中の出会いが、王国の始まりとなった。本書は、此の油注ぎから、紀元前1,010年にギルボア山で迎える最期迄の11年を一元化した、初代ヘブライ王国国王サウルの記録である。
サムエルは、ベニヤミン族の町ミツパ(現在のイスラエルのエルサレム地区付近)に王政を求めるイスラエル人を集め、ウリム・トンミムと呼ばれる2つの宝石を用いて、部族の中からベニヤミン族を、氏族の中からマトリを、更に其の中からサウルを選び出した。斯うしてヘブライ王国が建国され、サウルが初代国王に即位し、首都はギブアに置かれる。だが、選出に公然と不満を漏らす者も居た。其の後、アモン人の王ナハシュがヤベシュ・ギレアド(現在のヨルダンのイルビド県付近)を包囲し、7日間の猶予を与えて「剣で死ぬ」か「右目を刳り貫かれる」かの2択を迫る。助けを求められたヨルダン川西側の部族がサウルの下に兵を招集すると、サウルは軍を率いてアモン人を打ち払い、ギルガル(現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区エリコ県)に集まった民衆の支持を得た。勝利の後、サウルは即位時に不満を漏らした者への報復を禁じている。
翌紀元前1,020年、サウルは長男ヨナタンを含む数千名のイスラエル兵を率い、ミクマシュ(現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区エルサレム県)にて、戦車3,000台・騎兵6,000名・歩兵30,000名以上から成るペリシテ人を破った。然し、敗走する残兵を追撃する為に出した断食の指示は逆効果となり、食事を摂らずに衰弱した兵は満足に追う事が出来ない。指示が届いていなかったヨナタンの一団は蜂蜜を摂り、ヨナタンは、ペリシテ人に勝利した事を理由に民衆の介入で命を助けられたものの、指示を守らなかった責任を負う事となった。
紀元前1,014年、サムエルはサウルに、アマレク人を滅ぼし、家畜も全て殺す様命じた。サウルは、アマレク人と共に暮らすケニ人に去る様警告した上でアマレク人を破ったが、王アガグと質の良い家畜は生かし、家畜を生贄に捧げる事で其れを正当化しようとした。サムエルは、神がサウルを王として拒んだ事を告げる。立ち去ろうとした衣の一部をサウルに掴まれて引き裂かれると、サムエルは、ヘブライ王国も同様に引き裂かれるだろうと予言した。サウルは最終的にアガグを殺害したが、此れ以降2人が会う事は二度と無かった。同じ年、サムエルはサウルの後継者を探してベツレヘム(現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区)に赴き、エッサイの息子達の中から羊飼いのダビデを呼び出して、兄弟達の前で油を注ぐ。其のダビデは、サウルの要請を受けたエッサイに遣わされて武具持ちとなり、サウルの精神を落ち着かせる為にハープを奏でる様になった。
エラの谷(現在のイスラエルのエルサレム地区)では、ペリシテ人の長ゴリアテが40日間、朝と夕方の1日2回、ヘブライ王国軍に一騎打ちを申し入れ続けていた。一騎打ちに応じたダビデは、サウルが渋々差し出した鎧を拒み、棍棒と投石器と小川で拾った5個の石だけを手にする。放たれた石はゴリアテの額の中央に命中し、俯せに倒れたゴリアテは斬首され、ヘブライ王国軍は逃げるペリシテ人をエクロン(現在のイスラエル中央地区)の門まで追撃した。帰還したダビデを、女性達は歌で称賛して迎える——そして其の人気が、王位を脅かされる事を恐れるサウルの猜疑を呼び起こした。ハープを奏でるダビデに投げ付けた2度の槍、夜に送り込んだ刺客。弐女ミカルはベッドにダビデのテラフィムを置いて刺客を騙し、窓からダビデを吊り下ろして逃がした。ダビデを庇うヨナタンにさえ、サウルは「捻くれた反抗的な女の息子よ」と罵り、槍を投げ付けている。
逃亡したダビデは、ノブ(現在のイスラエルのエルサレム地区)で第12代大祭司アヒメレクから供えのパン5斤とゴリアテの剣を受け取った。其の一部始終を、エドム人でサウルの牧夫長ドエグが目撃していた。告げ口を受けたサウルは、サウルとダビデの論争には関与していないと答えるアヒメレクに耳を貸さず、アヒメレクを含む86名の祭司を家族共々処刑する様命じる。役人達が手を上げる事を拒んだ為、処刑はドエグに委ねられた。ノブの祭司の家族は男性も女性も子供も剣で処刑され、アビアタルだけが逃れてダビデの下へ向かう。追撃の手はケイラ、ジフの荒野、マオンへと伸びたが、エン・ゲディ(現在のイスラエル南部地区)の洞窟で、ダビデは用を足しに入って来たサウルを討たず、神が油を注いだ者を殺す事は出来ないとして、ローブの裾だけを切り取った。ローブの切れ端からダビデに敵意が無い事を悟ったサウルは、ダビデを後継者として認める。其の後、2人が会う事は二度と無かった。
紀元前1,010年、サウル率いるヘブライ王国軍はギルボア山(現在のイスラエルの北部地区)でペリシテ人に敗れ、ヨナタン・マルキシュア・アビナダブの3人の息子が戦死した。射手に深手を負ったサウルは、無割礼の者共に嬲り者にされる事を拒んで従兵に自らを刺し殺す様求めたが、従兵は恐れて実行出来ず、サウルは剣を取って自害する。従兵も其れを見て、サウルと共に命を絶った。翌日、ペリシテ人はサウルの首を落として武具をアスタルト神殿に納め、遺体をベト・シェアン(現在のイスラエルの北部地区)の城壁に晒す。其れを聞いたヤベシュの住民は夜通し歩いて遺体を持ち帰り、火葬した骨を御柳の下に葬って7日間断食した。骨は後にダビデの許可を得て取り出され、ゼラのキシュの墓に移されている。軍の長アブネルは東ヨルダンに逃れ、ユダ族以外の11部族に推されたサウルの四男イシュ・ボシェテをマハナイム(現在のイスラエルの北部地区)にて第2代国王に擁立する。一方、ユダ族に認められたダビデはヘブロン(現在のヨルダン川西岸地区)を統治し、斯うしてヘブライ王国軍とダビデ軍の争いが始まった。油を注がれた最初の王の栄光と転落の全過程を、本書は一冊に束ねている。
登場人物
- サウル 本書の中心人物。ベニヤミン族キシュの息子。逸れた驢馬を探す旅の途中でサムエルに油を注がれ、ミツパにてウリム・トンミムにより選び出されて初代ヘブライ王国国王に即位した。アモン人の王ナハシュを打ち払って民衆の支持を得、ミクマシュでペリシテ人を破ったが、アマレク人討伐でサムエルの指示に背き、神に王として拒まれる。王位を脅かすダビデの人気を恐れて其の命を狙い、紀元前1,010年、ギルボア山での敗戦の中で自害した。
- サムエル ラマに居た有名な占い師で、預言者。驢馬探しの途中で相談に訪れたサウルに油を注ぎ、ミツパでウリム・トンミムを用いてサウルを王に選び出した。アマレク人討伐でのサウルの不服従を知ると、神がサウルを王として拒んだ事を告げ、掴まれて引き裂かれた衣になぞらえてヘブライ王国の分裂を予言する。サウルの後継者を探してベツレヘムへ赴き、ダビデに油を注いだ。
- ダビデ ベツレヘムのエッサイの息子で羊飼い。兄弟達の前でサムエルに油を注がれ、サウルの武具持ちとして宮廷に入り、ハープでサウルの精神を落ち着かせた。エラの谷でゴリアテを投石器の一撃で倒して名を上げるが、其の人気がサウルの猜疑を招き、命を狙われて逃亡する。エン・ゲディの洞窟ではサウルを討たずにローブの裾だけを切り取り、後継者として認められた。サウルの死後はユダ族に認められ、ヘブロンを統治した。
- ヨナタン サウルの長男。ミクマシュの戦いに加わったが、断食の指示が届かぬ儘蜂蜜を摂り、民衆の介入で命を助けられた上で其の責任を負った。ダビデと親しくなって軍服を与え、サウルとダビデの和解を取り持ち、逃亡も助けた為、父に罵られ槍を投げ付けられた。紀元前1,010年、ギルボア山にて戦死した。
- ミカル サウルの弐女。ペリシテ人の陰茎包皮100枚を持って来る様指示されたダビデが200枚を持参し、其の妻となった。刺客が送り込まれた夜、ベッドにダビデのテラフィムを置いて刺客を騙し、窓からダビデを吊り下ろして逃がす。問い詰めたサウルには、脅されて仕方無く助けたと答えた。後にサウルによってパルティエルの下へ嫁がされた。
- ゴリアテ ペリシテ人の長。エラの谷にて40日間、朝夕2回に亘りヘブライ王国軍に一騎打ちを申し入れ続けた。鎧と投槍を装備し「ペリシテ人は神々によってダビデを呪った」と言い放ったが、投石器から放たれた石が額の中央に命中して俯せに倒れ、斬首された。
- アヒメレク 第12代大祭司。ノブにて、王室の秘密の使命を帯びていると主張するダビデに、供えのパン5斤とノブの神殿に保管されていたゴリアテの剣を与えた。サウルに「ダビデを守って私に対して陰謀を企てたのか」と詰問され、論争には関与していないと答えたが聞き入れられず、自身を含む86名の祭司が家族共々処刑された。
- ドエグ エドム人でサウルの牧夫長。ノブでのアヒメレクとダビデのやり取りを目撃し、サウルに告げ口した。役人達が祭司に手を上げる事を拒んだ為、処刑を委ねられ、自ら実行した。
- アビアタル ノブの襲撃で唯1人逃亡に成功した人物。ケイラのダビデの下へ向かい、アドラムの洞窟で合流した。ダビデは彼に、ドエグが其処に居た時から告げ口を予期していた事を明かし、其の父の家の者全員を死なせた事への後悔を口にした。
- ナハシュ アモン人の王。兵を率いてヤベシュ・ギレアドを包囲し、7日間の猶予を与えて他のイスラエル人に助けを求める事も認めた上で、「剣で死ぬ」か「右目を刳り貫かれる」かの2択を迫った。助けを求められた部族がサウルの下に招集した軍に打ち払われた。
- エッサイ ベツレヘムに住むダビデの父。後継者を探しに来たサムエルに息子達と共に食事へ招かれ、ダビデが油を注がれる場に立ち会った。サウルの要請を受け、ダビデに貢物を持たせて宮廷へ遣わせた。
- アガグ アマレク人の王。サウルの襲撃でアマレク人が皆殺しにされる中、質の良い家畜と共に生かされた。サムエルの指示に背いた此の処置が神の拒絶を告げられる原因となり、アガグは最終的にサウルに殺害された。
- アブネル ヘブライ王国軍の長。ゴリアテを討ったダビデを、サウルに遣わされて連れて来た。ギルボア山の敗戦後は東ヨルダンに逃亡し、サウルの四男イシュ・ボシェテをマハナイムにて第2代ヘブライ王国国王に擁立した。
- イシュ・ボシェテ サウルの四男。サウルの死後、同族のダビデを推すユダ族に対し、其れ以外の11部族に推され、アブネルによりマハナイムにて第2代ヘブライ王国国王に擁立された。此れを機に、ヘブライ王国軍とダビデ軍の争いが始まった。
- マルキシュア サウルの息子。紀元前1,010年、ギルボア山の戦いにてヨナタン・アビナダブと共に戦死した。
- アビナダブ サウルの息子。紀元前1,010年、ギルボア山の戦いにてヨナタン・マルキシュアと共に戦死した。
- メラブ サウルの長女。ゴリアテを討ったダビデに、サウルが妻として差し出そうとしたが、ダビデは辞退した。
- パルティエル ダビデの逃亡後、サウルによってミカルを嫁がされた人物。
主要な地名・拠点
- ギブア 現在のイスラエルのエルサレム付近。サウルの自宅が在ったベニヤミン族の町で、驢馬探しの旅の出発点。サウルの即位後、ヘブライ王国最初の首都が置かれた。
- ラマ 現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区エルサレム県。捜索を止めようとしたサウルに、従僕が、有名な占い師が居るとして相談を勧めた町。其の占い師こそサムエルであった。
- ミツパ 現在のイスラエルのエルサレム地区付近。ベニヤミン族の町。サムエルがウリム・トンミムを用いて部族・氏族・個人と絞り込み、サウルを初代ヘブライ王国国王に選出した場所。
- ヤベシュ・ギレアド 現在のヨルダンのイルビド県付近。アモン人の王ナハシュに包囲され、サウルの軍に救われた町。サウルの死後、住民が夜通し歩いてベト・シェアンから遺体を持ち帰り、火葬した骨を御柳の下に葬った。
- ギルガル 現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区エリコ県。アモン人を打ち払ったサウルが、集まった民衆に支持された地。
- ミクマシュ 現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区エルサレム県。紀元前1,020年、サウルとヨナタンが戦車3,000台・騎兵6,000名・歩兵30,000名以上のペリシテ人を破った戦場。
- ベツレヘム 現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区。エッサイと其の息子達が住む町。後継者を探しに来たサムエルが、兄弟達の前で羊飼いのダビデに油を注いだ場所。
- エラの谷 現在のイスラエルのエルサレム地区。谷を挟んでペリシテ人とヘブライ王国軍が向かい合い、40日間の申し入れの末にダビデとゴリアテの一騎打ちが行われた場所。
- エクロン 現在のイスラエル中央地区。ゴリアテが討たれて逃亡するペリシテ人を、ヘブライ王国軍が其の門まで追撃した地。
- ノブ 現在のイスラエルのエルサレム地区。第12代大祭司アヒメレクがダビデに供えのパンとゴリアテの剣を与えた地。ドエグの告げ口を受けたサウルの命で襲撃され、祭司の家族・男性・女性・子供が剣で処刑された。
- アドラム 現在のイスラエルのエルサレム地区。ノブの襲撃から唯1人逃れたアビアタルが、洞窟でダビデと合流した場所。
- ジフ 現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区ヘブロン県。ケイラを離れたダビデが部下と共に逃れた山地の荒野。住民数名がサウルにダビデの居場所を知らせた。
- マオン 現在のパレスチナ国ヨルダン川西岸地区ヘブロン県。ジフから更に逃れたダビデを、サウルが荒野で捕らえようと計画した地。ペリシテ人の来襲により計画は中断された。
- エン・ゲディ 現在のイスラエル南部地区。ダビデ達が休息を取っていた洞窟へ、用を足す為にサウルが入って来た地。ダビデがローブの裾だけを切り取り、2人が和解してサウルがダビデを後継者と認めた、最後の対面の場。
- ギルボア山 現在のイスラエルの北部地区。紀元前1,010年、サウル率いるヘブライ王国軍がペリシテ人に敗れ、3人の息子が戦死し、サウルが自害した最後の戦場。
- ベト・シェアン 現在のイスラエルの北部地区。ペリシテ人がサウルの遺体を晒した城壁の在る町。ヤベシュの住民が夜通し歩いて、サウルと息子達の遺体を此処から持ち帰った。
- マハナイム 現在のイスラエルの北部地区。アブネルがサウルの四男イシュ・ボシェテを第2代ヘブライ王国国王に擁立した地。
- ヘブロン 現在のヨルダン川西岸地区。サウルの死を聞いたダビデが赴き、ユダ族に認められて統治した地。
若き英雄を恐れた王は、ギルボア山に散る──
初代ヘブライ王国国王サウルの11年を一元化。
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