電子書籍「偽善者マザー・テレサ一元化」の表紙

偽善者
マザー・テレサ一元化

著者:石田晋一

掲載範囲
西暦1,950年10月7日〜2,022年6月28日
ページ数
16ページ
最新更新日
西暦2,026年7月28日

寄付金の7%しか、慈善には使われなかった──
神の愛の宣教者会の設立から嬰児売買事件までの七十二年を一元化。

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本書について

西暦1,950年10月7日、マザー・テレサを含む12名の修道女が、カルカッタ教区から認可を得て、カルカッタにカトリック組織「神の愛の宣教者会」を設立する。受け取った寄付金からは、100,000,000〜150,000,000ドル/年が捻出され、IORへ送金されていた。テレサはIORの最大顧客であり、ローマ教皇庁から認められた者しか使えない、スイスの警備員が配置されたお得意様専用の秘密のドアから案内されていたという。本書は、此の送金を軸として、神の愛の宣教者会の設立から嬰児売買事件に至る七十二年を、年月日単位で一元化した記録である。

西暦1,952年、マザー・テレサがインド政府からヒンドゥー教の廃寺院を譲り受け、神の愛の宣教者会初のホスピスである「死を待つ人々の家」がコルカタに設立される。其処は、医者が不在で、修道女やボランティアに医学的知識は無く、衛生状態は劣悪であった。与えられるのは寄付された食べ物だけ、自由時間は30分、私語は厳禁。医療設備も治療薬も無く、注射針は消毒せずに使い回され、結核患者の隔離も行われなかった。患者には鎮痛薬が与えられず、痛みに耐える事が賛美され、ヒンドゥー教からキリスト教への強制改宗が行われた。神の愛の宣教者会は、受け取った寄付金の7%しか慈善活動に使わず、可能であった環境改善も一切行っていない。死を待つ人々の家の死亡率は40%を超えた。最終的に517件のホスピスが開設されたが、やって来た患者は更に病状が悪くなったのである。

西暦1,975年から翌年に掛けて、アメリカン・ファイナンシャル・コーポレーションのチャールズ・キーティングが、カール・リンドナー・ジュニアと共に、無担保融資・新株予約権・ザ・シンシナティ・エンクワイヤラー社の売却の三点に於いて株主訴訟を起こされる。証券取引委員会は同社に対する大規模な調査を行い、投資家を欺き、証券取引委員会に虚偽の報告書を提出したとして、キーティングやリンドナー・ジュニア等を起訴した。特に問題とされたのは、優遇的に行われた14,000,000ドルの融資である。西暦1,976年8月、キーティングは同社を辞職してフェニックスに移り、退職金の一部として住宅建設部門から切り離された不動産会社アメリカン・コンチネンタル・ホームズの経営を始めた。敬虔なカトリック教徒であったキーティングは、此の頃から、マザー・テレサ個人や其の事業へ1,200,000ドル、カトリック教会の国際的な任意団体聖ヴィンセンシオ・ア・パウロ会へ100,000ドル以上、家出やホームレスの子どもの保護を行う保育施設運営団体コヴナント・ハウスへ1,000,000ドル以上の寄付を行っている。テレサがアリゾナ州内のインディアン居留地を訪問する際、キーティングのプライベートジェットを利用した事もあった。

西暦1,981年、マザー・テレサがハイチを訪れ、第41代ハイチ大統領ジャン・クロード・デュヴァリエからレジオンドヌール勲章を授与されると共に、献金を受ける。西暦1,985年4月11日、初代アルバニア労働党第一書記エンヴェル・ホッジャが死去した。ホッジャは共産主義者で、正統派マルクスレーニン主義を宣言してヨシフ・スターリンを崇拝し、無神論を国家の原則として全ての宗教を完全否定し、全国の教会やモスクを閉鎖させた人物である。西暦1,989年8月、テレサはアルバニアを訪れ、未亡人となっていたネジミエ・ホッジャ等の政府要人から歓迎された。其の後テレサは、エンヴェル・ホッジャの墓に花束を供え、マザー・アルバニア像に花冠を飾っている。神への奉仕を標榜する者が、宗教を完全否定した独裁者の墓前に花を供えた瞬間であった。

西暦1,990年8月、チャールズ・キーティングが、前年4月14日のリンカーン貯蓄貸付組合の破綻に関し、政府規制当局が原因であるとして同組合の支配権を求めて起こしていた訴訟が却下される。判事は差し押さえは正当であるとした。キーティングの訴訟費用は月額1,000,000ドルであった。同年9月、キーティング等は、リンカーン貯蓄貸付組合の顧客を騙してアメリカン・ファイナンシャル・コーポレーションの無価値なジャンク債を買わせたという42件の罪でカリフォルニア州から起訴され、5,000,000ドルの保釈金を支払う事が出来ず収監された。西暦1,991年12月、キーティングは詐欺罪・ゆすり・陰謀罪で有罪判決を受ける。此の際マザー・テレサは、キーティングから自身の事業に対し寄付を受けた事を認めた上で、キーティングの人柄を擁護する陳述書を本人名義で作成し、非難を浴びた。西暦1,992年4月、カリフォルニア州高等裁判所はキーティングに懲役最長10年を言い渡し、キーティングはツーソン(アメリカのアリゾナ州)にある中程度のセキュリティの連邦矯正施設で服役した。

西暦1,996年、マザー・テレサと作家ナギーブ・マフフーズの支持により、リーチオ・ジェッリがノーベル文学賞候補者にノミネートされる。テレサはジェッリから資金提供を受けていた。そして西暦2,018年7月5日、ラーンチー(インドのジャールカンド州)の警察が、少なくとも5名の赤子を売ったとして、神の愛の宣教者会の修道女と女性職員の計2名を逮捕する。地元の児童福祉局が、同会の男児である新生児1名が行方不明になっていると通報した事がきっかけであった。此の新生児は、ウッタル・プラデーシュ州で1,700ドルで売買されている。テレサ亡き後も、彼女が設立した会の修道女自身の手によって嬰児売買が行われていた事実が、此処で露呈した。

マザー・テレサに資金提供を行っていた人物の中には、モサドとの関係が取り沙汰されたロバート・マクスウェルも居た。其の娘ギレーヌ・マクスウェルは、西暦2,020年7月2日、性犯罪目的の未成年者誘拐・児童の性的人身売買・少女売春斡旋・共謀罪・偽証罪等の6つの罪で、逃走先のニューハンプシャー州でFBIに逮捕される。ジェフリー・エプスタインの元交際相手であった。西暦2,021年8月9日には、アメリカ女性のバージニア・ジュフリーが、未成年であった西暦2,001年以前にエプスタインによって性交目的で貸し出され、ギレーヌ・マクスウェルのロンドンの自宅とリトル・セント・ジェームズ島でヨーク公爵アンドルー王子から性的虐待を受けたとして、ニューヨーク州マンハッタンの連邦地裁に訴えた。同年12月29日、ギレーヌ・マクスウェルはアメリカ連邦裁判所の陪審により、性的人身売買・少女売春斡旋・共謀罪を含む5つの罪状で有罪判決を受け、西暦2,022年6月28日、ニューヨーク連邦地裁は禁錮20年を言い渡した。検察側は少なくとも禁錮30年を求刑していた。寄付を捧げた者たちの顔ぶれと、会の内側で起きた事——本書は、其の七十二年の全過程を一冊に束ねている。


登場人物

  • マザー・テレサ 本書の中心人物。西暦1,950年10月7日、12名の修道女と共にカルカッタで神の愛の宣教者会を設立。西暦1,952年にコルカタで「死を待つ人々の家」を開いた。受け取った寄付金の7%しか慈善活動に使わず、100,000,000〜150,000,000ドル/年をIORへ送金していた。キーティング・デュヴァリエ・ジェッリ・マクスウェル等から資金提供を受け、西暦1,991年にはキーティングの人柄を擁護する陳述書を本人名義で作成して非難を浴びた。
  • チャールズ・キーティング アメリカン・ファイナンシャル・コーポレーションの経営者。西暦1,975年から株主訴訟と証券取引委員会の調査を受け、西暦1,976年8月に辞職。敬虔なカトリック教徒として、マザー・テレサ個人や其の事業へ1,200,000ドルを寄付し、テレサにプライベートジェットを提供した事もあった。西暦1,991年12月、詐欺罪・ゆすり・陰謀罪で有罪判決を受け、翌年4月に懲役最長10年を言い渡されてツーソンの連邦矯正施設で服役した。
  • カール・リンドナー・ジュニア 西暦1,975年から翌年に掛けて、チャールズ・キーティングと共に、無担保融資・新株予約権・ザ・シンシナティ・エンクワイヤラー社の売却の三点に於いて株主訴訟を起こされた人物。証券取引委員会の調査を経て、投資家を欺き虚偽の報告書を提出したとして起訴された。
  • ジャン・クロード・デュヴァリエ 第41代ハイチ大統領。西暦1,981年、ハイチを訪れたマザー・テレサにレジオンドヌール勲章を授与すると共に、献金を行った。
  • エンヴェル・ホッジャ 初代アルバニア労働党第一書記。共産主義者で、正統派マルクスレーニン主義を宣言してヨシフ・スターリンを崇拝し、無神論を国家の原則として全ての宗教を完全否定し、全国の教会やモスクを閉鎖させた。西暦1,985年4月11日に死去。西暦1,989年8月、アルバニアを訪れたマザー・テレサが其の墓に花束を供えた。
  • ネジミエ・ホッジャ エンヴェル・ホッジャの妻。西暦1,989年8月、未亡人となっていたネジミエ等のアルバニア政府要人が、アルバニアを訪れたマザー・テレサを歓迎した。
  • リーチオ・ジェッリ 西暦1,996年、マザー・テレサと作家ナギーブ・マフフーズの支持により、ノーベル文学賞候補者にノミネートされた人物。テレサはジェッリから資金提供を受けていた。
  • ナギーブ・マフフーズ 作家。西暦1,996年、マザー・テレサと共にリーチオ・ジェッリのノーベル文学賞候補者ノミネートを支持した。
  • ロバート・マクスウェル ギレーヌ・マクスウェルの父。モサドとの関係が取り沙汰された人物で、マザー・テレサに資金提供を行っていた。
  • ギレーヌ・マクスウェル ロバート・マクスウェルの娘で、ジェフリー・エプスタインの元交際相手。西暦2,020年7月2日、性犯罪目的の未成年者誘拐・児童の性的人身売買・少女売春斡旋・共謀罪・偽証罪等の6つの罪で、逃走先のニューハンプシャー州でFBIに逮捕された。西暦2,021年12月29日に陪審により5つの罪状で有罪判決を受け、西暦2,022年6月28日、ニューヨーク連邦地裁から禁錮20年を言い渡された。
  • ジェフリー・エプスタイン ギレーヌ・マクスウェルの元交際相手。西暦2,021年8月9日のバージニア・ジュフリーによる訴えでは、ジュフリーが未成年であった西暦2,001年以前に、彼女を性交目的で貸し出したとされた。
  • バージニア・ジュフリー アメリカ女性。西暦2,021年8月9日、未成年であった西暦2,001年以前にジェフリー・エプスタインによって性交目的で貸し出され、ギレーヌ・マクスウェルのロンドンの自宅とリトル・セント・ジェームズ島でヨーク公爵アンドルー王子から性的虐待を受けたとして、ニューヨーク州マンハッタンの連邦地裁に訴えた。
  • アンドルー王子 ヨーク公爵。西暦2,021年8月9日、バージニア・ジュフリーから、ギレーヌ・マクスウェルのロンドンの自宅とリトル・セント・ジェームズ島で性的虐待を行ったとして、ニューヨーク州マンハッタンの連邦地裁に訴えられた。

主要な概念・組織

  • 神の愛の宣教者会 西暦1,950年10月7日、マザー・テレサを含む12名の修道女がカルカッタ教区から認可を得て設立したカトリック組織。受け取った寄付金の7%しか慈善活動に使わず、100,000,000〜150,000,000ドル/年をIORへ送金していた。最終的に517件のホスピスを開設したが、西暦2,018年には修道女が嬰児売買で逮捕されている。
  • 死を待つ人々の家 西暦1,952年、インド政府から譲り受けたヒンドゥー教の廃寺院を用いてコルカタに設立された、神の愛の宣教者会初のホスピス。医者不在、医学的知識を持たない修道女とボランティア、劣悪な衛生状態、寄付された食べ物のみの食事、自由時間30分、私語厳禁、医療設備と治療薬の欠如、注射針の使い回し、結核患者の隔離無し、鎮痛薬を与えず痛みに耐える事の賛美、ヒンドゥー教からキリスト教への強制改宗という環境で、死亡率は40%を超えた。
  • IORへの送金 神の愛の宣教者会が受け取った寄付金から捻出され、IORへ送られていた100,000,000〜150,000,000ドル/年。マザー・テレサはIORの最大顧客であり、ローマ教皇庁から認められた者しか使えない、スイスの警備員が配置されたお得意様専用の秘密のドアから案内されていたという。
  • アメリカン・ファイナンシャル・コーポレーション チャールズ・キーティングとカール・リンドナー・ジュニアが西暦1,975年から翌年に掛けて株主訴訟を起こされた企業。証券取引委員会の大規模な調査を受け、投資家を欺き虚偽の報告書を提出したとして両名等が起訴された。特に問題とされたのは、優遇的に行われた14,000,000ドルの融資であった。
  • リンカーン貯蓄貸付組合の破綻 西暦1,989年4月14日に発生。チャールズ・キーティングは政府規制当局が原因であるとして支配権を求める訴訟を起こしたが西暦1,990年8月に却下され、同年9月には顧客を騙して無価値なジャンク債を買わせたとして42件の罪でカリフォルニア州から起訴された。5,000,000ドルの保釈金を支払えず収監されている。
  • レジオンドヌール勲章とハイチの献金 西暦1,981年、ハイチを訪れたマザー・テレサが、第41代ハイチ大統領ジャン・クロード・デュヴァリエから授与された勲章と、併せて受けた献金。
  • アルバニア訪問とホッジャの墓 西暦1,989年8月、マザー・テレサがアルバニアを訪れ、ネジミエ・ホッジャ等の政府要人から歓迎された出来事。テレサはエンヴェル・ホッジャの墓に花束を供え、マザー・アルバニア像に花冠を飾った。ホッジャは無神論を国家の原則とし、全国の教会やモスクを閉鎖させた人物であった。
  • ラーンチーの嬰児売買事件 西暦2,018年7月5日、ラーンチー(インドのジャールカンド州)の警察が、少なくとも5名の赤子を売ったとして神の愛の宣教者会の修道女と女性職員の計2名を逮捕した事件。地元の児童福祉局が、同会の男児である新生児1名の行方不明を通報した事がきっかけであった。此の新生児はウッタル・プラデーシュ州で1,700ドルで売買されていた。

IORへ年1億ドル超、死亡率40%超のホスピス、そして資金提供者たち──
マザー・テレサと其の事業の全過程を年月日単位で追跡した一冊。

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AUTHOR

石田晋一

歴史データベース「トキジク」管理人。
万物の系譜の編纂者であり、電子書籍の著者。
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