電子書籍「キッシンジャーの人口削減サマリー一元化」の表紙

キッシンジャーの人口削減サマリー一元化

著者:石田晋一

掲載範囲
西暦1,974年12月10日
最新更新日
西暦2,025年10月26日

西暦1,974年12月10日、ヘンリー・キッシンジャーが発表したアメリカ安全保障研究メモランダム200「世界的な人口増加が米国の安全保障と海外利益に与える影響」──
世界人口増加率の分析、後発開発途上国における飢饉と食糧問題、急速な人口増加が経済発展や政治的安定に与える影響、国際連合世界人口会議で採択された世界人口行動計画、西暦2,000年迄に子供2人世帯を平均とする目標、人口削減支援を重点的に行う13ヶ国、UNFPAを通じた家族計画援助、選択的開発政策、必要とされる予算に至るまで、メモランダムの内容を項目単位で一元化した一冊。

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本書について

西暦1,974年12月10日、ヘンリー・キッシンジャーが「世界的な人口増加が米国の安全保障と海外利益に与える影響」と題するアメリカ安全保障研究メモランダム200(NSSM 200)を発表した。本書は、此のメモランダムの内容を項目単位で一元化した要約である。

メモランダムはまず、世界の人口増加率の分析から始まる。人口増加率は2%に近付いており、第2次世界大戦前は約1%、西暦1,750年から1,900年は0.5%以下、それ以前は更に低かった。西暦1,950年以降、豊かな国と貧しい国で増加率の違いが顕著となり、前者は0〜1.5%、後者は2〜3.5%であった。人口増加には勢いがあり、出生率が低下しても総人口への影響は数十年後にしか現れない為、将来の人口を適正な範囲に収めるには、西暦1,970年代から1,980年代に掛けて少子化への対策を開始する事が急務であるとされた。国連の推計では、西暦1,970年の総人口36億人をベースに、西暦2,000年には60〜80億人になると予測され、アメリカの予測では西暦2,075年の総人口は120億人とされた。

短中期的に最も深刻なのは、世界の貧しいエリアでの飢饉の発生であるとされた。容易に入手出来る肥料や水利の良い土地は既に殆ど利用されており、現在でも毎年1,000万〜2,000万人が栄養失調により命を落としているとされた。又、人口の急増は脆弱な環境を圧迫し、限界地の耕作・過放牧・砂漠化・森林破壊・土壌侵食等によって長期的な食糧生産を脅かすとされた。

経済面では、急速な人口増加が経済発展の速度を著しく低下させ、時には1人当たりの所得の増加を妨げ、後発開発途上国(LDCs)の社会的・経済的進歩に影響を与えるとされた。其の悪影響として、家族の貯蓄と国内投資の減少、食糧輸入の為の外貨需要、失業と不完全雇用の深刻化、扶養支援・教育・保健等のサービスへの多額の支出の必要性等が挙げられた。

安全保障面では、LDCsの人口問題が、アメリカが関心を持つ国々の内的安定と国際関係にダメージを与え、政治的或いは国家安全保障上の問題を引き起こすとされた。急速な成長、地方から都市への国内移動、若年層の割合の高さ、都市集中、海外移住への圧力等が、子供の遺棄・少年非行・窃盗・食糧暴動・分離主義運動・革命運動等を引き起こす原因となり得るとされ、人口問題が開発途上エリアにおける暴力的紛争の要因の1つであると位置付けられた。

メモランダムは、西暦1,974年8月の国際連合世界人口会議で採択された世界人口行動計画を、人口・家族計画プログラムの世界的システムを開発する為の枠組みとして利用すべきだとした。目標として、西暦2,000年頃迄に子供2人世帯を平均とする事が掲げられ、その為には現在の成長率2%を、10年以内に1.7%、西暦2,000年迄に1.1%に低下させる必要があるとされた。

具体的な戦略として、人口削減の為の支援を、急成長している13ヶ国──インド・バングラデシュ・パキスタン・ナイジェリア・メキシコ・インドネシア・ブラジル・フィリピン・タイ・エジプト・トルコ・エチオピア・コロンビア──に第一に重点を置くべきだとされた。此れ等の国の増加人口の総計は全体の47%を占めるとされた。又、UNFPA(国連人口基金)への捻出金の積み増し、現在の技術に基づく家族計画情報と資料のLDCsの農村部の貧困層への提供、不妊化に関する生物医学的研究への連邦政府機関の支援を年6,000万ドル増額する事、女性への最低限の教育の提供・乳幼児死亡率の削減・女性の賃金雇用の拡大・老後の保障としての子供に代わるものの開発・貧困層所得の増加といった選択的開発政策の優先等が挙げられた。一方で、これらの活動がLDCsに対し先進国の政策が押し付けられていると思われない様に注意し、第三世界の指導者が前面に立つべきであるとも記された。

財政面では、これらの政策の実行には、西暦1,980年度迄の間、年3,500万〜5,000万ドルの予算要求を議会に行う必要があるとされ、毎年人口政策の見直しを行い進捗状況を確認すべきだとされた。本書は、この約9ページに及ぶメモランダムの全項目を、原文の順序に沿って整理・記録した一冊である。


登場人物

  • ヘンリー・キッシンジャー 本書の中心人物。西暦1,974年12月10日、「世界的な人口増加が米国の安全保障と海外利益に与える影響」と題するアメリカ安全保障研究メモランダム200(NSSM 200)を発表した。メモランダムは、人口増加抑制を最重要課題として大統領と国務長官が扱い、他国の指導者との接触で具体的に取り上げる事を求めている。
  • トマス・ロバート・マルサス 「人口論」で知られる経済学者。メモランダムは、人口増加を遅らせる努力を怠れば、世界の多くの地域が、食糧は算術級数的にしか増加しないのに人口は幾何級数的に増加するという、マルサス主義的な状況に陥る可能性があると論じている。

主要な概念・組織

  • アメリカ安全保障研究メモランダム200 NSSM 200。西暦1,974年12月10日にヘンリー・キッシンジャーが発表した「世界的な人口増加が米国の安全保障と海外利益に与える影響」と題する文書。世界の人口増加がアメリカの安全保障と海外利益に与える影響を分析し、人口増加抑制の為の戦略を勧告した。本書はこの文書を一元化した要約である。
  • 世界人口行動計画 西暦1,974年8月の国際連合世界人口会議で採択された行動計画。出生率を下げる為に、子供の死亡率を下げるヘルスケアと栄養の改善、女性の教育・社会的地位の向上、女性の雇用増加、老齢保障の改善、所得と資源の再分配等を優先する様勧告した。メモランダムは此れを、世界的な人口・家族計画プログラムを開発する為の枠組みとして位置付けている。
  • 重点13ヶ国 メモランダムが、人口削減の為の支援を第一に重点的に行うべきとした、急成長している13の発展途上国。インド・バングラデシュ・パキスタン・ナイジェリア・メキシコ・インドネシア・ブラジル・フィリピン・タイ・エジプト・トルコ・エチオピア・コロンビアであり、これらの増加人口の総計は全体の47%を占めるとされた。
  • UNFPA(国連人口基金) 人口分野で活動する国連機関。メモランダムの時点で既に80ヶ国でプロジェクトを展開しているとされ、アメリカは捻出金を積み増しし、より広範な基盤で人口対策を拡大する事になると記された。
  • パーシー修正条項 前年にアメリカで採択された、女性の統合を奨励・促進する外国援助法。メモランダムは、その実施に向けた取り組みを行うべきだとしている。
  • マルサス主義的な状況 人間の生存には食糧が必要であり、食糧は算術級数的にしか増加しないのに対し人口は幾何級数的に増加する為、人口は絶えず食料増加の限界を超えて増加する傾向があるとする見方。メモランダムは、人口増加を遅らせる努力を怠れば世界の多くの地域がこうした状況に陥る可能性があると論じている。

西暦1,974年12月10日、ヘンリー・キッシンジャーが発表したアメリカ安全保障研究メモランダム200「世界的な人口増加が米国の安全保障と海外利益に与える影響」──
世界人口増加率の分析、後発開発途上国における飢饉と食糧問題、急速な人口増加が経済発展や政治的安定に与える影響、国際連合世界人口会議で採択された世界人口行動計画、西暦2,000年迄に子供2人世帯を平均とする目標、人口削減支援を重点的に行う13ヶ国、UNFPAを通じた家族計画援助、選択的開発政策、必要とされる予算に至るまで、メモランダムの内容を項目単位で一元化した一冊。

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AUTHOR

石田晋一

歴史データベース「一元化」管理人。
万物の系譜の編纂者であり、電子書籍の著者。
YouTubeとニコニコでも情報を発信中。