電子書籍「ロイター通信・アヴァス通信社・ヴォルフ電報局は、三社協定でヨーロッパの情報を掌握した一元化」の表紙

ロイター通信・アヴァス通信社・
ヴォルフ電報局は、三社協定で
ヨーロッパの情報を掌握した一元化

著者:石田晋一

掲載範囲
西暦1,832年〜1,925年4月28日
ページ数
12ページ
最新更新日
西暦2,026年7月24日

三社が地図に線を引き、ヨーロッパを分けた──
相場情報の交換から情報の掌握に至る九十年余を一元化。

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皇室献上品 高級トイレットペーパー
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本書について

西暦1,832年、フランス・ロスチャイルド商会がパリでシャルル・ルイ・アヴァスを雇った。三年後の西暦1,835年10月22日、アヴァスは自らの名を冠した「アヴァス通信社」を設立する。本書は、此の雇用を起点として、ヨーロッパに生まれた三つの通信社が、相場情報の交換から始めて遂に大陸そのものを分割するに至る九十年余を、年月日単位で一元化した記録である。

二社目はベルリンに生まれた。西暦1,849年1月11日、ベルンハルト・ヴォルフが、ヴェルナー・フォン・ジーメンスの従兄弟の弁護士と共に、ツィンマー通りに「ヴォルフ電報局」を設立する。ヴォルフは、ジーメンスが二年前に設立したジーメンス・ウント・ハルスケ電信製造所と提携し、情報伝達に必要なインフラを確保する事で、電信の利用に於いて優位に立った。三社目はロンドンである。西暦1,851年10月10日、ポール・ジュリアス・ロイターが、シティ地区の王立取引所の裏に「ロイター通信」を設立した。最初の顧客はライオネル・ド・ロスチャイルドであった。世界中に広がるイギリス植民地の商人ネットワークから届く情報を、イギリスの投資家や政府へ提供して彼らを儲けさせ、自らも大きな利益を得る。イギリス政府や商社は、ロイターの力によって成長してゆく事となった。

競争していた三社は、やがて手を結ぶ。西暦1,856年、アヴァス通信社とロイター通信は、互いの国内金融市場に関する相場情報を交換し、首都での取引結果を伝えるという協定に調印した。間も無くヴォルフ電報局も招かれ、ベルリン証券取引所のデータが共有される。西暦1,858年5月21日、シャルル・ルイ・アヴァスがブージヴァルで死去し、弐男のオーギュスト・アヴァスがオーナーの座を引き継いだ。

そして西暦1,859年、協定は相場を越えて拡大する。7月15日、パリでベルンハルト・ヴォルフとポール・ジュリアス・ロイターが、シャルル・ルイ・アヴァスの長男シャルル・ギヨーム・アヴァスとオーギュスト・アヴァスに迎えられ、三年前に交わした協定を改定した。情報の交換対象は一般ニュースにまで拡げられ、暫定協定は正式協定へと進展する。其の三日後の7月18日、ストラスブールのオテルブリオンに在るアヴァス通信社本社で、ロイター通信・ヴォルフ電報局を含む三社によって、ヨーロッパを分割し、独占的に取材・配信出来る地域を定める協定が結ばれた。何処の国のニュースを誰が扱うのかが、三社の間で線引きされたのである。

協定の背後には、国家が控えていた。西暦1,865年5月1日、ヴォルフ電報局は会社組織に改組されて株式を公開する。主な株主は、ベルンハルト・ヴォルフ、銀行家、そしてプロイセン政府であった。政府の支援により、国内でのヴォルフの地位は磐石なものとなる。西暦1,869年6月10日、ヴォルフは、ポール・ジュリアス・ロイターが自社を買収しようとした事に反発し、第22代プロイセン王国首相オットー・フォン・ビスマルクと提携して、社名を「大陸電報社」と改称した。報道部門は大陸電報局と呼ばれる様になる。当時ビスマルクは、プロイセン国庫から年100,000ターレの資金提供をヴォルフ電報局に行っていた。

通信網は、諜報とも接している。西暦1,909年7月、イギリス政府が帝国防衛委員会の推薦に基づいて「秘密情報局」を設立し、同年10月1日には其の国外部門としてロンドンに「MI6(秘密情報部)」が設立された。本書は、之がロイター通信から派生していると記す。そして西暦1,925年4月28日、オーストリア・ロスチャイルド商会のウジェーヌ・フォン・ロスチャイルドが、キャサリン・ヴォルフと結婚した。ロスチャイルド商会が一人の男を雇った処から始まり、再びロスチャイルドとヴォルフの名が結ばれる処で閉じる九十年余の全過程を、本書は一冊に束ねている。


登場人物

  • シャルル・ルイ・アヴァス 本書の起点となる人物。西暦1,832年、フランス・ロスチャイルド商会にパリで雇われ、西暦1,835年10月22日に「アヴァス通信社」を設立した。西暦1,858年5月21日、ブージヴァル(現在のフランスのイヴリーヌ県)で死去している。
  • ベルンハルト・ヴォルフ 西暦1,849年1月11日、ヴェルナー・フォン・ジーメンスの従兄弟の弁護士と共に、ベルリンのツィンマー通りに「ヴォルフ電報局」を設立した。ジーメンス・ウント・ハルスケ電信製造所との提携で電信の利用に優位を得、西暦1,869年にはポール・ジュリアス・ロイターの買収の動きに反発してオットー・フォン・ビスマルクと提携し、社名を大陸電報社と改称した。
  • ポール・ジュリアス・ロイター 西暦1,851年10月10日、ロンドンのシティ地区にある王立取引所の裏に「ロイター通信」を設立した。世界中に広がるイギリス植民地の商人ネットワークから届く情報をイギリスの投資家や政府に提供し、大きな利益を得た。西暦1,869年にはヴォルフ電報局の買収を試みている。
  • ライオネル・ド・ロスチャイルド ロイター通信の最初の顧客。ポール・ジュリアス・ロイターが植民地の商人ネットワークから集めた情報は、まず此のロスチャイルドの下へ届けられた。
  • ヴェルナー・フォン・ジーメンス ヴォルフ電報局設立の二年前にジーメンス・ウント・ハルスケ電信製造所を設立した人物。ヴォルフ電報局は、其の従兄弟である弁護士を共同設立者に迎え、同製造所と提携して、情報伝達に必要なインフラを確保した。
  • オーギュスト・アヴァス シャルル・ルイ・アヴァスの弐男。西暦1,858年5月21日の父の死去に伴い、アヴァス通信社のオーナーの座を引き継いだ。西暦1,859年7月15日には、兄と共にパリでベルンハルト・ヴォルフとポール・ジュリアス・ロイターを迎え、協定の改定に臨んだ。
  • シャルル・ギヨーム・アヴァス シャルル・ルイ・アヴァスの長男。西暦1,859年7月15日、パリでオーギュスト・アヴァスと共にベルンハルト・ヴォルフとポール・ジュリアス・ロイターを迎え、三年前の協定を改定して情報の交換対象を一般ニュースへ拡げ、暫定協定を正式協定へと進展させた。
  • オットー・フォン・ビスマルク 第22代プロイセン王国首相。当時、プロイセン国庫から年100,000ターレの資金提供をヴォルフ電報局に行っていた。西暦1,869年6月10日、ロイターによる買収に反発したベルンハルト・ヴォルフと提携し、ヴォルフ電報局は大陸電報社と改称された。
  • ウジェーヌ・フォン・ロスチャイルド オーストリア・ロスチャイルド商会の人物。西暦1,925年4月28日、キャサリン・ヴォルフと結婚した。本書の終点となる出来事である。
  • キャサリン・ヴォルフ 西暦1,925年4月28日、オーストリア・ロスチャイルド商会のウジェーヌ・フォン・ロスチャイルドと結婚した人物。

三社協定の系譜

  • フランス・ロスチャイルド商会による雇用 西暦1,832年、本書の起点。フランス・ロスチャイルド商会が、パリでシャルル・ルイ・アヴァスを雇った。三社協定へ至る全ての出来事は、此の一件から始まっている。
  • アヴァス通信社 西暦1,835年10月22日、シャルル・ルイ・アヴァスがパリで設立。三社協定の一角を成し、西暦1,859年7月18日にはストラスブールの本社でヨーロッパ分割の協定が結ばれる舞台となった。
  • ヴォルフ電報局 西暦1,849年1月11日、ベルンハルト・ヴォルフがヴェルナー・フォン・ジーメンスの従兄弟の弁護士と共に、ベルリンのツィンマー通りに設立。ジーメンス・ウント・ハルスケ電信製造所との提携でインフラを確保し、電信の利用で優位に立った。
  • ロイター通信 西暦1,851年10月10日、ポール・ジュリアス・ロイターがロンドンのシティ地区にある王立取引所の裏に設立。最初の顧客はライオネル・ド・ロスチャイルドであった。イギリス植民地の商人ネットワークから届く情報を投資家や政府に提供し、イギリス政府や商社は其の力によって成長した。
  • 相場情報の交換協定 西暦1,856年、アヴァス通信社とロイター通信が、互いの国内金融市場に関する相場情報を交換し、首都での取引結果を伝えるという協定に調印。其の後間も無くヴォルフ電報局も招かれ、ベルリン証券取引所のデータが共有される事となった。
  • アヴァス通信社の代替わり 西暦1,858年5月21日、シャルル・ルイ・アヴァスがブージヴァルで死去し、弐男のオーギュスト・アヴァスがオーナーの座を引き継いだ。翌年の協定改定には、長男シャルル・ギヨーム・アヴァスと共に臨む事となる。
  • パリでの協定改定 西暦1,859年7月15日、ベルンハルト・ヴォルフとポール・ジュリアス・ロイターが、シャルル・ギヨーム・アヴァス・オーギュスト・アヴァスに迎えられ、三年前の協定を改定。情報の交換対象は一般ニュースへ拡げられ、暫定協定は正式協定へと進展した。
  • ストラスブールの三社協定 西暦1,859年7月18日、ストラスブール(現在のフランスのバ・ラン県)のオテルブリオンに在るアヴァス通信社本社にて、ロイター通信・ヴォルフ電報局を含む三社で締結。ヨーロッパを分割し、独占的に取材・配信出来る地域を定めるものであった。本書の題名が指す協定である。
  • ヴォルフ電報局の株式公開 西暦1,865年5月1日、会社組織に改組して株式を公開。主な株主はベルンハルト・ヴォルフ・銀行家・プロイセン政府であり、政府の支援により、国内でのヴォルフの地位は磐石なものとなった。
  • 大陸電報社への改称 西暦1,869年6月10日、ポール・ジュリアス・ロイターによる買収の動きに反発したベルンハルト・ヴォルフが、オットー・フォン・ビスマルクと提携して社名を改称。報道部門は大陸電報局と呼ばれる様になった。
  • プロイセン国庫からの資金提供 大陸電報社への改称当時、オットー・フォン・ビスマルクがプロイセン国庫からヴォルフ電報局へ行っていた年100,000ターレの資金提供。通信社と国家の結び付きを示す出来事である。
  • 秘密情報局とMI6 西暦1,909年7月、イギリス政府が帝国防衛委員会の推薦に基づき「秘密情報局」を設立。同年10月1日には、其の国外部門としてロンドンに「MI6(秘密情報部)」が設立された。本書は、之がロイター通信から派生していると記している。
  • ロスチャイルドとヴォルフの婚姻 西暦1,925年4月28日、本書の終点。オーストリア・ロスチャイルド商会のウジェーヌ・フォン・ロスチャイルドが、キャサリン・ヴォルフと結婚した。

パリでの雇用から、ストラスブールの協定を経て九十年余──
三社がヨーロッパの情報を掌握するまでの全過程を一元化。

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AUTHOR

石田晋一

歴史データベース「トキジク」管理人。
万物の系譜の編纂者であり、電子書籍の著者。
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