モサドの工作員
ロバート・マクスウェルの
機密情報収集ソフト「PROMIS」
販売一元化
一本のソフトが、世界中の機密を運び出した──
PROMISを巡る九年余と、テネリフェ島沖の銃声までを一元化。
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本書について
西暦1,982年3月、ソフトウェア開発会社のインスロー社が、アメリカ司法省から9,600,000ドルの契約を獲得した。パイロットプログラムとして、22の検事局に検察官管理情報システム「PROMIS(プロセキューターズ・マネージメント・インフォメーション・システム)」のパブリックドメインバージョンを導入する為の契約であり、司法省は初期段階で数百万ドルを支払っている。事件の管理を効率化する為の、一本の業務用ソフトウェアであった。本書は、此の契約を起点として、其のソフトウェアが世界中の機密情報を運び出す道具へと変わってゆく九年余を、年月日単位で一元化した記録である。
西暦1,983年、アメリカ司法省は、インスロー社が民間資金で改良した「エンハンスドPROMIS」のソースコードを要求する。同社は之を拒否した。司法省は其れを理由に約2,000,000ドルの支払いを保留とし、同社の資金繰りは一気に悪化した。同年2月、司法省のマディソン・ブリック・ブリュワーは、アマーン(イスラエル参謀本部諜報局)の高官アリ・ベン・メナシェに手配させ、モサドのラフィ・エイタンに「ベン・オア博士」という偽名を与えてインスロー社を訪問させる。エイタンはイスラエル司法省の代表として自己紹介し、PROMISのデモを受け、購入すると言いながら購入せず、ソースコード等の情報を盗み出した。此の後、バックドア機能を付けたPROMISの改変版が、モサド経由でイスラエル政府へ提供され始める。仲介したのが、ロバート・マクスウェルであった。
西暦1,984年、マクスウェルは、自身が所有するイスラエル拠点のデゲム・コンピュータズ社を経由して、PROMISのマーケティングを開始する。モサドを通じて売り渡した先は、KGB、南アフリカ、ロスアラモス国立研究所、ジンバブエ、中国、タイ、トルコ、ベルギー、ポーランド、ニカラグア、コロンビア、サンディア国立研究所、カナダ、オーストラリア、グアテマラを始めとする20ヶ所以上に及び、総額500,000,000ドル以上の利益を上げた。世界中にPROMISが普及した事により、モサドは各国の機密情報を収集する事が可能になった。売った相手の数だけ、覗き込める窓が増えていったのである。
一方、盗まれた側は潰れてゆく。西暦1,985年2月7日、インスロー社は連邦倒産裁判所に破産申請を行った。西暦1,988年1月25日、連邦倒産裁判所はアメリカ司法省に8,000,000ドルと弁護士費用の賠償を命じ、インスロー社が勝訴する。司法省は上訴した。そして西暦1,991年5月、連邦控訴裁判所はインスロー社の訴えを退け、倒産裁判所の判決を破棄する。契約紛争であるから倒産裁判所の管轄外であるとし、司法省は所有権を主張する立場でPROMISを保有していたのだから違反は無い、という判断であった。
西暦1,991年10月、マクスウェルは、第7代モサド長官シャブタイ・シャヴィット等のモサド上層部と接触する。モサドが支払っていないPROMISの代金400,000,000ポンドを即時支払わなければ、モサドの秘密を暴露すると脅迫したのである。突き付けられた秘密は四つ。インスロー社が開発したPROMISを盗用しバックドア機能を追加して販売した事。西暦1,986年に核兵器開発技術者モルデハイ・ヴァヌヌがサンデー・タイムズ紙にイスラエルの核兵器開発情報を内部告発しようとした際、マクスウェル自身がイスラエル大使館に通報し、モサドによるヴァヌヌ連行を助けた事。西暦1,986年に発覚したイラン・コントラ事件関連の秘密資金ルートと、東側諸国への武器売却。そして、同年4月5日にアトランティック・サウスイースト航空EV2311便墜落事故で死去したアメリカ上院議員ジョン・タワーの仲介により、バックドア付きのPROMISをロスアラモス国立研究所やサンディア国立研究所に売り、アメリカの原子力機密をモサドに漏洩させた事である。
脅迫から一ヶ月も経たぬ西暦1,991年11月5日、ロバート・マクスウェルは、テネリフェ島(スペイン領カナリア諸島)に停泊中の自身のヨットにて、モサドによって射殺された。彼が抱えていた負債は、未払いのPROMIS代金400,000,000ポンドを含めて2,700,000,000ポンド。銀行融資・投資家借入・貿易債務の積み重ねであり、ポンジ・スキームによって維持されていたものであった。一本の業務用ソフトウェアの契約から、カナリア諸島沖の銃声に至る迄の全過程を、本書は一冊に束ねている。
登場人物
- ロバート・マクスウェル 本書の中心人物。モサドの工作員。西暦1,983年、バックドア機能を付けたPROMISのイスラエル政府への提供を仲介し、翌西暦1,984年からは自身が所有するデゲム・コンピュータズ社を経由してPROMISのマーケティングを開始、20ヶ所以上へ販売して総額500,000,000ドル以上の利益を上げた。西暦1,991年10月にモサド上層部を脅迫し、翌11月5日、テネリフェ島に停泊中の自身のヨットで射殺された。
- ラフィ・エイタン モサドの人物。西暦1,983年2月、「ベン・オア博士」という偽名を与えられてインスロー社を訪問し、イスラエル司法省の代表として自己紹介した。PROMISのデモを受け、購入すると言いながら購入せず、ソースコード等の情報を盗み出した。
- アリ・ベン・メナシェ アマーン(イスラエル参謀本部諜報局)の高官。西暦1,983年2月、アメリカ司法省のマディソン・ブリック・ブリュワーの依頼を受け、ラフィ・エイタンによるインスロー社訪問を手配した。
- マディソン・ブリック・ブリュワー アメリカ司法省の人物。西暦1,983年2月、アリ・ベン・メナシェに手配させて、モサドのラフィ・エイタンを偽名でインスロー社へ訪問させた。此の訪問の後、バックドア機能を付けたPROMISの改変版が、モサド経由でイスラエル政府へ提供され始めた。
- シャブタイ・シャヴィット 第7代モサド長官。西暦1,991年10月、ロバート・マクスウェルから、モサドが支払っていないPROMISの代金400,000,000ポンドの即時支払いを求められ、応じなければ秘密を暴露すると脅迫された。
- モルデハイ・ヴァヌヌ 核兵器開発技術者。西暦1,986年、サンデー・タイムズ紙にイスラエルの核兵器開発情報を内部告発しようとした際、ロバート・マクスウェルがイスラエル大使館に通報し、モサドによる連行を助けた。此の一件は、西暦1,991年10月にマクスウェルが暴露を仄めかした四つの秘密の一つである。
- ジョン・タワー アメリカ上院議員。バックドア機能を付けたPROMISをロスアラモス国立研究所やサンディア国立研究所へ売り、アメリカの原子力機密をモサドに漏洩させる取引を仲介したとされる。西暦1,991年4月5日、アトランティック・サウスイースト航空EV2311便墜落事故で死去した。
PROMIS流出の系譜
- PROMISとインスロー社の契約 西暦1,982年3月、本書の起点。ソフトウェア開発会社インスロー社が、アメリカ司法省から9,600,000ドルの契約を獲得し、パイロットプログラムとして22の検事局へ検察官管理情報システム「PROMIS」のパブリックドメインバージョンを導入した。司法省は初期段階で数百万ドルを支払っている。
- エンハンスドPROMISとソースコードの要求 西暦1,983年、アメリカ司法省が、インスロー社が民間資金で改良した「エンハンスドPROMIS」のソースコードを要求。同社が拒否すると、司法省は之を理由に約2,000,000ドルの支払いを保留し、同社の資金繰りが悪化した。
- 「ベン・オア博士」の訪問 西暦1,983年2月、アメリカ司法省のマディソン・ブリック・ブリュワーがアマーン高官アリ・ベン・メナシェに手配させ、モサドのラフィ・エイタンが偽名でインスロー社を訪問。イスラエル司法省の代表を名乗ってデモを受け、購入すると言いながら購入せず、ソースコード等を盗み出した。
- バックドア機能を付けた改変版 エイタン等の手配により、アメリカ司法省がバックドア機能を付けたPROMISの改変版をモサド経由でイスラエル政府へ提供し始めた。此の提供を仲介したのがロバート・マクスウェルである。
- デゲム・コンピュータズ社 ロバート・マクスウェルが所有していた、イスラエルを拠点とする企業。西暦1,984年、マクスウェルは此の会社を経由してPROMISのマーケティングを開始した。
- 20ヶ所以上への販売 西暦1,984年以降、モサドを通じてKGB・南アフリカ・ロスアラモス国立研究所・ジンバブエ・中国・タイ・トルコ・ベルギー・ポーランド・ニカラグア・コロンビア・サンディア国立研究所・カナダ・オーストラリア・グアテマラ等へ販売され、総額500,000,000ドル以上の利益を上げた。普及した分だけ、モサドは各国の機密情報を収集出来るようになった。
- インスロー社の破産申請 西暦1,985年2月7日、支払いを保留されて資金繰りの悪化したインスロー社が、連邦倒産裁判所に破産申請を行った。
- 連邦倒産裁判所の賠償命令 西暦1,988年1月25日、連邦倒産裁判所がアメリカ司法省に8,000,000ドルと弁護士費用の賠償を命じ、インスロー社が勝訴した。司法省は其の後上訴している。
- 連邦控訴裁判所による破棄 西暦1,991年5月、連邦控訴裁判所がインスロー社の訴えを退け、連邦倒産裁判所の判決を破棄。契約紛争として倒産裁判所の管轄外であるとし、アメリカ司法省は所有権を主張する立場でPROMISを保有していたとして、違反は無いと見做した。
- マクスウェルの脅迫と四つの秘密 西暦1,991年10月、ロバート・マクスウェルがシャブタイ・シャヴィット等モサド上層部に、未払いの400,000,000ポンドの即時支払いを迫った。暴露を仄めかしたのは、PROMISの盗用とバックドア付き販売、モルデハイ・ヴァヌヌ連行の幇助、イラン・コントラ事件関連の秘密資金ルートと東側諸国への武器売却、ジョン・タワーの仲介による原子力機密の漏洩の四つである。
- テネリフェ島のヨットでの射殺 西暦1,991年11月5日、本書の終点。ロバート・マクスウェルが、テネリフェ島(スペイン領カナリア諸島)に停泊中の自身のヨットにて、モサドによって射殺された。脅迫から一ヶ月も経っていなかった。
- 2,700,000,000ポンドの負債 死亡時にロバート・マクスウェルが抱えていた負債。モサドが支払っていないPROMISの代金400,000,000ポンドを含み、銀行融資・投資家借入・貿易債務の積み重ねであった。此の債務は、ポンジ・スキームによって維持されていた。
インスロー社の契約から、テネリフェ島沖のヨットまで──
ロバート・マクスウェルによるPROMIS販売の全過程を一元化。
JPY 200(税込)
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