電子書籍「ニパウイルスの予行演習を実施した内閣府と大西洋評議会一元化」の表紙

ニパウイルスの予行演習を実施した内閣府と大西洋評議会一元化

著者:石田晋一

掲載範囲
西暦1,998年9月29日〜2,024年4月
最新更新日
西暦2,026年2月2日

西暦1,998年9月29日から西暦1,999年5月31日に掛けて、マレーシアのイポー(現マレーシアのペラ州)の豚農場を発端に発生し、ヌグリ・スンビラン州・ペラ州・セランゴール州に広がって計265例の急性脳炎症例・105名死亡を出し、約100万頭超の豚の殺処分により終息したニパウイルスのアウトブレイク、マレーシア産豚を介した西暦1,999年シンガポールでの感染11例・死亡1名と同国のマレーシア産豚輸入全面禁止、西暦2,001年以降のバングラデシュ・インドでの小流行の反復、西暦2,018年4月30日のペリンタマンナ(現インドのケララ州コーリコード県)を起点とするインドのアウトブレイクと医療施設内での人から人への感染・感染23名死亡21名致死率約91%、西暦2,023年3月4日に内閣府科学技術・イノベーション推進事務局がSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第3期「感染症対策の強化」の議論を促進する意図で公開したニパウイルスを想定したパンデミックシナリオ資料、西暦2,024年4月にアメリカのシンクタンク大西洋評議会傘下のバイオディフェンス委員会が発表した報告書「国家生物防衛基本計画:生物学的脅威に対する防衛の為の緊急措置」掲載のニパウイルスを使った架空のバイオテロシナリオまで──実在のニパウイルスのアウトブレイクの記録と、内閣府及び大西洋評議会という2つの機関が公表したニパウイルスのパンデミック想定資料を、年月日単位で一元化した一冊。

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本書について

西暦1,998年9月29日、此の日から西暦1,999年5月31日まで、マレーシアにてニパウイルスのアウトブレイクが発生した。当初は日本脳炎と診断され、蚊媒介の感染症対策が採られたが、効果は無かった。イポー(現在のマレーシアのペラ州)の豚農場を発端として、①ヌグリ・スンビラン州(231例、86名死亡)②ペラ州(28例、15名死亡)③セランゴール州(24例、8名死亡)へと広がり、計265例の急性脳炎症例が確認され、105名が死亡した。人から人への感染が無く、豚から人に感染する事が判り、マレーシア国内の約半数に相当する100万頭以上の豚を殺処分する事により、終息した。

西暦1,999年3月13日、マレーシアから輸出された豚が原因で、シンガポールでニパウイルスの最初の患者が入院した。以降数日間で、複数の屠畜場労働者が発症した。同月17日、ニパウイルスに感染した屠畜場労働者に関し、シンガポールの公衆衛生当局に正式に病気が通知された。同月19日、シンガポールで初めてニパウイルスの死亡者が1名発生した。日本脳炎では無くニパウイルス関連の可能性が確認された為、シンガポール政府は同日マレーシア産豚の輸入を全面禁止とした。計11名の感染が確認されたが、新規感染は此の日以降発生しなかった。又、西暦2,001年以降、バングラデシュやインドで、ニパウイルスの小流行が繰り返される事となった。

西暦2,018年4月30日、ペリンタマンナ(現在のインドのケララ州コーリコード県)でニパウイルスの最初の患者が発生し、インドでのアウトブレイクの始まりとなった。5月5日に同患者がカリカット・メディカル大学病院へ移送されて二次感染を広げ、同日中に死去。5月12日からインドの感染のピークが始まり、カリカット・メディカル大学病院やペランブラ・タラック病院の医療従事者・訪問者を中心にクラスターを形成した。5月20日、国立ウイルス学研究所のNGS(次世代シーケンシング)分析により、今回のアウトブレイクがマレーシア型ニパウイルス(NiV-M)に85%、バングラデシュ型ニパウイルス(NiV-B)に96%一致している事が発表された。5月31日に最後の死者が発生し、感染者23名中死亡者21名・致死率約91%という深刻な被害を齎した。医療施設内での人から人への感染が主で、日本脳炎との誤診により初期診断が遅れた事が指摘された。7月10日、インド政府とケララ州当局がアウトブレイクの終息を宣言した。

西暦2,023年3月4日、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局が、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第3期「感染症対策の強化」の議論において、ワクチン開発や危機管理の議論を促進する事を意図し、ニパウイルスを想定したパンデミックシナリオの資料を公開した。資料は、バングラデシュ観光ツアーに参加した東京の大学生の帰国・発症・死亡を起点に、人口過密のダッカのスラム街での流行、メディアの過熱、内閣感染症危機管理監の記者会見、「ニパ感染症政府現地対策本部」の設置、日本国内での市中感染の拡大に至る一連の経過を、架空の「西暦2,0XX年」のタイムラインとして詳述する。資料中では、マレーシア型・バングラデシュ型と一定割合異なる新種を「ニパウイルスB2」、其れによる疾病を「新型ニパウイルス感染症」と呼称し、基本再生産数・致死率・潜伏期間・感染経路等の想定値が示される。

西暦2,024年4月、アメリカのシンクタンクである大西洋評議会傘下のバイオディフェンス委員会が、「国家生物防衛基本計画:生物学的脅威に対する防衛の為の緊急措置」と題した報告書を発表した。報告書は、アメリカが直面する生物学的脅威への脆弱性を強調する事を意図し、ニパウイルスを使った架空のバイオテロのシナリオを掲載する。シナリオは、西暦2,025年7月4日(独立記念日)に生物兵器による攻撃が行われ、検査によりニパウイルスが原因と確認されたという設定で、アメリカ議会の合同調査公聴会の議長発言という形式を採る。其の中で議長は、COVID-19で露呈した脆弱性の未解消、早期検知の失敗、医療対抗措置の備蓄不足等を「突かれた弱点」として列挙する。

本書は、西暦1,998年のマレーシアでの最初のアウトブレイクを起点とする、シンガポールでの感染、バングラデシュ・インドでの小流行の反復、西暦2,018年インドのケララ州でのアウトブレイクという実在のニパウイルスの流行の記録と、西暦2,023年に内閣府科学技術・イノベーション推進事務局が公開したパンデミック想定資料、及び西暦2,024年に大西洋評議会傘下のバイオディフェンス委員会が発表した報告書掲載のシナリオという、2つの機関が公表したニパウイルスのパンデミック想定資料とを、年月日単位で一元化した資料である。なお、SIPの資料および大西洋評議会の報告書に記載されたシナリオは、いずれも資料自身が明示する通り、ワクチン開発・危機管理の議論や生物学的脅威への備えの検討を目的とした想定上のシナリオであり、実際に発生した出来事の記録ではない。本書は、実在の流行記録と此れ等の想定資料とを区別したまま、各々の記載に忠実に時系列化している。


主要なアウトブレイク・想定資料

  • マレーシアでのアウトブレイク(1,998〜1,999年) 西暦1,998年9月29日から西暦1,999年5月31日まで発生した、本書が記録するニパウイルスの最初のアウトブレイク。当初は日本脳炎と診断された。イポー(現マレーシアのペラ州)の豚農場を発端に、ヌグリ・スンビラン州(231例・86名死亡)・ペラ州(28例・15名死亡)・セランゴール州(24例・8名死亡)へ拡大し、計265例の急性脳炎症例・105名死亡。人から人への感染は無く豚から人へ感染する事が判明し、国内の約半数に当たる100万頭超の豚の殺処分により終息した。
  • シンガポールでの感染(1,999年) 西暦1,999年3月13日、マレーシアから輸出された豚を原因として、シンガポールで最初のニパウイルス患者が入院。複数の屠畜場労働者が発症した。3月17日に公衆衛生当局へ正式通知、3月19日に最初の死亡者1名が発生。同日シンガポール政府はマレーシア産豚の輸入を全面禁止とした。計11名の感染が確認されたが、3月19日以降の新規感染は発生しなかった。
  • バングラデシュ・インドでの小流行(2,001年〜) 西暦2,001年以降、バングラデシュやインドでニパウイルスの小流行が繰り返された。本書は、此の反復する小流行を、西暦2,018年のインドでの大規模なアウトブレイクへと至る経過の一段階として位置付ける。
  • インドのケララ州でのアウトブレイク(2,018年) 西暦2,018年4月30日にペリンタマンナ(現インドのケララ州コーリコード県)で最初の患者が発生。5月5日の患者移送による二次感染、5月12日からのカリカット・メディカル大学病院等での院内クラスター形成を経て、5月18日にピークが終了。5月20日のNGS分析でNiV-Mに85%・NiV-Bに96%一致と判明。5月31日の最後の死者発生をもって、感染23名・死亡21名・致死率約91%。7月10日に終息が宣言された。医療施設内での人から人への感染が主で、日本脳炎との誤診による初期診断の遅れが指摘された。
  • 内閣府SIPのパンデミック想定資料(2,023年) 西暦2,023年3月4日、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局が、SIP第3期「感染症対策の強化」の議論において、ワクチン開発や危機管理の議論を促進する意図で公開した、ニパウイルスを想定したパンデミックシナリオの資料。バングラデシュから帰国した東京の大学生を起点とする架空の「西暦2,0XX年」のタイムラインとして、発症・院内感染・国内市中感染の拡大、内閣感染症危機管理監の記者会見、「ニパ感染症政府現地対策本部」の設置までを詳述する。新種を「ニパウイルスB2」、疾病を「新型ニパウイルス感染症」と呼称し、基本再生産数や致死率等の想定値を示す。
  • 大西洋評議会の報告書掲載シナリオ(2,024年) 西暦2,024年4月、アメリカのシンクタンク大西洋評議会傘下のバイオディフェンス委員会が発表した報告書「国家生物防衛基本計画:生物学的脅威に対する防衛の為の緊急措置」に掲載された、ニパウイルスを使った架空のバイオテロのシナリオ。アメリカが直面する生物学的脅威への脆弱性を強調する意図で作成され、西暦2,025年7月4日に生物兵器攻撃が発生したという設定の下、アメリカ議会の合同調査公聴会の議長発言という形式を採り、COVID-19で露呈した脆弱性の未解消や早期検知の失敗等を「突かれた弱点」として列挙する。

主要な組織・概念

  • ニパウイルス 本書が一貫して扱う人獣共通感染症のウイルス。西暦1,998年のマレーシアでのアウトブレイクで確認され、急性脳炎を引き起こす。本書の記述によれば、年次を重ねるに連れて遺伝子変異を繰り返し、マレーシア型(NiV-M)から、ウイルス性肺炎を引き起こし人から人への感染力を増したバングラデシュ型(NiV-B)へと推移したとされる。
  • NiV-M / NiV-B NiV-Mはマレーシア型ニパウイルス、NiV-Bはバングラデシュ型ニパウイルスの略称。西暦2,018年インドのケララ州のアウトブレイクのNGS分析では、検出されたウイルスがNiV-Mに85%・NiV-Bに96%一致したと記録される。
  • ニパウイルスB2 / 新型ニパウイルス感染症 内閣府SIPのパンデミック想定資料の中で用いられる呼称。マレーシア型と80%、バングラデシュで発生したクラスターのものと85%一致する一方で残りが異なるとされる、想定上の新種ウイルスを「ニパウイルスB2」、其れによって引き起こされる疾病を「新型ニパウイルス感染症」と呼ぶ。いずれも資料内のシナリオ上の名称である。
  • 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局 西暦2,023年3月4日、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第3期「感染症対策の強化」の議論において、ワクチン開発や危機管理の議論を促進する事を意図し、ニパウイルスを想定したパンデミックシナリオの資料を公開した、日本の機関。本書の書名に冠される「内閣府」に当たる。
  • SIP「感染症対策の強化」 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の課題の一つ。其の議論の中で、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局によりニパウイルスを想定したパンデミックシナリオの資料が公開された。資料は、ワクチン開発・危機管理の議論を促進する目的で作成されたものである。
  • 内閣感染症危機管理監 内閣府SIPのパンデミック想定資料のシナリオ内に登場する役職。記者会見を行い、サーベイランス強化・検疫強化・国内患者発生の確認の公表、首相官邸への発生状況の伝達等を担う者として描かれる。
  • 大西洋評議会・バイオディフェンス委員会 大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)はアメリカのシンクタンク。其の傘下のバイオディフェンス委員会が、西暦2,024年4月に報告書「国家生物防衛基本計画:生物学的脅威に対する防衛の為の緊急措置」を発表し、ニパウイルスを使った架空のバイオテロのシナリオを掲載した。本書の書名に冠される「大西洋評議会」に当たる。
  • 国家生物防衛基本計画 大西洋評議会傘下のバイオディフェンス委員会が西暦2,024年4月に発表した報告書「国家生物防衛基本計画:生物学的脅威に対する防衛の為の緊急措置」。アメリカが直面する生物学的脅威への脆弱性を強調する事を意図し、ニパウイルスを使った架空のバイオテロのシナリオを、議会の合同調査公聴会という形式で掲載する。
  • パンデミック想定シナリオ(予行演習) 本書の書名にいう「予行演習」が指す、内閣府SIPの資料と大西洋評議会の報告書に掲載された、ニパウイルスのパンデミック・バイオテロを想定したシナリオ。いずれも資料自身が明示する通り、ワクチン開発・危機管理の議論の促進や生物学的脅威への備えの検討を目的とした想定上のシナリオであり、実際に発生した出来事の記録ではない。本書は実在の流行記録と此れ等の想定資料とを区別して時系列化している。

西暦1,998年9月29日から西暦1,999年5月31日に掛けてマレーシアのイポー(現マレーシアのペラ州)の豚農場を発端に発生し、ヌグリ・スンビラン州・ペラ州・セランゴール州に広がって計265例の急性脳炎症例・105名死亡を出し約100万頭超の豚の殺処分により終息したニパウイルスのアウトブレイク、マレーシア産豚を介した西暦1,999年シンガポールでの感染11例・死亡1名と同国のマレーシア産豚輸入全面禁止、西暦2,001年以降のバングラデシュ・インドでの小流行の反復、西暦2,018年4月30日のペリンタマンナ(現インドのケララ州コーリコード県)を起点とするインドのアウトブレイクと医療施設内での人から人への感染・感染23名死亡21名致死率約91%、西暦2,023年3月4日に内閣府科学技術・イノベーション推進事務局がSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第3期「感染症対策の強化」の議論を促進する意図で公開したニパウイルスを想定したパンデミックシナリオ資料、西暦2,024年4月にアメリカのシンクタンク大西洋評議会傘下のバイオディフェンス委員会が発表した報告書「国家生物防衛基本計画:生物学的脅威に対する防衛の為の緊急措置」掲載のニパウイルスを使った架空のバイオテロシナリオまで──実在のニパウイルスのアウトブレイクの記録と、内閣府及び大西洋評議会という2つの機関が公表したニパウイルスのパンデミック想定資料を、年月日単位で一元化した一冊。

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AUTHOR

石田晋一

歴史データベース「一元化」管理人。
万物の系譜の編纂者であり、電子書籍の著者。
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