電子書籍「コロナウイルスの製造に携わったアンソニー・ファウチ、ラルフ・バリック、石正麗、ピーター・ダザック一元化」の表紙

コロナウイルスの製造に携わった
アンソニー・ファウチ、ラルフ・バリック、
石正麗、ピーター・ダザック一元化

著者:石田晋一

掲載範囲
西暦1,984年〜2,020年1月7日
ページ数
18ページ
最新更新日
西暦2,026年7月22日

特許・論文・資金記録が示す、コロナウイルス製造技術の三十六年──
機能獲得研究とその資金の流れを一元化。

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皇室献上品 高級トイレットペーパー
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本書について

西暦1,984年、アンソニー・ファウチがアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の所長に就任する。その2年後、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のラルフ・バリックが、マウス肝炎ウイルスをモデルとしてコロナウイルス転写の分子機構を特徴付けた論文を発表した。この論文を切っ掛けとして、二人の関係は結ばれる。本書は、この西暦1,986年を実質的な起点として、コロナウイルスを人工的に組み換え、その性質を強める技術がいかにして築かれ、誰の資金によって、どこで実行されたのかを、公開された特許・論文・資金記録に基づいて年月日単位で一元化した記録である。

技術の基礎は、二つの特許に刻まれている。西暦2,001年5月21日、バリックらは、単離した6つのcDNAサブクローンから28,500塩基対のコロナウイルスの完全長感染性クローンを組み立てる手法で特許を申請した(US6593111B2号)。試験管内でゲノムに変異誘発や遺伝子操作を施した上で再構成し、生きた宿主を感染させることが可能になる技術である。翌西暦2,002年4月19日には、その名も「組み換えコロナウイルスの製造方法」と題した特許(US7279327B2号)を申請している。ここでは、構造タンパク質をコードする配列を欠いたレプリコンRNAと、パッケージングシグナルを欠いたヘルパーRNAを許容的な細胞内で共に発現させることで、感染はできるが単独では複製を完了できない粒子を生成する手法が示された。これを実践できるウイルスとして、バリックらはコロナウイルス科が好ましいと記している。

同じ頃、中国側では材料の収集が進んでいた。西暦2,004年、中国科学院武漢ウイルス研究所の石正麗は、SARSの原因を突き止めるべく蝙蝠の洞窟でのウイルス探索を開始する。1週間で30以上の洞窟を巡って見つけた蝙蝠は僅か12匹という日々を経て、彼女は同僚から「蝙蝠女」と呼ばれるようになった。やがて雲南省昆明市晋寧区の石頭洞窟に着目し、5年間の集中的なサンプリングによって数百もの蝙蝠由来コロナウイルスを発見する。その内の数十種はSARSと同じグループに属し、シャーレ内で人間の肺細胞に感染した。西暦2,012年4月には、雲南省墨江哈尼族自治県の銅鉱山でグアノの採掘に従事した鉱夫6名が咳・熱・重い呼吸・血栓を発症して3名が死亡し、その血液サンプルを解析した同研究所はSARSの抗体を検出したが、WHOには報告していない。翌西暦2,013年、同研究所は同じ鉱山の蝙蝠から、後にSARS-CoV-2と96%の遺伝情報の一致を示すことになるコロナウイルス「RaTG13」を分離した。

西暦2,013年、バリックは或る会合で石正麗に、SARSウイルスに最も近い蝙蝠コロナウイルスの一つであるSHC014-CoVのゲノムを譲れないかと尋ねる。石は快くその一部をチャペルヒル校へ送った。バリックの研究チームは逆遺伝学の手法を用い、DNAコードからウイルスを生み出し、複数のウイルスの一部を繋ぎ合わせていった。そして西暦2,015年11月9日、ネイチャー・メディスン誌に発表された論文が、その到達点を示す——SHC014-CoVのスパイクタンパク質と、マウス体内で増殖するよう適応させたSARSウイルスのバックボーンを組み合わせたハイブリッドキメラウイルスが、人間の呼吸器細胞で感染・増殖し、SARSに有効な抗ウイルス薬を回避することが確認されたのである。この間、資金は途切れなかった。西暦2,014年からピーター・ダザックがエコヘルス・アライアンスの主任研究員として6年間のNIHプロジェクトを率い、NIAIDが3,750,000ドルを拠出。バリック自身もNIAIDから46,958,414ドルの資金提供を受けていた。

そして西暦2,018年、計画は更に踏み込む。同年3月、ダザックはアメリカ国防省傘下のDARPAに対し、人間に感染する蝙蝠コロナウイルスの研究費として14,000,000ドルを要請した。武漢ウイルス研究所・デューク・シンガポール国立大学医学部・ノースカロライナ大学らと共に、致死性の高い蝙蝠コロナウイルスのキメラウイルスを実験用マウスに注射する計画である。同月27日には、SARSコロナウイルスの機能獲得研究を行った上で、フリン切断部位をコロナウイルス遺伝子の最適な位置に挿入する提案までもがDARPAに提出された。だがこの要請は「地域社会を危険に貶める」として却下されている。その2ヶ月後、バリックはチャペルヒル校での講演で、次のパンデミックを予測してみせた——偽の抗ウイルス薬の需要急増、個人用防護具メーカーの巨額の利益、世界的な経済崩壊、そして「ウイルスが科学者によって作られたという陰謀論の台頭」までを。

西暦2,019年12月30日の夜、武漢市疾病予防センターから届いた異常肺炎患者のサンプルを前に、石正麗は研究所所長王延軼から調査を依頼される。年が明けた西暦2,020年1月7日までに、彼女の研究グループは新型ウイルスを同定した。後にSARS-CoV-2と名付けられるそのゲノム配列は、雲南省のキクガシラコウモリから特定していたコロナウイルスと96%同一であった——本書が辿ってきた道筋の終着点に、それは現れたのである。なお、SARS-CoV-2そのものの起源については、自然界からの流出と研究に関連した流出の両説が併存し、現在も未解明のままであることを付言しておく。各国の情報機関の評価は分かれ、科学界では疫学的知見から自然由来を支持する見解が多数を占める一方、研究由来の可能性を排除できないとする立場も維持されている。他方で、公的に確定した事実もある。アメリカ議会の特別小委員会による調査を受け、西暦2,025年1月、保健福祉省はエコヘルス・アライアンスとピーター・ダザックを、武漢での機能獲得研究を適切な監督なく促進しNIH助成金の要件に違反したとして、5年間の連邦資金交付停止処分(デバーメント)としている。本書が記録するのは、結論ではなく、公開された記録そのものである。


登場人物

  • アンソニー・ファウチ 西暦1,984年にNIAID(アメリカ国立アレルギー・感染症研究所)の所長へ就任した人物。西暦1,986年のラルフ・バリックのコロナウイルス転写研究を切っ掛けに関係を結んだ。NIAIDは、西暦2,014年から始まるエコヘルス・アライアンスの6年間のプロジェクトに3,750,000ドルを、バリックには人間に感染する新しいコロナウイルスの研究として46,958,414ドルを拠出している。西暦2,015年には中国科学院武漢ウイルス研究所に対し3,700,000ドルの資金提供が行われた。
  • ラルフ・バリック ノースカロライナ大学チャペルヒル校疫学部門教授。西暦2,001年にコロナウイルスの完全長感染性クローンの組み立て手法(US6593111B2号)、西暦2,002年に「組み換えコロナウイルスの製造方法」(US7279327B2号)の特許を申請した。西暦2,013年に石正麗からSHC014-CoVのゲノムを受け取り、逆遺伝学の手法でキメラウイルスを生成。西暦2,015年11月のネイチャー・メディスン誌の論文で、そのキメラウイルスが人間の呼吸器細胞で感染・増殖することを報告した。西暦2,018年5月の講演では、次のパンデミックの様相を具体的に予測している。
  • 石正麗 中国科学院武漢ウイルス研究所の研究員。西暦2,004年から蝙蝠の洞窟でのウイルス探索に傾注し、同僚から「蝙蝠女」と呼ばれた。石頭洞窟での5年間のサンプリングにより数百もの蝙蝠由来コロナウイルスを発見。西暦2,013年、バリックの求めに応じてSHC014-CoVのゲノムを送り、西暦2,015年の論文では共同研究者として名を連ねた。西暦2,019年12月30日、所長王延軼からの依頼で武漢の異常肺炎患者のサンプルを調査し、翌西暦2,020年1月7日までに新型ウイルスを同定した。
  • ピーター・ダザック エコヘルス・アライアンスの主任研究員。西暦2,014年から新型人獣共通コロナウイルスの出現に焦点を当てた6年間のNIHプロジェクトを率いた。西暦2,018年3月、DARPAに対し蝙蝠コロナウイルス研究費14,000,000ドルを要請し、同月27日には機能獲得研究とフリン切断部位の挿入を含む提案を提出したが、いずれも却下されている。西暦2,025年1月、アメリカ議会の特別小委員会の調査を受け、保健福祉省はエコヘルス・アライアンスと同氏を、武漢での機能獲得研究を適切な監督なく促進しNIH助成金の要件に違反したとして5年間の連邦資金交付停止処分とした。
  • 王延軼 中国科学院武漢ウイルス研究所所長。西暦2,019年12月30日の19時、武漢市疾病予防センターから異常肺炎の入院患者2名のサンプルが同研究所へ届いた直後、石正麗に電話で調査を依頼した人物。
  • 墨江の鉱夫6名 西暦2,012年4月、中国雲南省墨江哈尼族自治県の銅鉱山でグアノの採掘に従事した6名。通気性の悪い坑内での作業を続けた結果、咳・熱・重い呼吸・血栓を発症して次々に倒れ、昆明医科大学病院へ搬送された末、高齢の3名が死亡した。血液サンプルを解析した中国科学院武漢ウイルス研究所はSARSの抗体を検出したが、WHOには報告しなかった。翌年、同じ鉱山の蝙蝠からRaTG13が分離されている。

研究と資金の系譜

  • コロナウイルス転写研究とファウチ・バリックの結節 西暦1,986年7月1日、ラルフ・バリックがマウス肝炎ウイルスをモデルとしてコロナウイルス転写の基本的な分子機構を特徴付けた論文を発表した。これを切っ掛けに、西暦1,984年からNIAID所長を務めるアンソニー・ファウチとバリックの関係が結ばれる。本書が記録する系譜の起点。
  • 完全長感染性クローンの特許(US6593111B2号) 西暦2,001年5月21日申請。単離した6つのcDNAサブクローンから28,500塩基対のコロナウイルスの完全長感染性クローンを組み立てる手法。試験管内でゲノムに変異誘発や遺伝子操作を施した上で再構成し、生きた宿主を感染させることが可能になった。
  • 「組み換えコロナウイルスの製造方法」特許(US7279327B2号) 西暦2,002年4月19日申請。構造タンパク質配列を欠いたレプリコンRNAと、パッケージングシグナルを欠いたヘルパーRNAを許容的な細胞内で共に発現させ、感染はできるが単独では複製を完了できないニドウイルス粒子を生成する手法。実践できるウイルスとして、コロナウイルス科が好ましいとされた。
  • 蝙蝠洞窟でのウイルス探索と石頭洞窟 西暦2,004年、石正麗がSARSの原因究明のため蝙蝠の洞窟でのウイルス探索を開始。同年12月には3種類のキクガシラコウモリからSARSウイルスの抗体を検出した。雲南省の石頭洞窟で5年間の集中的サンプリングを行い、数百もの蝙蝠由来コロナウイルスを発見。その内数十種はSARSと同じグループに属し、シャーレ内で人間の肺細胞に感染した。
  • 墨江の鉱山とRaTG13 西暦2,012年4月、雲南省墨江哈尼族自治県の銅鉱山でグアノを採掘した鉱夫6名が発症し3名が死亡。血液サンプルからSARSの抗体が検出されたが、WHOには報告されなかった。翌西暦2,013年、中国科学院武漢ウイルス研究所は同じ鉱山の蝙蝠から、SARS-CoV-2と96%の遺伝情報の一致を示すコロナウイルス「RaTG13」を分離している。
  • SHC014-CoVゲノムの提供とキメラウイルスの生成 西暦2,013年、バリックが或る会合で石正麗にSHC014-CoVのゲノムを求め、石はその一部をチャペルヒル校へ送った。バリックの研究チームは逆遺伝学の手法でDNAコードからウイルスを生み出し、スパイクタンパク質の遺伝子を既存のSARSウイルスのコピーに挿入してキメラウイルスを生成した。
  • エコヘルス・アライアンスを経由した資金 西暦2,009年10月からUSAIDがエコヘルス・アライアンス経由で武漢ウイルス研究所への再委託契約に1,110,000ドルを提供。西暦2,014年からはピーター・ダザックが主任研究員を務める6年間のNIHプロジェクトにNIAIDが3,750,000ドルを拠出した。「蝙蝠・コロナウイルスの出現リスクに関する評価」の総額3,700,000ドルのうち599,000ドルが同研究所へ流れている。
  • 武漢の国立バイオセーフティ研究所とBSL-4 西暦2,011年、フランス政府が武漢ウイルス研究所と共同でBSL-4レベル実験施設の建設を開始し、技術供与と資金提供を行った。だが同研究所は次第にフランス人科学者から距離を置き、1名を除き足を運ばなくなる。西暦2,014年に300,000,000元で国立バイオセーフティ研究所が設立され、西暦2,015年2月にBSL-4レベル実験室が稼働を開始した。
  • ネイチャー・メディスン誌のキメラウイルス論文 西暦2,015年11月9日、バリックと石正麗を含む研究チームの論文が発表された。SHC014-CoVのスパイクタンパク質と、マウス体内で増殖するよう適応させたSARSウイルスのバックボーンによるハイブリッドキメラウイルスが、人間の呼吸器細胞で感染・増殖し、SARSに有効な抗ウイルス薬を回避することが示された。マウスに病気を引き起こしたが、致死的ではなかった。
  • DARPAへのDEFUSE提案と却下 西暦2,018年3月、ダザックがDARPAへ蝙蝠コロナウイルス研究費14,000,000ドルを要請。同月27日には、機能獲得研究を行った上でフリン切断部位をコロナウイルス遺伝子の最適な位置に挿入する提案が提出された。この要請は「地域社会を危険に貶める」として却下されている。同年5月29日、バリックはチャペルヒル校の講演で、次のパンデミックの様相を具体的に予測した。
  • SARS-CoV-2の同定 西暦2,019年12月30日、武漢市疾病予防センターから届いたサンプルを受け、石正麗が所長王延軼の依頼で調査を開始。西暦2,020年1月7日までにPCR・全ゲノム解析・抗体検査・人間の肺細胞への感染実験によって新型ウイルスが同定された。そのゲノム配列は、雲南省のキクガシラコウモリで特定されたコロナウイルスと96%同一であった。

二つの特許から、石頭洞窟、キメラウイルス論文、DEFUSE提案へ──
公開記録が残したコロナウイルス研究の系譜を一元化。

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AUTHOR

石田晋一

歴史データベース「トキジク」管理人。
万物の系譜の編纂者であり、電子書籍の著者。
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