人体にマイクロチップを埋め込む
ID2020プロジェクト
一元化
西暦2,030年迄に、全人類へ一意のIDを──
ID2020が構想された十六年間を一元化。
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本書について
西暦2,007年、バングラデシュ政府のデジタル変革プログラムである「a2i(アクセス・トゥー・インフォメーション)」が設立された。資金を提供したのは、UNDP(国連開発計画)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、USAIDの3者である。本書は、此のプログラムを起点として、人体にマイクロチップを埋め込み、全人類に一意のデジタルIDを与えようとする「ID2020」の構想が形を成してゆく十六年の歩みを、年月日単位で一元化した記録である。
西暦2,012年、ビル・ゲイツが同僚と共にマサチューセッツ工科大学のラボを訪れる。ゲイツ達は、同大学化学工学科及び生物工学科教授ロバート・ランガーに対し、女性がオン・オフを切り替えて何年も使用出来る避妊法を開発する事は可能かどうかを尋ねた。ランガーは、西暦1,990年代に同僚のマイケル・シーマ、ジョン・サンティーニと発明し、マサチューセッツ工科大学からスピンアウトしたマイクロチップス社(アメリカのマサチューセッツ州ミドルセックス郡レキシントン)にライセンス供与した制御放出型マイクロチップ技術で解決出来るかも知れない、と回答した。
西暦2,014年、マイクロチップス社がビル&メリンダ・ゲイツ財団から資金提供を受け、リモコンでオン・オフ可能な無線インプラントの開発に着手する。最長16年間使用出来る様設計された20×20×7mmのデバイスで、同社は翌年に前臨床試験を行ない、西暦2,018年に市場へ出す事が目標であるとした。デバイスは臀部・上腕・腹部の皮下に埋め込む事を想定しており、既に多くの避妊薬で使用されているホルモンであるレボノルゲストレルを30μg放出する。16年分のレボノルゲストレルは、デバイス内の15mm幅の、マイクロチップ上のリザーバーに収められている。同社はリザーバーに用いる気密性の有るチタンと白金のシールを発明した。内部バッテリーからの電流をシールに通す事で一時的に溶け、適量のレボノルゲストレルが毎日放出される仕組みである。同社は、FDA(アメリカ食品医薬品局)に申請する前に、チップの無線データ通信をプライベート且つ安全に保つ為の暗号化等、多くの作業が残っているとした。
西暦2,016年5月、ビル・ゲイツ主導で、予防接種を通じて全人類にRFIDマイクロチップを埋め込み、国際的なデジタル認証システムを構築する事を目的とする非営利団体「ID2020」が、ニューヨーク市を拠点に設立される。設立に加わったのは、マイクロソフト、アクセンチュア、ロックフェラー財団、GAVIアライアンス、そしてデザインコンサルティング会社アイディオであった。ID2020は、西暦2,030年迄に世界中の全ての人々へ、生体認証で紐付けられた、公共及び私的に利用可能なデジタルIDを提供し、最終的には、全ての人々がデジタルIDと機械読み取りが可能な生体認証によって一意に識別される巨大なデータベースを相互接続し、其の人に関する全ての情報が世界中の何処からでも簡単に検索出来る様にする事が目標であるとした。デジタルIDは、国連・世界銀行・WEFにより、世界経済への包摂と、先進国に於ける利便性を提供する手段との名目で推進された。
西暦2,016年5月20日、国連本部にて「第1回ID2020サミット」が開催される。1,500,000,000名の身分証明を持たない人々を含む全世界の人々に、固有のデジタルIDを発行する方法に就いて話し合われた。参加者は400名以上で、150社以上の民間企業、11の国連機関、非営利団体、各国政府、学界の代表が名を連ねている。身分証が無い人々の生活の人道的課題や、関連する技術革新に就いて論じられ、拡大の機会と其れに対する制約が明確にされた。
西暦2,017年6月19日、国連本部にて約300名が参加して「第2回ID2020サミット」が開催される。テーマは「変革の為のプラットフォーム」であり、デジタルIDを通じて生活の改善を目指す公的機関・民間組織のコンソーシアムという名目で「ID2020アライアンス」が発足した。アクセンチュアは、ID2020アライアンスに1,000,000ドルを投資すると発表する。又アクセンチュアは、マイクロソフト、及びアクセンチュアとマイクロソフトの合弁会社であるアバナードと共同で、ID2020の一環として開発した、ブロックチェーンと生体認証技術を活用した認証システムのプロトタイプのデモを行なった。此のプロトタイプは「Microsoft Azure」上で稼働し、個人情報へのアクセスは、個人の承認を得た者に付与される様設計されている。非中央集権型の分散型データベースを採用している為、中央機関が介在する事無く、事前の承認を得た複数の関係者による維持管理が可能であり、通常、個人の認証データはブロックチェーンの外には持ち出せないが、個人の事前承諾により、オフチェーンの既存システムとの連携も可能であるとした。
西暦2,019年9月19日、ID2020アライアンスがニューヨークにて年次サミットを開催し、バングラデシュ、GAVIアライアンス、各国政府、学界の代表、人道支援分野の新たなパートナーの協力の下にデジタルIDプログラムを開始する事を発表する。ID2020アライアンスは、a2iとDGHS(バングラデシュ保健サービス総局)と提携し、生体認証とブロックチェーンを組み合わせたデジタルIDプログラムを立ち上げた。内容は、ワクチン接種がデジタルIDのプラットフォームとして機能する機会を活かし、既存のワクチン接種及び出生登録業務を利用して、新生児に持続的でポータブルな生体認証連携型のデジタルIDを提供する、というものであった。
西暦2,020年5月21日、マスターカードがID2020アライアンスへの参加を発表する。西暦2,021年1月29日には、ドイツ議会がID2020の実施を批准した。ドイツ国民の200項目以上の情報を中央集権的に電子データとして収集し、政府機関・警察・民間セクターがアクセス可能とするものである。一方、同年3月7日、スイスではデジタルIDを導入しID2020の管理を民間セクターに委託する件に関する国民投票が行われ、否決された。
西暦2,022年6月1日、日本では震災でペットの迷子が増えた事を名目に「改正動物愛護管理法」が施行され、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫に就いて、所有者の情報を記録したマイクロチップの装着が義務化される。飼育者に対しては努力義務となった。マイクロチップは直径2.12mm・長さ13.3mm程度で、読み取り機から発信された電波を受け取るコイルアンテナと、発生した電磁誘導電波を送り返すICを内蔵したカプセル状の物であり、専用の注入器を用いて、左頚部の中央部・背中の肩甲骨間よりやや頭側の正中線上等の皮下に埋め込む。読み取り機は15桁の識別番号を読み取るが、此の番号は、データベースに登録された飼育者の名前や住所等の情報と紐付けられている。
西暦2,022年8月5日、カナダ政府がデジタル戦略「デジタルアンビション2022」を公開する。掲げられたのは、技術と運用の卓越性、データ対応のデジタルサービスとプログラム、即戦力のデジタル戦略とポリシー、資金調達・人材・文化の構造的進化の4点であった。二つ目を実現する為にカナダ政府は、WEFが主導し、個人・政府・旅行業界等が旅行者の信頼性を評価して乗客の処理を最適化し、シームレスな旅行を実現する「KTDI(ノウン・トラベラー・デジタル・アイデンティティ)」とのパートナーシップに基づき、デジタルIDプログラムの開発に取り組んでいた。避妊インプラントの相談から始まった技術が、予防接種と出生登録に接続され、遂には国家のデジタル戦略と国民投票の争点になる——本書は、其の十六年の全軌跡を一冊に束ねている。
登場人物
- ビル・ゲイツ 本書の中心人物。西暦2,012年、同僚と共にマサチューセッツ工科大学のラボを訪れ、ロバート・ランガーに対し、女性がオン・オフを切り替えて何年も使用出来る避妊法の開発が可能かどうかを尋ねた。西暦2,016年5月には、予防接種を通じて全人類にRFIDマイクロチップを埋め込み、国際的なデジタル認証システムを構築する事を目的とする非営利団体「ID2020」の設立を主導した。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、a2i とマイクロチップス社の双方に資金を提供している。
- ロバート・ランガー マサチューセッツ工科大学化学工学科及び生物工学科教授。西暦2,012年、ビル・ゲイツ達の問いに対し、西暦1,990年代にマイケル・シーマ、ジョン・サンティーニと発明し、マサチューセッツ工科大学からスピンアウトしたマイクロチップス社にライセンス供与した制御放出型マイクロチップ技術で解決出来るかも知れない、と回答した。
- マイケル・シーマ 西暦1,990年代、ロバート・ランガー、ジョン・サンティーニと共に制御放出型マイクロチップ技術を発明した人物。此の技術がマイクロチップス社へライセンス供与され、後の無線インプラント開発の土台となった。
- ジョン・サンティーニ 西暦1,990年代、ロバート・ランガー、マイケル・シーマと共に制御放出型マイクロチップ技術を発明した人物。此の技術がマイクロチップス社へライセンス供与され、後の無線インプラント開発の土台となった。
主要な組織・計画
- a2i(アクセス・トゥー・インフォメーション) バングラデシュ政府のデジタル変革プログラム。西暦2,007年、UNDP(国連開発計画)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、USAIDからの資金提供を受けて設立された。西暦2,019年9月19日には、DGHS(バングラデシュ保健サービス総局)と共にID2020アライアンスと提携し、新生児への生体認証連携型デジタルID提供プログラムを担う事となる。
- マイクロチップス社 ロバート・ランガー達の制御放出型マイクロチップ技術のライセンス供与を受け、マサチューセッツ工科大学からスピンアウトした企業。所在地はアメリカのマサチューセッツ州ミドルセックス郡レキシントン。西暦2,014年、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から資金提供を受け、リモコンでオン・オフ可能な無線インプラントの開発に着手し、翌年の前臨床試験と西暦2,018年の市場投入を目標とした。
- 無線インプラント マイクロチップス社が西暦2,014年に開発へ着手した、最長16年間使用出来る様設計された20×20×7mmのデバイス。臀部・上腕・腹部の皮下への埋め込みを想定し、避妊薬で使用されるホルモンであるレボノルゲストレルを30μg放出する。16年分のホルモンはデバイス内の15mm幅のリザーバーに収められ、気密性の有るチタンと白金のシールに内部バッテリーからの電流を通す事で一時的に溶け、適量が毎日放出される仕組みである。
- ID2020 西暦2,016年5月、ビル・ゲイツ主導でニューヨーク市を拠点に設立された非営利団体。マイクロソフト、アクセンチュア、ロックフェラー財団、GAVIアライアンス、アイディオが設立に加わった。予防接種を通じて全人類にRFIDマイクロチップを埋め込み、国際的なデジタル認証システムを構築する事を目的とし、西暦2,030年迄に世界中の全ての人々へ生体認証で紐付けられたデジタルIDを提供する事を目標に掲げた。
- 第1回ID2020サミット 西暦2,016年5月20日、国連本部にて開催された会合。1,500,000,000名の身分証明を持たない人々を含む全世界の人々に、固有のデジタルIDを発行する方法が話し合われた。参加者は400名以上で、150社以上の民間企業、11の国連機関、非営利団体、各国政府、学界の代表が名を連ね、拡大の機会と其れに対する制約が明確にされた。
- 第2回ID2020サミット 西暦2,017年6月19日、国連本部にて約300名が参加して開催された会合。テーマは「変革の為のプラットフォーム」で、此処で「ID2020アライアンス」が発足した。アクセンチュアが、マイクロソフト及びアバナードと共同で、ブロックチェーンと生体認証技術を活用した認証システムのプロトタイプのデモを行なっている。
- ID2020アライアンス 西暦2,017年6月19日に発足した、デジタルIDを通じて生活の改善を目指す公的機関・民間組織のコンソーシアム。アクセンチュアが1,000,000ドルの投資を発表した。西暦2,019年9月19日にはバングラデシュでのデジタルIDプログラムを開始し、西暦2,020年5月21日にはマスターカードが参加を表明した。
- アクセンチュア ID2020の設立に加わった企業。西暦2,017年6月19日の第2回ID2020サミットで、ID2020アライアンスへ1,000,000ドルを投資すると発表した。同じ場で、マイクロソフト、及びマイクロソフトとの合弁会社アバナードと共同で、認証システムのプロトタイプのデモを行なっている。
- マイクロソフト ID2020の設立に加わった企業。西暦2,017年6月19日、アクセンチュア及びアバナードと共同で、ID2020の一環として開発した認証システムのプロトタイプをデモした。同プロトタイプは自社のクラウド「Microsoft Azure」上で稼働する。
- アバナード アクセンチュアとマイクロソフトの合弁会社。西暦2,017年6月19日の第2回ID2020サミットにて、両社と共同で、ブロックチェーンと生体認証技術を活用した認証システムのプロトタイプのデモを行なった。
- ロックフェラー財団 西暦2,016年5月、マイクロソフト・アクセンチュア・GAVIアライアンス・アイディオと共にID2020の設立に加わった財団。
- GAVIアライアンス 西暦2,016年5月のID2020設立に加わった機関。西暦2,019年9月19日には、バングラデシュ・各国政府・学界の代表・人道支援分野の新たなパートナーと共に、ID2020アライアンスのデジタルIDプログラム開始に協力する立場となった。
- 認証システムのプロトタイプ 西暦2,017年6月19日にデモされた、ブロックチェーンと生体認証技術を活用した仕組み。「Microsoft Azure」上で稼働し、個人情報へのアクセスは個人の承認を得た者に付与される。非中央集権型の分散型データベースを採用し、中央機関が介在する事無く、事前の承認を得た複数の関係者による維持管理が可能で、個人の事前承諾によりオフチェーンの既存システムとの連携も可能であるとされた。
- バングラデシュのデジタルIDプログラム 西暦2,019年9月19日、ID2020アライアンスが a2i と DGHS(バングラデシュ保健サービス総局)と提携して立ち上げた、生体認証とブロックチェーンを組み合わせたプログラム。ワクチン接種がデジタルIDのプラットフォームとして機能する機会を活かし、既存のワクチン接種及び出生登録業務を利用して、新生児に持続的でポータブルな生体認証連携型のデジタルIDを提供するものであった。
- ドイツ議会の批准 西暦2,021年1月29日、ドイツ議会がID2020の実施を批准した出来事。ドイツ国民の200項目以上の情報を中央集権的に電子データとして収集し、政府機関・警察・民間セクターがアクセス可能とするものであった。
- スイスの国民投票 西暦2,021年3月7日、スイスにて行われた、デジタルIDを導入しID2020の管理を民間セクターに委託する件に関する国民投票。結果は否決であった。
- 改正動物愛護管理法 西暦2,022年6月1日、震災でペットの迷子が増えた事を名目に施行された日本の法律。ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫へのマイクロチップ装着を義務化し、飼育者に対しては努力義務とした。チップは直径2.12mm・長さ13.3mm程度のカプセル状で、コイルアンテナとICを内蔵し、皮下に埋め込まれた15桁の識別番号が、データベース上の飼育者の名前や住所等と紐付けられる。
- デジタルアンビション2022 西暦2,022年8月5日にカナダ政府が公開したデジタル戦略。技術と運用の卓越性、データ対応のデジタルサービスとプログラム、即戦力のデジタル戦略とポリシー、資金調達・人材・文化の構造的進化の4点を掲げた。
- KTDI(ノウン・トラベラー・デジタル・アイデンティティ) WEFが主導する枠組み。個人・政府・旅行業界等が旅行者の信頼性を評価し、乗客の処理を最適化してシームレスな旅行を実現するもので、カナダ政府は「デジタルアンビション2022」の二つ目の柱を実現する為、此れとのパートナーシップに基づきデジタルIDプログラムの開発に取り組んでいた。
避妊インプラントから新生児のデジタルIDまで──
ゲイツ財団・ロックフェラー財団・WEFが繋がる全軌跡を一元化。
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