ベクテル社の悪行により汚染水・腐敗水を飲まされるに至ったコチャバンバ市民一元化
SEMAPA(コチャバンバ市上下水道公社)の設立を起点に、ボリビアの累積債務問題を背景としたIMF・世界銀行・ADB(アジア開発銀行)・IDB(米州開発銀行)による国際融資条件としての公営企業民営化要求と世界銀行のフルコスト・プライシング採用条件及び6,000,000ドル多国間債務免除の提示、フランスのスエズ社へのエル・アルト上下水道事業30年委託契約締結、ベクテル社の子会社アグアス・デル・トゥナリ社へのSEMAPA売却とダム建設を理由とした貧困層10%・富裕層200%の水道料金値上げ・料金未払い者への給水停止・井戸水値上げ・雨水タンクからの料金徴収、浄水されていない水・汚染水・腐敗水を飲まされた貧困層からの大量の死者、靴工場労働者オスカル・オリビエラを代表とする水と生活を守る市民連合の結成、アグアス・デル・トゥナリ社の撤退を求めるゼネストとコチャバンバ市庁舎襲撃及び「人民の水」の看板掲示、IMF・世界銀行・IDBの圧力による第75代ボリビア大統領ウゴ・バンセル・スアレスの戒厳令発令と9名の死者・100名の重傷者、ボリビア政府と水と生活を守る市民連合の協定書締結及び暫定理事会設置とアグアス・デル・トゥナリ社の事業撤退、ベクテル社の世界銀行グループICSID(投資紛争解決国際センター)への提訴と契約破棄料25,000,000ドル要求、41ヶ国300以上の市民運動団体・労働組合団体によるICSID陳情書提出、京都での第3回世界水フォーラムとエボ・モラレスのパネル討論会場乱入、エボ・モラレスのボリビア大統領当選とアグアス・デル・トゥナリ社の賠償請求放棄に至る迄——
SEMAPA設立から38年間に亘る、コチャバンバ水紛争の全過程を年月日単位で追跡した一冊。
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本書について
西暦1,967年7月12日、ボリビアのコチャバンバにて、①飲料水②下水③雨水排水の自治体サービスを担う「SEMAPA(コチャバンバ市上下水道公社)」が設立された。西暦1,993年、ボリビアの累積債務問題を解決する為、①IMF②世界銀行③ADB(アジア開発銀行)④IDB(米州開発銀行)が、国際融資の条件として公営企業の民営化を求めた。民営化を促す理由としては、適切な料金で水道配管の敷設や水の供給を行う事が可能になる事、水道事業の民営化によって水利権の売買を自由化する事が水の効率的な利用を促し飲料水の不足を解消する事、公営事業の民営化が公共部門の財政収支を改善させる事の3点が挙げられた。世界銀行は、SEMAPAへの融資に関し①民営化②水の採取・集積・処理・配分及び廃水の回収・処理・処分に関するコストを利用者が全額負担するフルコスト・プライシングの採用、を条件とし、更に民営化すれば6,000,000ドルの多国間債務を免除するとした。此の時のコチャバンバの水道普及率は56%で、ボリビア国内の4割弱に相当する貧困層は、毎日の飲み水も満足に手に入れる事が出来ない状況であった。
西暦1,997年、ボリビア政府が、世界銀行の要求に従い、エル・アルト(ラパス県)の上下水道事業公社を売却し、フランスのスエズ社に30年間委託する契約を締結した。同年、コチャバンバ市の水道事業が、市からSEMAPAに移管された。西暦1,999年4月5日、靴工場労働者でコチャバンバ県工場労働組合代表のオスカル・オリビエラが集団を率い、コチャバンバでデモを行い、初代社会主義運動党党首エボ・モラレスもデモに参加していた。同年9月、ボリビア政府が、世界銀行の監視下で、事前に「飲料水及び衛生法」という法律を制定した上で、SEMAPAをベクテル社の子会社アグアス・デル・トゥナリ社に売却した。
アグアス・デル・トゥナリ社は直ぐに、サービス向上の為のダム建設を理由に、水道料金を市民の所得に応じ貧困層が10%・富裕層は200%値上げした。同社は水道料金を支払わない者に対しては水の供給を停止し、更に管理下にある安い料金であった井戸水の価格も引き上げ、雨水を溜めるタンクからも料金を徴収した。又、同社は新たに4本の井戸の掘削を計画したが、新しい井戸が地下水を減少させ灌漑施設への水の供給が滞る事を懸念した農民が反発した。結果、1日2ドル以下で生活する貧困層を中心に水道料金の支払いが出来ず、食事も満足に摂れない家庭が続出した。そういった家庭は、止む無く浄水されていない水・汚染水・腐敗水を飲む事しか出来ず、死者が大量に発生した。
西暦1,999年10月12日、ボリビアのコチャバンバ県南部の市民の呼び掛けにより、SEMAPAの民営化反対集会が開催され、①労働組合②学生③市民④農業団体により「水と生活を守る市民連合」が結成され、靴工場労働者でコチャバンバ県工場労働組合代表のオスカル・オリビエラが代表に選ばれた。同年12月、コチャバンバにて、アグアス・デル・トゥナリ社による水道料金値上げ阻止を訴える抗議活動が開始された。
西暦2,000年4月5日、コチャバンバにて、アグアス・デル・トゥナリ社の撤退を求めるゼネストが発生した。コチャバンバの官庁周辺には労働者・農民・学生等が集まっていたが、暴徒化した一部が同社の事務所へ向かい、看板を引き裂き、代わりに「人民の水」という看板を掲げた。同月7日、水と生活を守る市民連合の支持者達が、アグアス・デル・トゥナリ社が撤退する迄道路を封鎖し中央広場を占拠する事を決意し、地元警察は此の指導者達の逮捕に乗り出した。同月8日、コチャバンバ市庁舎が市民により襲撃された。ボリビア政府は、①IMF②世界銀行③IDBの圧力により、同社に対する抗議活動を「麻薬ギャングの扇動」であるとして戒厳令を発令し、ボリビア軍が出動してテレビ・ラジオ放送を占拠し、抗議活動が全国に広がらない様マスメディアからの情報を遮断した。同月9日、これまで穏健派市民しか取り合わなかったボリビア政府が態度を変え、水と生活を守る市民連合との話し合いに応じてオスカル・オリビエラとの会談が実現し、オリビエラはアグアス・デル・トゥナリ社との契約の白紙撤回を要求した。
西暦2,000年4月10日、ボリビア政府と水と生活を守る市民連合との間で協定書が締結され、①コチャバンバ市②水と生活を守る市民連合③SEMAPAから各々2名ずつを出し合った6名で暫定理事会を設置する事が取り決められ、ボリビア政府はアグアス・デル・トゥナリ社との契約解除を約束した。同月12日、アグアス・デル・トゥナリ社がボリビアからの事業撤退を発表し、再度SEMAPAが水道事業サービスを担う事となったが、コチャバンバ市民は①水道管更新費②水道管開発費③水道配管設備の工事代金の借金を背負う事となった。同月20日、第75代ボリビア大統領ウゴ・バンセル・スアレスが戒厳令を解除し、国民に謝罪した。一連のアグアス・デル・トゥナリ社に対する抗議活動では、9名の死者と100名の重傷者が発生し、数十名が逮捕された。
西暦2,001年11月、ベクテル社が、世界銀行グループのICSID(投資紛争解決国際センター)に提訴し、ボリビア政府を相手取り契約破棄料25,000,000ドルの賠償金を要求した。西暦2,002年8月29日、此の提訴を受け、コチャバンバの抗議活動グループや各国の市民運動グループが、ICSIDの紛争審理と関係文書を公開する事を要求する陳情書を提出した。陳述書では「世界銀行・ICSIDはベクテル・ボリビア政府間の紛争に関与すべきではない。世界銀行は債務軽減と水道事業拡大の為の融資条件としてコチャバンバの水道事業民営化をボリビア政府に強制した当事者だからである」という主張が為され、41ヶ国300以上の市民運動団体・労働組合団体が支持を表明した。西暦2,003年3月16日、ユネスコ・世界銀行等が中心となって水分野での研究等を行う為に設立された国際シンクタンク「世界水会議」主催の「第3回世界水フォーラム」が、京都にて同月23日迄の日程で開催された。エボ・モラレスはパネル討論会場に乱入し、南米に於けるグローバル水企業の横暴について暴露し、結果、グローバル水企業と国際金融機関への抗議活動が、京都・大阪のフォーラム会場の内外で発生した。
西暦2,005年12月18日、ボリビア大統領選が行われ、エボ・モラレスが当選し、ボリビア史上初の先住民出身の大統領となった。これを機に、アグアス・デル・トゥナリ社は、ボリビア政府への契約破棄料の賠償請求を放棄した。本書は、此の38年に亘る、SEMAPA(コチャバンバ市上下水道公社)の設立を起点とする、IMF・世界銀行・ADB・IDBによる公営企業民営化要求と世界銀行のフルコスト・プライシング採用条件・スエズ社へのエル・アルト上下水道事業委託・ベクテル社の子会社アグアス・デル・トゥナリ社へのSEMAPA売却と水道料金値上げ・浄水されていない水及び汚染水・腐敗水を飲まされた貧困層からの大量の死者・水と生活を守る市民連合の結成・アグアス・デル・トゥナリ社の撤退を求めるゼネストとコチャバンバ市庁舎襲撃・IMF世界銀行IDBの圧力によるウゴ・バンセル・スアレスの戒厳令発令と9名の死者・ボリビア政府と市民連合の協定書締結とアグアス・デル・トゥナリ社の事業撤退・ベクテル社のICSID提訴と契約破棄料25,000,000ドル要求・41ヶ国300以上の団体によるICSID陳情書提出・京都での第3回世界水フォーラムとエボ・モラレスの乱入を経て、エボ・モラレスのボリビア大統領当選とアグアス・デル・トゥナリ社の賠償請求放棄に至る迄の全過程を、年月日単位で記録した年表である。
登場人物
- SEMAPA(コチャバンバ市上下水道公社) 本書の中心となる組織。西暦1,967年7月12日、ボリビアのコチャバンバにて、①飲料水②下水③雨水排水の3つの自治体サービスを担う公社として設立された。西暦1,997年にコチャバンバ市の水道事業が市から移管され、西暦1,999年9月には世界銀行の監視下でベクテル社の子会社アグアス・デル・トゥナリ社へ売却されたが、西暦2,000年4月の同社撤退後、再び水道事業サービスを担う事となった。
- IMF・世界銀行・ADB・IDB 西暦1,993年、ボリビアの累積債務問題の解決を名目に、国際融資の条件として公営企業の民営化を求めた4つの国際金融機関。中でも世界銀行は、SEMAPAへの融資条件として民営化とフルコスト・プライシングの採用を挙げ、民営化すれば6,000,000ドルの多国間債務を免除するとした。西暦2,000年4月8日にはIMF・世界銀行・IDBの圧力がボリビア政府の戒厳令発令に繋がった。
- ベクテル社 アメリカの建設・エンジニアリング企業。子会社のアグアス・デル・トゥナリ社を通じ、西暦1,999年9月にSEMAPAを買収した。西暦2,001年11月、ボリビア政府を相手取り、世界銀行グループのICSID(投資紛争解決国際センター)に契約破棄料25,000,000ドルの賠償金を要求して提訴したが、西暦2,005年12月のエボ・モラレスの大統領当選を機に賠償請求を放棄した。
- アグアス・デル・トゥナリ社 ベクテル社の子会社。西暦1,999年9月にSEMAPAを買収し、直後にダム建設を理由として水道料金を貧困層10%・富裕層200%値上げした。料金未払い者への給水停止、安価であった井戸水の値上げ、雨水を溜めるタンクからの料金徴収を行い、貧困層を中心に汚染水・腐敗水を飲まざるを得ない家庭を続出させた。西暦2,000年4月12日、ボリビアからの事業撤退を発表した。
- オスカル・オリビエラ 靴工場労働者で、コチャバンバ県工場労働組合代表。西暦1,999年4月5日にコチャバンバでデモを率い、同年10月12日に結成された「水と生活を守る市民連合」の代表に選ばれた。西暦2,000年4月9日にはボリビア政府との会談に臨み、アグアス・デル・トゥナリ社との契約の白紙撤回を要求した。
- エボ・モラレス 初代社会主義運動党党首。西暦1,999年4月5日のコチャバンバのデモに参加し、西暦2,003年3月の京都での第3回世界水フォーラムではパネル討論会場に乱入し、南米に於けるグローバル水企業の横暴を暴露した。西暦2,005年12月18日のボリビア大統領選で当選し、ボリビア史上初の先住民出身の大統領となった。
- 水と生活を守る市民連合 西暦1,999年10月12日、コチャバンバ県南部の市民の呼び掛けにより、①労働組合②学生③市民④農業団体によって結成された組織。オスカル・オリビエラを代表とし、アグアス・デル・トゥナリ社による水道料金値上げ阻止の抗議活動を展開した。西暦2,000年4月10日にはボリビア政府と協定書を締結し、暫定理事会に2名を送り出した。
- ウゴ・バンセル・スアレス 第75代ボリビア大統領。西暦2,000年4月8日、IMF・世界銀行・IDBの圧力により、アグアス・デル・トゥナリ社に対する抗議活動を「麻薬ギャングの扇動」であるとして戒厳令を発令した。同月20日に戒厳令を解除し、国民に謝罪した。一連の抗議活動では9名の死者と100名の重傷者が発生し、数十名が逮捕された。
- ICSID(投資紛争解決国際センター) 世界銀行グループの国際機関。西暦2,001年11月、ベクテル社がボリビア政府を相手取り、契約破棄料25,000,000ドルの賠償金を要求して提訴した先。西暦2,002年8月29日には、コチャバンバの抗議活動グループや各国の市民運動グループから、ICSIDの紛争審理と関係文書の公開を求める陳情書が提出され、41ヶ国300以上の団体が支持を表明した。
- 第3回世界水フォーラム 西暦2,003年3月16日から23日迄、京都で開催された会議。ユネスコ・世界銀行等が中心となって水分野での研究等を行う為に設立された国際シンクタンク「世界水会議」が主催した。エボ・モラレスがパネル討論会場に乱入してグローバル水企業の横暴を暴露し、グローバル水企業と国際金融機関への抗議活動が京都・大阪のフォーラム会場の内外で発生した。
SEMAPA(コチャバンバ市上下水道公社)の設立を起点に、ボリビアの累積債務問題を背景としたIMF・世界銀行・ADB(アジア開発銀行)・IDB(米州開発銀行)による国際融資条件としての公営企業民営化要求と世界銀行のフルコスト・プライシング採用条件及び6,000,000ドル多国間債務免除の提示、フランスのスエズ社へのエル・アルト上下水道事業30年委託契約締結、ベクテル社の子会社アグアス・デル・トゥナリ社へのSEMAPA売却とダム建設を理由とした貧困層10%・富裕層200%の水道料金値上げ・料金未払い者への給水停止・井戸水値上げ・雨水タンクからの料金徴収、浄水されていない水・汚染水・腐敗水を飲まされた貧困層からの大量の死者、靴工場労働者オスカル・オリビエラを代表とする水と生活を守る市民連合の結成、アグアス・デル・トゥナリ社の撤退を求めるゼネストとコチャバンバ市庁舎襲撃及び「人民の水」の看板掲示、IMF・世界銀行・IDBの圧力による第75代ボリビア大統領ウゴ・バンセル・スアレスの戒厳令発令と9名の死者・100名の重傷者、ボリビア政府と水と生活を守る市民連合の協定書締結及び暫定理事会設置とアグアス・デル・トゥナリ社の事業撤退、ベクテル社の世界銀行グループICSID(投資紛争解決国際センター)への提訴と契約破棄料25,000,000ドル要求、41ヶ国300以上の市民運動団体・労働組合団体によるICSID陳情書提出、京都での第3回世界水フォーラムとエボ・モラレスのパネル討論会場乱入、エボ・モラレスのボリビア大統領当選とアグアス・デル・トゥナリ社の賠償請求放棄に至る迄——
SEMAPA設立を起点に、IMF・世界銀行による民営化要求とベクテル社子会社アグアス・デル・トゥナリ社へのSEMAPA売却・水道料金値上げによって貧困層が汚染水・腐敗水を飲まされ大量の死者が発生した経緯・水と生活を守る市民連合の結成とコチャバンバ水紛争の勃発・戒厳令とアグアス・デル・トゥナリ社の撤退・ベクテル社のICSID提訴・京都での第3回世界水フォーラムを経て、エボ・モラレスのボリビア大統領当選とアグアス・デル・トゥナリ社の賠償請求放棄に至った、コチャバンバ水紛争38年間に亘る系譜を年月日単位で追跡した一冊。
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