ワタミ創業者
渡邉美樹
一元化
理念とやりがいの陰で、何が起きていたのか──
渡邉美樹とワタミを巡る12年を、出典と共に一元化。
JPY 200(税込)
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本書について
西暦1,984年に創業されたワタミは、居酒屋「和民」や介護事業を全国へ広げ、創業者・渡邉美樹は「夢」や「情熱」を語る経営者として、後には政治家としても知られていった。しかし其の理念の陰で、同社の労務や事業の実態は、訴訟・労働基準監督署の是正勧告、そして一人の新入社員の過労死の労災認定へと繋がってゆく。本書は、西暦2,006年から西暦2,018年までの渡邉美樹とワタミを巡る出来事を、発言の出典や判決・行政処分・和解の記録と共に、年月日単位で一元化した記録である。
端緒は西暦2,006年であった。グループの介護付有料老人ホームに入所した男性が、褥瘡の悪化による敗血症で死去し、横浜地裁は、施設が褥瘡の管理を怠ったとして約2,160万円の支払いを命じた。遺族との話し合いの場で渡邉美樹が放ったとされる「1億欲しいのか」という一言は、遺族を深く傷付けたと記録される。同じ年、アルバイトの勤務時間を30分単位で切り捨て賃金を一部未払いにしていた事が労基署の是正勧告を招き、其れを通報した従業員は懲戒解雇された。「無理というのは嘘吐きの言葉だ」といった渡邉の発言も、此の頃から各所で記録され始める。
そして西暦2,008年、本書の中心となる出来事が起きる。同年4月に入社した森美菜は、僅かな研修の後に厨房業務へ配属され、連日深夜に及ぶ勤務と、勤務時間外の理念暗記や研修を課された。手帳には「体が辛いです」「誰か助けて下さい」という走り書きが残されていた。同年6月12日、森は自ら命を絶った。両親の森豪・森祐子は、娘の死を労災と認めるよう、労基署に申請した。
労災は当初認められなかったが、審査請求を経て、西暦2,012年、月141時間に及ぶ時間外労働による精神障害が原因として労災認定された。それでもワタミは法的責任を否定し続けた。此の間、渡邉美樹は、雑誌で「ビルの8階9階で『今すぐ飛び降りろ』と平気で言う」と語り、労災認定後には自らの投稿が激しい批判を浴び、「ブラック企業」という呼称を強い言葉で退けた。同社は「ブラック企業」を論じた著者・今野晴貴に謝罪を求める内容証明郵便を送付してもいる。並行して、西暦2,010年には「改装工事」を名目に隠されたとされる店舗の集団食中毒、西暦2,012年には介護施設の浴室で入居者が放置され水死する事故、西暦2,015年には介護施設での食中毒による入居者の死亡が記録された。
西暦2,014年、ワタミは創業30周年の式典で、理念集から「24時間365日死ぬまで働け」の文言を削除すると発表する。そして西暦2,015年12月、森美菜の遺族との訴訟は東京地裁で和解に至った。和解条項には、渡邉美樹が最も重大な賠償責任を負う事、衷心からの謝罪、約1億3,365万円の支払い、残業上限の低減や労働時間の厳格な記録等が盛り込まれた。だが西暦2,018年、政治家となった渡邉は、参議院の公聴会で、過労死遺族の代表に対し「週休7日が人間にとって幸せなのか」と問う発言を行っている。本書は、此の十二年間に積み重ねられた出来事を――其の死と、言葉と、法的な決着までを――出典と共に一冊に束ねている。
本書が記録する出来事
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レストヴィラ
元住吉での死亡
(2006年) ワタミグループの介護付有料老人ホームに入所した男性が、褥瘡の悪化による敗血症で死去。横浜地裁は施設の介護管理上の過失を認め、約2,160万円の支払いを命じた。遺族との話し合いで渡邉美樹が放ったとされる「1億欲しいのか」の一言も記録される。 -
賃金未払いと
是正勧告
(2006〜07年) アルバイトの勤務時間を30分単位等で切り捨て、賃金の一部を未払いにしていたとして、北大阪労基署が是正勧告。内部調査でも各地の店舗で同様の切り捨てが判明した。通報した従業員は懲戒解雇された。 -
森美菜の
過労自殺
(2008年) 入社間も無い新入社員・森美菜が、深夜に及ぶ過酷な勤務と勤務時間外の研修・暗記等を課された末、自ら命を絶った。手帳には「誰か助けて下さい」と書き遺されていた。 -
労災の
不認定から認定
(2009〜12年) 当初、労基署は労災を認めなかったが、審査請求を経て、月141時間に及ぶ時間外労働による精神障害が原因と認められ、労災認定された。 -
三軒茶屋店の
集団食中毒
(2010年) 「坐・和民」三軒茶屋駅前店が提供した食品を介したノロウイルスの集団食中毒が発生し、保健所が営業停止処分を下した。休業は「改装工事」と説明され、従業員は口止めをされたと記録される。 -
レストヴィラ
赤塚での死亡
(2012年) 介護施設の浴室で入居者が1時間以上放置された末に水死。施設は当初遺族に虚偽の説明をしていたが、防犯カメラの映像から発覚した。 -
「ブラック企業」
批判と対応
(2013年) 「ブラック企業」を論じた著書の著者・今野晴貴に対し、ワタミが謝罪を求める内容証明郵便を送付。渡邉美樹自身も、批判を強い言葉で退ける発言を各所で行った。 -
レストヴィラ
東大和での死亡
(2015年) 介護施設でノロウイルスの集団食中毒が発生し、感染した男性入居者1名が亡くなった。東京都は食事の供給停止処分を下した。 -
森美菜訴訟
の和解
(2015年) 東京地裁での和解で、渡邉美樹が最も重大な賠償責任を負う事、衷心からの謝罪、約1億3,365万円の支払い、残業上限の低減等が和解条項に盛り込まれた。 -
国会での発言
(2018年) 参議院の公聴会で、渡邉美樹が、過労死で夫を亡くした遺族代表に対し「週休7日が人間にとって幸せなのか」等と問う発言を行った。
事件が映し出す構図
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過労死と
長時間労働 月141時間の時間外労働が労災認定された森美菜の死は、「成し遂げるまで働く」という理念と、勤務時間外の研修・課題が常態化した労務管理の問題を浮き彫りにした。 - 賃金の未払い 勤務時間を分単位で記録せず切り捨てる運用は、複数の労基署から是正勧告を受けた。和解では、入社者への未払い賃金や控除金の返還も定められた。
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介護施設での
死亡事故 元住吉・赤塚・東大和と、グループの介護施設で入居者の死亡が相次ぎ、介護管理の怠り、虚偽説明、食中毒対応の是非が問われた。 -
食中毒と
その扱い 飲食・介護の両事業で発生したノロウイルス集団食中毒の中には、「改装工事」を名目に休業し、従業員に口止めをしたと記録されるものもあった。 - 創業者の言葉 雑誌・テレビ・ブログ・SNS・国会と、様々な場で発せられた渡邉美樹の発言が、年月日と出典と共に記録される。本書の背骨を成す一次資料である。
- 法的な決着 労災認定と東京地裁での和解により、渡邉美樹が最も重大な責任を負う事と謝罪が文書として残された。本書は、其処に至るまでの経緯を時系列で追う。
過労死・労災認定・そして和解まで──
渡邉美樹とワタミを巡る出来事の全軌跡を一元化。
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