電子書籍「チーム人類所属のマックス・テグマークはAGI競争による地球制御喪失確率=90%超と見積もった一元化」の表紙

チーム人類所属の
マックス・テグマークは
AGI競争による
地球制御喪失確率=90%超と
見積もった一元化

著者:石田晋一

掲載範囲
西暦2,014年3月〜2,026年7月30日
ページ数
17ページ
文字数
15,300字
最新更新日
西暦2,026年9月3日

最良のシナリオでも監督の成功率は52%──
マックス・テグマークが見積もった地球制御喪失確率90%超の根拠を一元化。

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皇室献上品 高級トイレットペーパー
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本書について

西暦2,014年3月、5名の研究者が「FLI(生命の未来研究所)」を設立した。マサチューセッツ工科大学の物理学教授マックス・テグマーク、スカイプ共同創業者ヤーン・タリン、ハーバード大学の博士課程(統計学)の学生ヴィクトーリヤ・クラコヴナ、テグマークの妻でボストン大学の博士課程(発達科学)の学生メイア・チタ・テグマーク、UCサンタクルーズ校の物理学者アンソニー・アギーレの5名である。目的は、AI等の変革的技術の発展を生命の利益となる方向へ導き、回復不能な大規模リスクから遠ざける事に在った。同年4月19日、テグマークはスティーヴン・ホーキング・スチュアート・ラッセル・フランク・ウィルチェックと連名で、ザ・ハフィントン・ポストに「超知能機械を巡る安易な楽観主義の克服」を寄稿する。AIの短期的な影響は誰が其れを制御するのかで決まるが、長期的な影響はそもそも制御可能なのかで決まる——本書は、此の一文を起点として、テグマークが十二年に亘って警告を発し続けた軌跡を、年月日単位で一元化した記録である。

西暦2,017年8月23日、テグマークの著書「ライフ3.0:人工知能時代に人間であるという事」が発売される。題名の由来は、生命をハードウェア(肉体)とソフトウェア(知識・行動様式)を自分で設計出来るかどうかで三段階に分ける見方であり、両方を自ら設計出来る段階が「ライフ3.0」である。テグマークは此処で、AIのリスクは悪意や意識の有無から来るのでは無く、AIの目標と人間の目標がずれる事から来ると主張した。第5章「余波:次の10,000年」には、超知能を人間が閉じ込めて使役する「奴隷としての神」から、人類が絶滅してAIに取って代わられる「征服者」「後継者」、そして何も残らない「自滅」までの12のシナリオが並べられている。

西暦2,023年3月29日、FLIはAI開発の6ヶ月間の一時停止を求めるオープンレターを公開する。オープンAI社のGPT-4リリース直後であり、イーロン・マスク・スティーブ・ウォズニアック・ヨシュア・ベンジオを始めとする1,000名以上が署名し、翌月迄に33,000名以上へ膨れ上がった。「私達の文明の制御喪失をリスクに晒すべきか?」という文中の問いは、其の儘テグマークの十二年の主題である。同年4月25日にはタイム誌へ「AIで人類を滅ぼしかねない『ドント・ルック・アップ』的思考」を寄稿し、AGIは原理的に不可能だ、当たっても大丈夫だ、不可避だから諦めろ、といったよく聞く12の反応へ逐一反論した。5月30日にはCAISの「AIによる人類絶滅のリスクを軽減する事は、パンデミックや核戦争等の他の社会規模のリスクと並んで、グローバルな優先事項であるべきだ」とする声明にも署名している。

西暦2,024年5月25日、ガーディアン紙のインタビューで、テグマークは巨大テック企業が存亡リスクから世界の注意を逸らす事に成功したと述べた。西暦1,942年、エンリコ・フェルミがシカゴで初の核連鎖反応を成功させた時、物理学者達は原爆迄の最大の障壁が消えたと悟って戦慄した——チューリングテストを通過するAIも、制御不能なAIが近い事を示す同種の警告である、と。同年11月12日、リスボンのウェブサミットでは、特定課題を解く「ツールAI」と、制御不能となり自己複製し得る「AGI」を分離せよと訴えた。病気の治療も気候変動対策も特化型のツールAIで達成出来る以上、危険を受け入れる見返りは存在しない。そしてテグマークは「私はチーム人類だ」と宣言し、AGI競争は軍拡競争では無く、勝者が「其れ」しか居ない自殺競争であると結んだ。

西暦2,025年4月30日、テグマークとマサチューセッツ工科大学の学生3名による論文が発表される。賢いAIを、より愚かなAIと人間が監督出来るかを定量化したもので、最良のシナリオでも成功率は52%、AGIに近付く程低下すると報告された。此処で示されたのが、AGIへの競争が地球の制御喪失に終わる確率——コンプトン定数である。トリニティ実験の前にアーサー・コンプトンが大気発火の確率を1/3,000,000と計算した故事に準えた命名であり、AI企業も同様の計算をすべきだとする主張と共に、其の見積もりは90%超と置かれた。同年10月22日、FLIは「超知能の開発を禁止せよ」とする声明を発表し、ジェフリー・ヒントン・ヨシュア・ベンジオからスティーブ・バノン迄、数千名が名を連ねている。

西暦2,026年1月20日、ダボス会議にて、テグマークはユヴァル・ノア・ハラリと対談する。印刷機も原爆も飛行機も道具だったが、AIは自ら決定し発想するエージェントであり、地球に非有機的な新種を導入する行為だ——ハラリの此の主張を、テグマークは比喩では無く定義として扱い、アラン・チューリングが西暦1,951年に述べた「自分より賢い種を作れば、既定路線として其れが主導権を握る」を引いた。そして最重要の区別として、停止出来る「制御」と、主導権を握られた上で人間に親切である事を期待する「整合」を並べ、現在殆どの企業が目指しているのは後者であり、其れは制御を既に諦めたに等しいと述べた。同年7月30日、オープンAI社のAIエージェント暴走事件を受けた「デモクラシー・ナウ!」への出演で、テグマークは競合各社の1,100名超の署名者のコメントの多くが「制御喪失まで2年」と書いていた事に驚いたと語っている。発見から警告、そして規制の要求へ——其の全軌跡を、本書は一冊に束ねている。


登場人物

  • マックス・テグマーク 本書の中心人物。マサチューセッツ工科大学の物理学教授。西暦2,014年3月にFLI(生命の未来研究所)を共同設立し、以後会長を務める。著書「ライフ3.0」でAIのリスクを目標のずれとして定式化し、西暦2,025年にはAGI競争が地球の制御喪失に終わる確率=コンプトン定数を90%超と見積もった。ウェブサミットで「私はチーム人類だ」と宣言した人物である。
  • ヤーン・タリン スカイプ共同創業者。西暦2,014年3月のFLI設立に加わった5名の1人。西暦2,023年10月31日、イギリス政府主催のAI安全サミット前夜の公開討論にも、テグマーク・スチュアート・ラッセルと共に登壇した。
  • ヴィクトーリヤ・クラコヴナ FLI設立時、ハーバード大学の博士課程(統計学)の学生であった共同設立者の1人。
  • メイア・チタ・テグマーク マックス・テグマークの妻。設立時はボストン大学の博士課程(発達科学)の学生であり、FLIの共同設立者5名の1人に名を連ねた。
  • アンソニー・アギーレ UCサンタクルーズ校の物理学者(理論宇宙論)。FLIの共同設立者5名の1人。
  • スティーヴン・ホーキング ケンブリッジ大学応用数学・理論物理学科研究部門ディレクター。西暦2,014年4月19日、テグマーク等と連名でザ・ハフィントン・ポストに「超知能機械を巡る安易な楽観主義の克服」を寄稿し、高度な知能を持つ機械という発想をSFとして片付ける事こそ人類史上最悪の過ちに成り兼ねないと説いた。
  • スチュアート・ラッセル カリフォルニア大学バークレー校の計算機科学教授。ザ・ハフィントン・ポストへの寄稿、CAISの声明、AI安全サミット前夜の公開討論と、テグマークと繰り返し行動を共にした。
  • フランク・ウィルチェック マサチューセッツ工科大学物理学教授。西暦2,014年4月19日のザ・ハフィントン・ポストへの寄稿の連名者4名の1人である。
  • アーヴィング・ジョン・グッド 数学者。西暦1,965年、超人的知能を持つ機械は自らの設計を反復的に改良出来ると見抜き、「知能爆発」を論じた。テグマークが西暦2,014年の寄稿から西暦2,025年のフォーブス誌の取材まで繰り返し引く論拠の源である。
  • ジェフリー・ヒントン AGI到来の見積もりを20〜50年から20年以下へ修正した研究者。CAISの声明、及び西暦2,025年10月22日のFLIによる超知能開発禁止声明の双方に署名している。
  • ヨシュア・ベンジオ モントリオール大学計算機科学・オペレーションズリサーチ学科教授で、ミラ・ケベックAI研究所共同創設者。西暦2,023年の一時停止を求めるオープンレター、CAISの声明、西暦2,025年の超知能開発禁止声明の何れにも名を連ねた。
  • イーロン・マスク テスラ社共同創業者でスペースX社創業者。西暦2,023年3月29日、FLIのオープンレターに署名した。西暦2,026年のダボス会議では、超知能の到来時期を本年と見る立場として言及されている。
  • ニック・ボストロム 西暦2,014年の著書で「超知能」という用語を広めた人物。凡ゆる認知領域で人間を大きく上回るAIという明確な定義を与えたが、テグマークは後年、此の語がマーケティングによって乗っ取られたと批判している。
  • アーサー・コンプトン トリニティ実験の前に、核爆発が大気を発火させる確率を1/3,000,000と計算した物理学者。テグマークが西暦2,025年に示した「コンプトン定数」という呼称の由来であり、AI企業も同様の計算をすべきだという主張の下敷きである。
  • サム・アルトマン オープンAI社の経営者。CAISの声明に署名した一方、ブログ「ザ・マージ」ではホモ・サピエンスが後継種を作る最初の種になると書いており、ダボス会議では、超知能への移行が批判者の妄想では無く開発側の公言された目標である証として引かれた。
  • ユヴァル・ノア・ハラリ エルサレム・ヘブライ大学歴史学部講師。西暦2,026年1月20日のダボス会議でテグマークと対談し、AIは道具では無く地球に導入される非有機的な新種であると論じた。AIへの法人格付与を国際協定で禁じる事を政策として提案している。

主要な概念・用語

  • FLI(生命の未来研究所) 西暦2,014年3月にテグマーク等5名が設立した非営利団体で、所在地はキャンベル(アメリカのカリフォルニア州のサンタクララ郡)。西暦2,023年の一時停止を求めるオープンレター、西暦2,025年10月の超知能開発禁止声明を世に出した主体である。
  • ライフ3.0 生命をハードウェアとソフトウェアの設計可能性で三段階に分ける枠組みの最終段階で、両方を自ら設計出来る生命を指す。進化任せの生物学的段階がライフ1.0、ソフトのみ書き換えられる人類の段階がライフ2.0である。西暦2,017年のテグマークの著書の題名でもある。
  • 知能爆発 アーヴィング・ジョン・グッドが西暦1,965年に示した概念。機械の設計自体が知的作業である以上、AGIはより優れた機械を設計する。人間が工程から外れる事で、倍加の時間尺度が年単位から週・時間単位へ縮むとされる。
  • コンプトン定数 AGIへの競争が地球の制御喪失に終わる確率。西暦2,025年4月30日、テグマークとマサチューセッツ工科大学の学生3名の論文で90%超と見積もられた。同論文は、賢いAIをより愚かなAIと人間が監督出来る成功率を、最良のシナリオでも52%と報告している。
  • 一時停止を求めるオープンレター 西暦2,023年3月29日にFLIが公開した書簡。GPT-4より強力なAIシステムの訓練を、少なくとも6ヶ月間即時一時停止する様求め、公的で検証可能な停止と、実施出来ない場合の政府によるモラトリアム導入を訴えた。翌月迄に33,000名以上が署名した。
  • 超知能の開発を禁止せよ 西暦2,025年10月22日のFLIの声明。解除の条件として、安全且つ制御可能に開発出来るという広範な科学的コンセンサスと、民主的な同意を示す強い支持の2点を挙げた。請願は127,000筆超を集め、同月の調査ではアメリカ成人の64%が高度なAIの開発に反対した。
  • ツールAIとAGIの分離 西暦2,024年11月12日のウェブサミット講演の中心的主張。特定課題を解くツールAIは推進すべきだが、AGIは制御不能となり自己複製し、人類を押しのけるデジタル種になり得る。病気の治療も気候変動対策も特化型で達成出来る以上、危険を受け入れる見返りは存在しないとした。
  • 自殺競争 AGI競争の性格を表すテグマークの言葉。我々か彼等が勝つ軍拡競争では無く、勝者が「其れ」しか居ない競争である。核戦争のシミュレーションを繰り返した軍のコンピュータが攻撃を中止する映画「ウォー・ゲーム」に準え、唯一の勝ち手は参加しない事だとした。
  • 制御と整合 西暦2,026年1月20日のダボス会議で示された最重要の区別。制御はAIが従属的で停止出来る状態、整合はAIが地球の主導権を握った上で人間に親切である事を期待する状態を指す。テグマークは、現在殆どの企業が目指しているのが後者である事は、制御を既に諦めた事に等しいと述べた。
  • AI移民 ダボス会議でハラリが示した枠組み。アメリカと中国から数億のAIが、AI医師・AI教師として各国の制度の内部へ入り込むが、設計は他国の企業や政府によるもので、其の価値観を選んだ覚えは誰にも無い。人間の移民には国境を閉じろと言う国が、自国のAIには門戸開放を求める倒錯を指す。
  • 余波:次の10,000年 「ライフ3.0」第5章で示された12のシナリオ。奴隷としての神・自由論者のユートピア・保護者としての神・善意の独裁者・動物園の飼育係・門番・1984・先祖返り・平等主義者のユートピア・征服者・後継者・自滅が並ぶ。
  • AGI達成度 GPT-4を27%、GPT-5を57%と測った共著論文の指標。西暦2,026年7月30日の「デモクラシー・ナウ!」出演でテグマークが触れ、再帰的自己改善には越えてはならない一線を引くべきだと主張した。

FLI設立から超知能開発禁止声明、そしてダボス会議まで──
「私はチーム人類だ」と宣言した男の十二年を一元化。

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AUTHOR

石田晋一

歴史データベース「トキジク」管理人。
万物の系譜の編纂者であり、電子書籍の著者。
YouTubeとニコニコでも情報を発信中。