アパレルブランド
創業の歴史
一元化
西暦1,837年、パリの小さな馬具工房から始まった──
世界のアパレルブランドを生んだ作り手達の、創業の物語。
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本書について
西暦1,837年、ティエリー・エルメスがパリのバス・デュ・ルンパール通りに小さな馬具工房を開いた。馬車の時代に生まれた一軒の馬具屋──現存する高級ブランドの源流のひとつ「エルメス」の産声である。本書は、此処を起点に、西暦1,992年のディースクエアードに至る迄、世界のアパレルブランドを生んだ作り手達の「創業」の瞬間を、年単位で一元化した年表である。
舞台はまず十九世紀のヨーロッパであった。パリではルイ・ヴィトンが旅行鞄の専門店を、ロンドンではジョン・エマリーが紳士服店を構え、後に防水加工を施したウール生地から「アクアスキュータム」を興した。ハンプシャー州の服地商トーマス・バーバリーはコートを主に扱う洋服店を開き、ローマでは銀細工職人ソティリオ・ブルガリが宝飾品店「ブルガリ」を創業する。馬具・鞄・コート・宝飾──名門の多くは、職人の確かな手仕事から始まっていった。
二十世紀に入ると、装いそのものを変える作り手が現れる。パリのガブリエル・シャネルは帽子店「シャネル・モード」から身を起こし、ミラノではプラダ兄弟が、フィレンツェではグッチオ・グッチやサルヴァトーレ・フェラガモが、革と靴の工房を構えた。フランスでは元テニス選手ルネ・ラコステが鹿の子編みの半袖シャツを生み、戦後にはクリスチャン・ディオールがパリ8区にクチュールメゾンを開いて、オートクチュールの時代を象徴する存在となった。
戦後の主役は、イタリアのラグジュアリー、アメリカのスポーツウェア、そして日本のデザイナーへと広がってゆく。ボッテガ・ヴェネタやマックスマーラ、モンクレールがイタリア各地に生まれ、大西洋の向こうではラルフ・ローレンやカルバン・クライン、トミー・ヒルフィガーが台頭した。日本からは三宅一生や菊池武夫が独自の表現を世界へ送り出す。そして西暦1,992年、双子のカーティン兄弟がミラノで「ディースクエアード」を設立する──本書は、エルメスからディースクエアードに至る百五十余年、世界のアパレルブランドの創業譚を一冊に束ねた記録である。
登場人物
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ティエリー・
エルメス 西暦1,837年、パリのバス・デュ・ルンパール通りに馬具工房を開業し「エルメス」を創業した。本書の年表が始まる、最も古い作り手である。 -
リーヴァイ・
ストラウス 西暦1,853年、サンフランシスコのカリフォルニア・ストリートに雑貨店・生地商「リーバイ・ストラウス社」を設立した。 - ルイ・ヴィトン 西暦1,854年、パリのキャピュシーヌ大通りに旅行鞄の専門店を創業した。「ルイ・ヴィトン」の始まりである。
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トーマス・
バーバリー 服地商の見習い職人として経験を積み、西暦1,856年、ハンプシャー州ベイジングストークにコートを主に扱う洋服店「T.バーバリー・サンズ」を開いた。 -
ソティリオ・
ブルガリ 銀細工職人。西暦1,884年、ローマのシスティーナ通りに宝飾品店を開き、宝飾品ブランド「ブルガリ」を創業した。 -
ガブリエル・
シャネル 西暦1,910年、恋人アーサー・カペルの資金提供を受け、パリのカンボン通りに帽子店「シャネル・モード」を開いた。 -
マリオ・プラダ
マルティーノ・
プラダ 西暦1,913年、ミラノのヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリアに革製品専門店「フラテッリ・プラダ」を開業し、スーツケースやバッグを扱った。 -
グッチオ・
グッチ フィレンツェの皮革製品店で高級革の知識と経験を培い、西暦1,921年、同地に皮革製品店「グッチ」を創業した。 -
サルヴァトーレ・
フェラガモ 西暦1,927年、フィレンツェに靴工房「サルヴァトーレ・フェラガモ社」を設立した。 - ルネ・ラコステ 「鰐」と呼ばれた元テニス選手。西暦1,933年、アンドレ・ジリエと共に通気性の良い鹿の子編みの半袖シャツを開発し、後の「ラコステ」の礎を築いた。
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クリスチャン・
ディオール 西暦1,946年、繊維メーカー経営者マルセル・ブサックの支援を受け「クリスチャン・ディオール社」を設立し、パリ8区モンテーニュ通りにクチュールメゾンを開いた。 -
アキーレ・
マラモッティ 西暦1,951年、イタリアのレッジョ・エミリアに婦人用既製服の製造会社(後の「マックスマーラ」)を設立した。 -
ミケーレ・タッデイ
レンツォ・
ゼンジアーロ 西暦1,966年、ヴェネト州ヴィチェンツァに革工房「ボッテガ・ヴェネタ」を設立した。自らの名は冠さず、ヴェネトの熟練した革職人の伝統に深く根ざす事を目指した。 -
ラルフ・
ローレン 西暦1,967年にワイドタイ「ポロ」を生み出し、翌西暦1,968年に独立して「ポロ・ラルフローレン社」を設立した。 -
カルバン・
クライン 西暦1,968年、幼馴染のバリー・シュワルツと共に「カルバン・クライン社」を設立した。創業時のラインはドレス3着とコート6点のみであった。 - 三宅一生 西暦1,970年に「三宅デザイン事務所」を設立し、西暦1,974年、東京・青山に「ISSEY MIYAKE」1号店を開いた。本書に登場する日本の作り手のひとり。
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ジョルジオ・
アルマーニ 西暦1,975年、建築デザイナーのセルジオ・ガレオッティと共に「ジョルジオ・アルマーニ株式会社」を設立した。所有していたフォルクスワーゲン・ビートルを売却して資金を捻出した。 -
トミー・
ヒルフィガー 西暦1,971年に開いたチェーンストア「ピープルズ・プレイス」の倒産を経て、西暦1,985年に「トミー・ヒルフィガー社」を設立した。 -
ドメニコ・ドルチェ
ステファノ・
ガッバーナ 西暦1,985年、ミラノにファッションブランド「ドルチェ&ガッバーナ」を設立し、同年のミラノ・コレクション若手部門にレディース・コレクションを発表した。 -
ディーン・カーティン
ダン・カーティン 双子の兄弟。西暦1,992年、ミラノにファッションブランド「ディースクエアード」を設立した。本書の年表が結ばれる、最も新しい作り手。
主要な概念・用語
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オートクチュール
クチュールメゾン 一点物の高級注文服と、それを手掛けるメゾン(工房)。西暦1,946年、クリスチャン・ディオールがパリ8区モンテーニュ通りにクチュールメゾンを開き、西暦1,958年にはミラ・ショーンがミラノにオートクチュール・メゾンを設立した。 -
既製服
(プレタポルテ) 規格化された寸法であらかじめ縫製・量産される服。西暦1,951年、アキーレ・マラモッティがレッジョ・エミリアに婦人用既製服の製造会社(後のマックスマーラ)を設立した。 -
鹿の子編み
(ピケ) 凹凸のある通気性に優れた編み地。西暦1,933年、ルネ・ラコステがアンドレ・ジリエと共に此の生地を用いた半袖シャツを開発した。後のポロシャツの原型である。 - セレクトショップ 複数のブランドを編集して扱う小売店。西暦1,970年、ポール・スミスがノッティンガムに、ケンゾーやマーガレット・ハウエルを扱う3m×3mのセレクトショップを開いた。
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メイド・イン・
イタリー イタリア各地の職人技を背景に育った高級ブランド群。プラダ(ミラノ)、グッチ・フェラガモ(フィレンツェ)、ボッテガ・ヴェネタ(ヴィチェンツァ)など、地域の手仕事の伝統が世界的ブランドを生んだ。 -
下請生産
(OEM) 他社ブランドの製品を請け負って製造する形態。西暦1,941年、ニューヨークの工房「ゲイル」(後のコーチの前身)は、紳士向け皮革製品を下請生産していた。
エルメスからディースクエアードまで──
約三十四の名門が産声を上げた瞬間を一元化。
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